第111話 愛しい君との夢 ★リオ SIDE
やっと寝る準備が終わった……今日は帰って来てからも、報告やら陛下との晩餐やらに巻き込まれて忙しく時間は過ぎて行った。
さすがにリアも寝てる時間だろう。今日は、婆やとリアを夢の中に誘って、フェレットちゃんとユーグに色々話しを聞けたらと思っているのだ。
未だに分からない事も多いし、何かしらヒントになればと思っている。
『お姉ちゃん、お久しぶりです!』
『お久しぶりね、フェレットちゃん』
『お嬢さん、お久しぶりです』
『お久しぶり、ユーグ。今日は婆やとリアを呼びたいのだけど、良いかしら?』
『え?リアって言いました?皇女のリア?』
『そうよ、フェレットちゃん。リアも会いたいって言うから呼ぶ事にしたのよ』
『本当に?また会えるなんて……』
『あぁ、リアには言ったけど、姿が見えるかは分からないからね?ソラは見えなかったみたいだし』
『そうだね。お嬢さんは見えてるみたいだけど、普通なら消滅した精霊は夢でも見えないだろうね』
『何故だか分からないんだけどね。まぁ、困って無いから良いかなって』
『リオは
『精霊であるソラに言われたく無いわ……』
『あはは。オイラ達精霊は普段からのんびりしてるから良いんだよ〜。忙しい日々に疲れたら癒されたいでしょ〜?』
『まぁ、そうだけど……って、そろそろ2人を呼びたいのだけど?ソラ、頼める?』
『いいよ〜。バーちゃんからね〜。ホイっ!』
いきなりポン!と婆やが現れた。ちょっと
『婆や、夜分遅くに悪いわね』
『リオちゃん、お久しぶりねぇ。元気そうで良かったわぁ。あら?そこに居るのはユーグかしらぁ?元気にしてたかしらね?』
『シア、僕が分かるのかい?』
『姿は見えないけどねぇ。居る事は分かるわぁ。声もちゃんと聞こえているわよ?近くに行っても良いかしら?』
『あぁ、シア。勿論だよ!ゆっくり話そうね』
ユーグと婆やは寄り添って、思い出話しに花を咲かせる様だ。
『ジャンのネーちゃん、ホイっ!』
『ふぉっ?あら、リオ。ごきげんよう?』
『リア、ごきげんよう。先程振りね』
『あー、これが例の夢の中?』
『そうそう。フェレットちゃん、おいで?』
フェレットは中々こちらに近づこうとしない。あんなに喜んで居たのにね?不思議に思っていると、リアが優しい声でフェレットに話しかけた。
『ルゥー?もしかして、わたくしが怒ってると思ってるの?怒ってないわよ?寂しかったけど、また会えるって分かって、とても嬉しくて泣いてしまったわ』
『えぇっ!リアが泣いたの?僕のために?』
『勿論よ、ルゥー。あなたはわたくしにとって、かけがえのない相棒だったのだから』
フェレットはリアの胸元に向かって飛び込んだ。
『リア〜!ずっと側に居るって約束したのに、ごめんね〜。僕が守ってあげたかったのに……』
『ルゥー、約束を覚えていてくれたのね。それだけで嬉しいわ。魂まで消えて居なくて安心したしね』
『僕ね、これからは転生するまで、このお姉ちゃんのお手伝いをしようと思っているよ〜』
『あら?そうなの?フェレットちゃん』
『うん。だからね、たまにリアも夢に連れて来てくれる?』
『ふふっ、たまになら良いわよ。急いでる時や、疲れてる時は厳しいけど、リアも私も元気な時なら構わないわ』
『リオ、良いの?大変でしょう?』
『大変なのは連れて来てくれるソラよ?私は夢を繋ぐ媒体みたいなものだからね。ただ居るだけで良いのよ』
『睡眠不足にはなるでしょう?睡眠時間を削ってくれているんでしょうから』
『それはここに居る皆んなに言える事よ。それに、今回はユーグとフェレットちゃんに話しを聞きたかったのもあったからね』
『あぁ、そうでしたわね。色々謎が多過ぎて、ちょっとキャパオーバーだけど、ちゃんとまとめておかないと』
『そうなのよね……婆や、ユーグ、こちらに来て貰えるかしら?色々と話しを聞かせて欲しいの』
『お嬢さん、何か気になる事でも?』
『ユーグの若い頃?違うわね……コテツさんが生きていた時代に、魔道具で生命力を奪う事件はあった?もしくは、人が魔物になる事件ね』
『…………あったよ。また、あの魔道具が
『詳しく教えて貰えないかしら?出来れば、前回全滅させた時の対処法を聞きたいわね。後は……これは人為的になされたものだと思って良いのかしら?』
『人為的かと言う質問には、そうだろうとしか……』
『え?昔、魔道具が蔓延った時には終息したのよね?』
『現在、人の形をした精霊が居ないのはご存知かい?』
『知らなかったわ。確かに見た事が無いかもね?』
『これは、精霊側のルールなんだよ。精霊は、人の姿をして、人を惑わせてはならないと……』
『そうなのね。人と共存する為のルールなのね』
『そうだった。ただ、例外が生じてしまった』
『例外?』
『人と精霊のハーフの子が生まれたのです』
『え?それって可能なの?精霊には性別が無いのでしょう?』
『性別が無いのではなく、どちらにでもなれるのです』
『なるほど……』
