No.2(ケンジ)
僕の名前は南健司。
生まれは令和日本。
特技はVRMMOの対人戦
ランキング上位に常にいる廃ゲーマーである。
両親は既におらず、姉が一応いるが遠方に嫁いでいるためか、両親の法事にも来ないので交流は全くない。
親類との付き合いも無いので、いわゆる天涯孤独というやつだった。
仕事は爺さんの代から続いている小さい食堂を経営していて、マッチングアプリで婚活中のアラサー兄さんだった・・・。
あれは最後のお客が帰った後、いつものようにお店の前を掃除していた時、突然目の前に現れた「異世界行き超特急www」という、普通ではありえない行き先のバスに僕は轢き殺された。
そしてあの世で女神様と面談。
僕は邪悪な感じのどす黒いオーラを放つこの女神様に恐れながらも「まさかと思いますけど、僕はあなたに殺されたのですか?」と問いただした。
すると『VRMMOの対人ランキング戦で僕に負けた事が気にいらなかった』という、とんでもなくくだらない理由で僕をリアルで殺ったらしい。
そして僕は対人戦が強いから神々で係争中となっている異世界に行き、女神ミナクスの信者を増せと命じられた。
布教に関してはミナクス様の使徒という人が行うが、他の神様の使徒に狙われるなど、いろいろ危ないらしいので僕がガーディアンとして護衛をする必要があるとのことだ。
もし使徒さんが殺されると、この女神様はゲームオーバーになりこの世界に干渉できなくなる。
もしそうなったら僕もゲームオーバーにするそうだ・・・。
もちろんミナクス様は僕の承諾なんて得ようとも思ってない。
彼女は僕に「貴様の選択肢は3つある。 「はい」か「YES」か「OK」だ。好きなものを選ぶがいい」と薄ら笑いを浮かべながら命令してきた。
全部肯定じゃないか!
さすがに僕もムカついたし、こんな奴の命令で行きたくないが、なぜか断れない強制的な命令だった。
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「ケンジさん早くゲートに行きましょう!」
僕の腕を引っ張りながら怪しく光る魔法陣に向かう金髪碧眼の美人シスターの名はアンタクティカ。
この人があの女神の使徒。
まだ少し接しただけだけど、あれの使徒とは思えないほど温和にして清廉、常識がありそうな素敵な女性だった。
僕は彼女の事をアンさんと呼ぶことにした。
彼女の正体は人間ではなく高度な知能と多彩なスキルを持つホムンクルス。
これから向かう異世界は多くの神様が信者獲得の為にしのぎを削っているので、僕と力を合わせて女神ミナクス様の教団を立ち上げ、宗教的世界制覇を行うことが彼女の目的である。
転移した場所は出入口のない四角い部屋で大きな鏡が置いてあった。
まずは若返った自分の姿を確認する。
ミナクス様曰く。
この世界の基準でやや整った顔立ちに整形したらしいが、僕は髭なく元々中性的な感じのだった為か、顔面を整えられると女性っぽい感じになっていた。
まさか女性にされたんじゃないだろうな。
なぜか不安になり股間を触ってみたが息子は健在だった。
あの女神様に殺されたことは、今でもかなり頭にきているが、若返ったうえに、身体能力や魔力は人間族として最高レベルに設定されているらしいので、まぁ詫びとして受け取っておこう。
せっかくの異世界だし無双してハーレムでも作ってみようと思う。
『ルクロスにようこそ』
鏡から機械音声のような声がしたあと、目の前が真っ暗になり気づいたら高い壁に囲まれた石畳の広場にいた。
目の前にはギリシャ風の石の柱が並んだ神殿っぽい建物があるが、周りに人は誰もいなかった。
しばらくするとアンさんが現れたので、ここは何処かと聞くと、オルファと言う都市の中にある異邦者の神殿で神様の使徒は必ず最初はこの街に転移するらしい。
一言で言うならはじまりの街の中なのだろう。
まずは目の前にある神殿に行き天子様に謁見を行い、布教の許可を貰う必要があるらしい。
「早く神殿に行って天子様に謁見しましょう!」
「あ、はい」
アンさんは僕の腕を引っ張りながら真っ直ぐ神殿に向かって歩みを進める。
「天子様ってたぶんこの国の為政者ですよね
実はもうこの国の宗教って決まってて入り込む余地なんてないんじゃないんですか?」
天子様って皇帝の呼称のはず。
いきなりこの国トップと面談ってすごくプレッシャーを感じてしまう。
それにこんな立派な神殿があるということは既に広く普及している宗教があるはずだ。
こんなところで布教で世界制覇なんて厳しい気がする。
「大丈夫です。
天子様がミナクス様のような神様を求めているのです。」
「天子様が求めているのですか?」
「はい。
昔、天子様がかなりの数の神々をこの世界から追放したのです。」
「えぇ?
