第176話 宰相とルトの関係 ★デューク SIDE
王城の魔導師団敷地内にある練習場には、見慣れた練習装置が
そして、初級の『練習装置』で一生懸命に練習をしているのは、『ルト』と言う小さな男の子だ。年齢は10歳と言っていたか?それにしては少し小さめだな。リオ殿が孤児院から連れて来たらしいと
私が驚いたのは、宰相殿が
そして更に驚いたのは、ルトが宰相の事を「父上」と呼んだ事だろう。初めて練習場を見学に来たルトは、キラキラと目を輝かせて喜んでいた。それを見た宰相殿が、「たくさん練習して、ルトの大事なものを守れる様、強くなりなさい」と声を掛けると、「はい、父上!頑張ります!とっても楽しみです!」と笑顔で答えたのだ。
それを見ていたカミル殿下、リオ殿、師匠、そして私は驚きのあまり固まり、珍しく何も反応出来なかったぐらいだ。
「宰相殿、ルトと言う息子が増えたと聞きました。どんな子か教えていただけますか?」
「おぉ、デューク殿。デューク殿もリオ様が執事にしたいとまで仰ったルトの事が気になりますかな?」
笑顔で振り向く宰相殿は、ルトの話しをするのが楽しい様だ。彼を気に入っている事が良く分かる。私が気になるのは宰相殿の考えや気持ちの変化なのだが、ここは皆と同じ考えだと思わせた方が良いだろう。
「あ、はい。そうですね。気にならないと言えば嘘になりますから。それなら一層の事、宰相殿に直接聞いた方が早いだろうと思いまして」
「あはは、サッパリしていて気持ちが良いですな。他の者達は気になるが素直に聞けず、モタモタしていて面倒なんですよ」
宰相殿は穏和な人物に見せているが、基本的にはとても短気だ。長く王城にいる者であれば、報告は分かりやすく端的に答えなければ聞いて貰えないと知っているし、勉強も教えるとなればスパルタだからな。やる気が無ければついて行くのは難しいのだが……あぁ、なるほど。彼は宰相殿の期待に
「お忙しいのに大変でしょう。宰相殿の時間をわずかでも与えられるのですから、それだけの価値がある子なのだろうと、私でも感じましたからね。そう見えるからこそ、皆気になるのでしょう」
「あぁ、なるほど。忙しい私の時間を分け与えているという考えからでしたか。正直に申しますと、リオ様が我が国にいらしてから、徐々に仕事は減っているのです。特に面倒な事ほど減ったのですよ。面倒事が減ると言う事は、影に指示を出す事も減りますしね。そうなると、1番面倒な
それは知らなかったな。リオ殿のお陰で影の仕事が減り、これまで手を付けられなかった仕事をやっと出来るからありがたいとは聞いていたが、宰相まで恩恵を受けていたとは。さすが我らの信仰するリオ殿だな。
「へぇ、そうだったのですね。リオ殿が色々と発案なさっていらっしゃるでしょう?私も制作に
「リオ様の発案なさる物は、世の中にあれば便利だったり、助かる物が多いでしょう?それを『形にしたい!』と思えるからこそ、手続きも面倒とは思わないのです。むしろ、楽しみで仕方がないですな。もっと様々な案を出していただき、便利な世の中にする為でしたら、是非とも関わらせていただきたいと思っておりますぞ。ふほほほっ」
あははは。宰相殿もリオ殿の信者でいらっしゃる様だな。そんな信者が増えたからこそ、彼女が動くと周りも勝手に動くのだ。前回、師匠が大量に素材を持って帰って来た時には驚いたからな。それも稀少価値の高い、緑苔の熊から取れる素材だ。話しを聞くと、リオ殿が素材を集める為にダンジョンに行きたいと願ったらしい。
王太子妃候補であらせられるリオ殿が、ダンジョンに潜れたという事自体が問題で。その為には、絶対に国王陛下の許しが無ければ無理なのだ。その1点だけでも、この国の最高権力者がリオ殿の信者だと分かるからな……
それに加え、王太子殿下に宰相殿は間違い無く信者で、賢者様と隣国の姫は保護者だ。公爵家の人間も全員が味方だと言っても過言では無いだろう。
既に向かうところに敵は居なさそうだが……そんなリオ殿の快進撃を、私も遠くから見守ろうと思いつつ……と言うか思うだけで。カミル殿下にはリオ殿のサポートを頼まれているし、制作に関わっているから、当たり前だが、今後も近くでワクワクしながら、ガッツリと関わって行くのだった。
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