第90話 夢の中へ ★リオ SIDE
眠ってから少し経っただろうか……そろそろ夕方って時間だと思っていたのだが、お日様は上に向かって昇っている様に思える。まだ朝だったかしら?それとも寝過ぎたのかな?
頭がちゃんと働いてる気がしない。何となくボーッとしているわね。目を擦りつつ、周りを見渡してみる。少し離れた所にソラが居るみたいね?
「ソラ……ん?」
空気がおかしい……?ここは大声で呼び掛け無い方が良さそうねぇ?念話で通じるか試してみようかしら。
『ソラー!聞こえるー?』
『リオ〜!何処のリオ〜?』
『えー?何処のって……精霊界で眠くて寝たリオよ』
何処のって、おかしな事を聞いて来るけど、聞かれた事には答えなきゃ駄目だろうからと真面目に答える。
『あー、分かった〜。リオ、ここは夢の中だって理解してる?してないなら、今すぐ夢の中だと理解してね〜?』
『理解したわ。おかしいと思ったのよ……人型に戻ってるしね』
ソラは直ぐに分かったみたいね?精霊は夢の中に普段から居そうだもんね。私はあまり夢は見ないのよ。
『オイラに見えていない精霊の存在?気配?が2つあるんだけど〜。リオには分かる〜?』
『ちょっと待ってね。集中してみるわ』
私は目を閉じて集中する。んん?目の前に2つ気配が移動して来たわ。こんなに近くに?と思って、そぉーっと目を開くと……
『うわっ!』
目の前に2匹の精霊が居たわ……1匹はさっき、教会の裏の噴水で消滅した子じゃ無いかしら……?
『驚かせてごめんね?僕、さっきお姉ちゃんが僕の意思を理解してたから、僕の声が聞こえるかと思って……』
『えぇ、大丈夫。気にしなくて良いのよ。私の夢に出て来てくれて嬉しいわ。私もあなたとお話ししたかったのよ』
にっこりと笑顔で話し掛ける。恐縮してるみたいで、こちらが申し訳無いわね……
『リオ?この子達が見えるの〜?』
『ソラには見えて無いの?』
『うん、声は聞こえてるけど……』
ソラが声のする方に視線を移す。
『ごめんなさい、精霊の王子様まで巻き込んじゃった』
『それは構わないよ〜。オイラは王子としての責務がある事も理解してるからね〜』
『ふふっ。カミルみたいな事を言うのね』
『カミルの真似っ子だも〜ん』
『楽しそうで何よりだね。僕も紹介させておくれ?』
『えぇ。あれ――?雰囲気が婆や……よね?』
『凄いね、お嬢さん。シアが気に入るの分かるよ。僕はシアと契約してた精霊のユーグだよ』
パッと頭の中に森と精霊が見えた。婆やが好きそうな場所ね。思い出の場所かしら?
『ユーグ……ユグドラシル?あぁ、婆やの魔力は緑だからかしらね?』
『説明する必要は無さそうだね……?何処まで分かったんだろうと僕は君に興味津々だよ』
『大して分かって無いわよ。それより、どうしてユーグさんまでいらしたの?消滅してしまった彼の声を届けたくて、お手伝いかしら?』
『うん、そうだよ。僕はシアの契約者として長年一緒に居たからね。シアの近くに居るニンゲンが気になったのもあるけどね?』
『あぁ、どちらかと言えば、そちらがメインなのね』
『な、何故分かったんだ!?恐ろしいな……』
『ユーグ、さすがにオイラにもそれは分かったよ〜』
『おぉ、坊や!このお嬢さんの契約者は坊やなの?』
『そうだよ〜。リオはオイラの契約者なんだよ〜』
『あの過保護な王様が良く許したねぇ?』
あぁ、やっぱり王様は過保護だと思われてるのね?精霊同士の会話なんてあまり聞かないから面白いわね。
『女神様にお願いされたんだって〜』
『えぇ?あり得ないだろう?あの2人は……』
『あれは、『ツッコミ』って言うらしいよ〜。技の1つだって王様が言ってた〜』
あぁ、ソラが説明したいのだろうニュアンスは分かったけど、何だかちょっと違うわよね……王様が面白がって適当に答えた可能性もあるから面倒なのよ。大体、『ツッコミ』が『技』って何よ……?