『その子の親は、精霊の女王とコテツさんでした』
『えぇ?コテツさんはオネエのフリまでして、女性を近づけなかったのでは無くて?』
『えぇ、アレは
『どう言う事?』
『簡単に言えば、コテツさんの愛しい妻の姿を……ね。そして、夢うつつの中での出来事に見せていたのだよ』
『あぁ、狡いわね……』
『そんな出来事があったから、精霊は人の姿をしてはならないと決まったのだよ』
『ちょっと複雑ね?精霊の女王のせいで精霊は人の姿を取れなくなったのに、子供はハーフだから人の姿を取れる?』
『そうです。そして、その子が……人と精霊を憎んでいた。人と精霊の生命力を奪って、この世界を滅ぼそうとしたのです』
『そのハーフの子は、今何処に居るか分かる?』
『昔と同じなら、教会の地下でしょう』
『その子が何故、人間や精霊を憎んでいるか分かる?』
『それは……自分だけが人でも精霊でも無いからでは?後は、誰にも愛されないと思ったから?』
『コテツさんはハーフの子の存在を知らないと言ったわね?それは何故?』
『女王様が身籠っている事は、当時は誰も知らなかったのです。その後には直ぐに女王を退き、教会の地下でお子を産んだ』
『えぇ……?それからコテツさんが亡くなるまで、教会の地下で過ごしたとか?知らせる事は無かったと?』
『知らせる前に、そのハーフの子が暴走して魔道具を作ってばら撒き、それを命を賭けて終わらせたのがコテツ殿なのです』
『更にややこしくなったわね……』
『自分の子と知らずに、自分の子がした不祥事の後始末をして亡くなったって事よね?』
『えっと、まぁ、皇女様の仰る通りです……』
『何故、今更また魔道具をばら撒いたのかしら?』
『シアが言うには100年ぐらい前からおかしかったらしいが。ただ、世界と言うよりは帝国を滅ぼしたいと思っていそうだよね』
『どうしてそう思ったの?』
『王国には精霊が姿を見せたら直ぐに気づくだろう?それなのに、目撃情報は無かった。帝国では当たり前に精霊は居るし、雲の姿であれば、ニンゲンに精霊の区別はつかない。帝国を守る王国にダメージを与えたかっただけにも見える』
『それだと矛盾が生じるわよね?リア達と仲良くなったのは王国でスタンピードが起こった後だもの』
『そうなのだ。この世界が、滅びから遡りでもしなければ分からない事なのだ』
『あー……余計に分からなくなるわね』
『何故です?あり得ないって話しで終わりでしょう?』
『あり得ないと言い切れないわよね?私が召喚された事も、知らなければ有り得ないと思うでしょう?』
『た、確かにそうですが……』
『時空を超えてこの世界に来たのよ?それも私はコテツさんの子孫らしいし?偶然だけでは無い気がする……』
『そうねぇ……婆が思うには、リオちゃんの『純白の魔力』が何かしら必要だったのでは?と思うのよぉ』
『子孫だからか、偶々魔力の色が一緒だったからか』
『それって、卵が先か、鶏が先かって話しかしらね?』
『リオ〜、それなぁ〜に〜?』
『あぁ、物事の順番がね。鶏が卵を産むから鶏が先なのか、卵から鶏は産まれるのだから、卵が先なのかっていう、生命の神秘?』
『最後適当だったね〜。何となく言いたい事は分かったけど〜。魔力の色が必要なのか、子孫という血の繋がった存在が必要なのかは分からないんだね〜』
『ソラが綺麗に纏めたわね……』
『随分昔に同じ事が起こって、誰かが解決したのであれば、それをなぞって解決したら良いのでは無くて?』
『リアの言う通りなんだけど、一度その子に会いに行ってみようかしら。言いたい事も言えず……聞いて貰えず?生きて来たのかも知れないしね』
『その前に、魔道具を見つけた時の為に、封印箱を作らなきゃだよね』
『あぁ、それはデュークにお願いしてあるけど……』
『精霊の王様がいくつか持ってますよ』
『はっ!そうね、あの時も亜空間から出していたわね』
『経験を積ませたい……のかなぁ〜?』
『どうしたの、ソラ』
『王様が、オイラにも詳細を教えてくれないから〜』
『あぁ、なるほどね。それはありそうよね。良くぞここまで辿り着いたな、的な?』
『人命や精霊の命が掛かっているのに〜?』
『ソラ、恐らくだけど……これは人智を超えた者達が関わっては駄目なのだと思うわ。要は、女神様と精霊王は関与して解決しては駄目って事ね』
『あぁ、だからオイラは自分達が得た情報しか知らないんだね〜』
『恐らくだけどね。取り敢えず、精霊王に箱を幾つか借りれるか聞いて見ようかしらね。後はカミル達に報告して、どうするか相談しなきゃ。1人で教会に行ったら怒られそうだもんね……』
『間違いなく、怒られると思うよ〜』
『はぁ……まぁ、今日はここまで。10分ぐらいしたら夢から離れるので、それまでは好きに話していて良いわよ』
私はソラを抱いてのんびり撫でつつ、楽しそうな2組を眺めて過ごしたのだった。
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