第177話 元凶を探せ! ★ソラ SIDE

 1番あやしいと思われていたのは、元主治医では無く……恐らく、元主治医が依頼されたか脅されたかして、元主治医をしたがわせた貴族がいるだろうと、王様とカミルは推測していたよー。


 だから、オイラとシルビーで元主治医が貴族に接触しないかを交代で見張る事になったんだー。影のオッサンがやると言ってたんだけど、音を拾えないと証拠を探すのにも時間が掛かるからねー。だから、影達には元主治医のスケジュールなどを調べてもらって、証拠を押さえる時にニンゲンの手を借りる必要があったら、手伝ってもらう事にしたよー。


 結果から言うと、あっさり元凶を見つけられたし証拠も押さえられたよー。リオが隠密魔法を掛けてくれたから、堂々と屋敷に入って、堂々と家探し出来たからあっという間だったよー。


 前日に行われた、王妃を呪った呪術師探しで捕らえた者達からも聴取は出来ているらしく、ジーさんの魔法で口を割らせてるらしいねー。これで21名全員が関わっていると証明されたら終わりかなー?


 元主治医を脅していた貴族も、身元が判明しているし、記録水晶を使った証拠も追加で撮ってあるんだから問題ないでしょー?なのに王様は、処刑では生温なまぬるいとか言い出して面倒な事になって来たよー。


「なぁ、カミル。本当に断罪して処刑するだけで良いと思うか?」


「王族が犯罪者だからと私情で甚振いたぶる訳にはいかないでしょう……」


「だがなぁ……40年も苦しんだ私のオリビアが可哀相だろう?リオはどう思う?」


 王様はリオに話しを振ったけど、リオの答えがオイラと同じなら、恐らく……


「私はそんな事より、早く王妃様が民の前に姿を現し、元気なお姿を見せる事が優先だと思います。私とカミルの結婚式には余裕で間に合うとは思いますが、先ずは動いて体力を戻すところから始めなければなりませんし、時間が惜しいです」


「そうじゃな。リオの言う通りじゃ。王妃様は40年前で時間も止まっておられるじゃろうから、現在の貴族に対しての知識なども得なければならんじゃろう。ある程度、体力が回復するまではリオがついていてくれるじゃろうから、その間に色々終わらせるべき事もあるじゃろうて」


 ジーさんもリオの事を、ちゃんと分かってくれてるよねー。リオと王妃は考え方も近いし、優先順位もカミルの結婚式が最優先だと思うよー。


「そうですね。今回の黒幕の貴族がアラン兄上と関係があった事も分かりましたからね。兄上の処分もハッキリさせなければ、また同じような事が起こっても困りますし。結婚式後などと悠長な事を言ってられなくなりましたね」


「確かにな……王位継承権が3位で王にはなれない事が分かっていたからこその反逆だったなんてな。誰が入れ知恵したのか、正妃を追い落とせばアランの母親を王妃にしてやるなんて……あり得ない話しだと分かるだろうに」


 恐らく、第二王子を傀儡かいらいにしたかった貴族は、カミルだけでは無く、第一王子も亡き者にするつもりだったから第二王子が王になれると思ったんでしょー?確か、第一王子はスタンピードで暗殺されるって騒いでたよねー?


 ただ、カミルが天才で努力家だった。とても賢くて自分の身も守れるから堕とせない。であれば母親を、と考えたんだろうねー。まー、それらが上手く行ったとしても、犯罪者を王にするのは違うと思うから、最終的には血の濃い公爵家の男の子が王になっただろうねー。例えば、デュークみたいなー?


「王になりたいなら、せめて勉強ぐらいは出来て欲しかったがなぁ。ワシは魔法を教えた事もあったが、迷惑をかけられた記憶しかないからのぉ」


「そうですよね。絶対に王になる事はないと言われたのが悔しかったのでしょうけどね。そんなやり方では民どころか、周りの人間すらついて来てくれないでしょうに。どうやって仕事をこなす気でいたのでしょうね」


「皆、辛辣しんらつだなぁ。間違ってはいないから何とも言えないが、アレでも私の息子なのだが……」


 困った顔で愚痴ぐちを言う王様だけど、せめて周りに賢いニンゲンをはべらせるべきだったと思うよー。アレは周りのニンゲンが欲の塊だったから、余計にこじれたんだと思うんだよねー。


「さすがに今回は恩情おんじょうは無しじゃろう?いい加減に早う元凶は無くしてもらわんと……カミルが王になった時に面倒事が増えるからのぉ」


「しかし、王太子であるカミルの結婚式が数ヶ月後だろう?処刑して直ぐに結婚式というのもなぁ?」


 ニンゲンは『縁起えんぎ』を気にするらしいからねー。処刑する事は『縁起が悪い』から、揉めてるんだろうねー。女神様や精霊の王様の祝福を受けられる結婚なのに、何が不満なんだろうねー?


「ねぇ、カミル。島流しにしたらどうかしら?元凶達がこの国から居なくなってくれたら良いのでしょう?」


「「「島流し?」」」


「あら?文献にあったわよね?小さな島の監獄島だったかしら?確かこの国の……東の港から出た所にある島だったわ」


「「「あぁ!!」」」


 そんなのがあったんだねー?遠い場所に追いやって、戻って来れなければ良いって事なのかなー?まぁ、第二王子を処刑しないで罰を与えられるならば問題無いんだろうねー。


「それは良い考えだ!さすがはリオだなぁ。邪魔して来た呪術師達は危険だから全員処刑するが、秘密裏に行うとして、アランだけを島の監獄へ送ろう」


「確かに、兄上だけであれば何も出来ないでしょうね」


 サクサクと話しが進んで行くねー?監獄島かぁ。オイラも一応、確認しに行って来ようかなー。たまにはシルビーとお出掛けするのも楽しそうだし、誘ってみようと思うよー。


「必要ならば、監視カメラをつけてやるぞ?ずっと監視してる訳にもいかんじゃろう。リオが遠隔操作出来る新型の監視カメラを開発したからのぉ」


「爺や、私は提案しただけよ。開発したのはデュークと爺やでしょう?大袈裟なんだから」


「クックッ。リオは思いつきが凄いのだから、大袈裟では無いぞ?また新しく便利な物が作られるのであれば、私は国王として礼を言う」


「いえいえ!お礼は必要ありませんから!デュークや爺やが何か新しい物を作りたがるから作って貰ってるだけですし?」


「ブホッ!な、なるほどな。ラドンを退治した時に素材も大量に集まった様だからな。予算的にも作る余裕もあるのだろうな?クックッ」


「あぁ、そう言う事でしたか。次から次へと試作品をドヤ顔で見せられて、それらの登録や商業化の話しがしょっちゅう来ると思っていましたが、なるほど理解しましたよ」


 カミルが苦笑いしながら納得してるねー。1番面倒な第二王子の今後が決まったから、皆のんびりと世間話をし始めたねー。リオが次々と解決してしまうから、最近の王国はまったりと時間が進んでるみたいだよー。


 結婚式の前になれば、また忙しくなるんだろうけど、今は少し休憩しなきゃだよー。オイラも最近は頑張ってたから、ゆっくり休んでシルビーとお散歩でもしようと思うよー。

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