そんな事できるんですか?
天子様ってただの人間でしょ」
「この世界はケンジさんのいた世界とは違います。
天子様はこの世界においてはミナクス様のような神格を持つ超越者を超える力をお持ちです。
うーん。 そうですね、この世界の事は後で説明します」
神様を追放する天子様か。
そんなに力があるなら自分を神格化した方が統治しやすいと思うんだけど違うのかな?
まぁ、怒らせるような事を言わないように注意しよう。
神殿の入り口まで移動すると羊のような角を生やした白髪の女性が神殿の中から出てきた。
アンさんはさっと僕の前に出て頭を下げる。
「ミナクス様の使徒
アンタクティカです。
彼は私の守護者ケンジです。」
「ゴーランドだ。
天子様のお世話をさせていただいている。
それで、約束の献上品は?」
ゴーランドさんは両腕を前に組みかなり高圧的な言い方なので少し気分が悪くなった。
それに当たり前のように献上品を求めるなんてかなり腐敗しているようだ。
後ろからはよく見えないけどアンさんは黒い金属製の箱を取り出しパカッっ開いてゴーランドさんに中身を見せた。
「こちらに・・・」
「ふむ・・・
・・・
・・・
・・・
本物のようだな
いいだろう、天子様への謁見を奏上する。」
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謁見の準備が終わるまで僕たちは案内された客室で待機するように言われた。
客室の中は木製の飾り気のないテーブルに椅子。テーブルの上には果物にお菓子、透明なガラスのポットにお水が入っているそうだ。
部屋の設備は充実していて、洋式トイレにお風呂まであった。
アンさんは椅子に座ると僕に対面の椅子に座るように促した。
「この世界についてお話します」
そしてアンさん色々説明を受けた。
まずはこの世界は簡単に言うと魔獣などの人間以外の生物の力が強く弱肉強食で力こそ正義の闘争の世界ということだ。
『この世界は自我を持っている。』
世界に自我ですか?
わけがわからいけど、天子様とは自我を持つこの世界そのものが人の姿で顕現したもので二人いるらしい。
一人は全ての種族に対して中立的であったがもう一人は人間族に対して好意的で他の種族には中立的、一部の種族には敵対的だった。
この世界の一種族である人間族の神様が追い出されたのは全てに中立的な天子様に相当嫌われるようなことをした事が原因らしい。
その後、人間族の信仰の対象が人間族に好意的なもう一方の天子様の一人に向けられる事になった。
これを嫌がった全てに中立的な天子様は人間族の信仰の対象となる神様を求め始めたという事らしい。
とにかく不興を買うと叩き出される可能性があるから機嫌を損なうようなことはしてはいけないとのことだ。
この世界から追放されてゲームオーバーになるとあの女神様に何をされるのか分からないので、注意して接する必要がある事は理解できた。
「簡単に言うと天子様には絶対に逆らったらダメ
絶対にダメということです。」
「は、はぁ・・・」
よほど大事ならしくアンさんは眉間にしわを寄せながら二回も逆らうなと僕に説いた。
阿修羅姫と定食屋 老師 @sanpa009
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