第4話

あたり一帯を包む暗闇よりも、

深い闇に染まった人影が、

部屋の隅にうずくまっている。


彼らが近づいていく間も、

「それ」は微動だにしなかった。

静寂の中、二人の足音だけが響いていた。


「こんにちは」


マヤが、小声で呼びかけた。

わずかに声が震えている。


「あなたは、誰ですか」


人影が、ぴくりと動いた。


その瞬間、すべてが変わった。


デイビッドは後ずさり、

瓦礫だらけの床を蹴飛ばした。

息が詰まりそうだ。

マヤの美しい顔だった場所に、

今は異形の化物が鎮座している。

それは、気の狂った操り人形師に

操られるようにぎこちなく、

不自然な動きで、彼に近づいてくる。


ドアまでたどり着かなければ。

廊下の奥にある、

あの古くて重いドアまで。

あそこをくぐれば、

出口に続くロビーに出られるはずだ。


蜘蛛の糸のように細い希望の光が、

彼の胸にちらついた。

そこまでたどり着くことができれば、

あの化け物から

逃げ切れる可能性があるはずだ。

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