『あぁ、なるほどね……ユーグは殴り合いの喧嘩をしてると思ったから仲が悪いと……本当に素直なのね』
『坊やの契約者は分かるのかい?』
『えぇ、私が居た国の……エンターテイメントって何と表現するのかしら……?人を楽しませるもの……的な?んー、人を楽しませる為に、大袈裟に激しい突っ込みをする人、かしらね?』
『大袈裟にパフォーマンスとして叩くのかい?』
『そうそう。仲が良くないと出来ないでしょう?会う度に叩いてるなら、それは愛情表現に近いのでは無いかしらね?』
何となく……少しズレてる気もするけど、女神様と精霊王のやり取りは仲が良い事の表れだと思って貰わなきゃだもんねぇ?間違えてはないと……
『えぇ……相手が嫌がる事はやっちゃ駄目だって習うよねぇ?』
『えっと、叩かれていた相手は嫌がってた?』
『んー、あれ?怒っていなかった気がするね……?』
『じゃあ、良いんじゃ無いかしら?』
あぁ、分かったわ……最初に王様が『ツッコミ』だって言った所から間違えてるんだわ……ボディータッチのコミュニケーションだと言えば早かったんじゃ無い?
『た、確かに……』
『ニンゲンのコミュニケーションは難しいよね〜』
『そういうソラも難しい言葉を知ってるわね?』
『カミル達が教えてくれる〜。正しくは、勝手に聞いてるから知ってる〜』
『やっぱり情報源は執務室みたいね?』
『あっ!リオ狡い〜!忘れた頃に言葉の罠だぁ〜』
『意図してやって無いわよ。偶々思い出したのよ』
『坊やの契約者は凄腕だな……王様には精霊界の代表として頑張って貰おうと思っているが……』
『リオには勝てないと思うよ〜』
『あぁ、理解したよ。コテツ殿がいらした時には平和だったのになぁ……』
『あれ?コテツさんを知ってるの?』
『えぇ、僕は5年か10年ぐらいだったと思いますがコテツ殿の近くに居ましたよ。大凡1000年ぐらい前でしょうか……』
『へぇー。私はコテツさんの子孫らしいわ。あちらの世界から呼ばれて来たのよ』
『えぇ!?お嬢さんは召喚者!?その上コテツ殿の子孫ですって?ヤダわぁ……』
『あれ?気のせいか、オネエが居るわ……』
『コテツ殿にオネエさんのやり方を教えて貰ったのよぉ。シアに怒られてから止めてたんだけどねぇ〜』
『あぁ……婆やは苦手だったのね。何故にオネエ……』
『どうやら女性から逃げ回ってたらしいよ。あちらの世界に置いて来てしまった『妻』が大事なんだとか?精霊には分からないんだよね……』
『なるほど!女性避けに自らをオネエに仕上げたのね。凄く愛が深くて良い話しのはずなのだけど、何故か感動は出来ないわね……』
『ふぅ〜ん?まぁ、良いんだけど〜。何で夢に呼んだのかはいつになったら教えてくれるのかなぁ〜?』
『あー!忘れてたよ〜……』
『さすが精霊ね……話しが逸れるのは精霊である限り、仕方ないのかも知れないわね?』
『色んな意味で凄いねー?そこを納得出来るだけの器のデカさは世界最強だね?帝国でも精霊との会話は疲れるって常識だからね……』
『だって、直せないでしょう?端的に分かりやすくハッキリと喋ってる精霊って……ある意味怖くない?』
『『『確かに…………』』』
あらあら、皆んな納得しちゃったわよ……それより、そろそろ本題に入らないとよね?この夢っていつまで見ていられるか分からないもんね。
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