第89話 作戦会議 ★リオ SIDE

 私だけに精霊の念話が聞こえた事や、精霊は自分の意思で話せない様であった事も伝えた。感じた違和感なども含めて報告をする。


 これからどうするのかを考えるのだから、沢山の情報と色んな目線があった方が良いアイディアは出るし、何より安心出来るよね。


「話しを聞く限りではどう考えても、2人が気持ち悪く感じた『黒いモヤ』が怪しいよな」


「あんなの気持ち悪くて近づけないと思うのに……ほんの少しだけ触れたんだけど、頭がボーッとして何も考えられなくなって、吸い込まれてしまいそうだったよ〜」


「私は触れてないんだけど、近くに居るだけで少しぼんやりする感じはあった様な気がするわね。まぁ、最後は恐怖で正気に戻ったけど……」


「ふむ……『黒いモヤ』は悪い物だと思って良さそうだな?どちらかと言えば、『危険な物』だろうか」


「えぇ、そうねぇ……そうなると、あの時の婆の目は、錯覚では無かったのかも知れないわねぇ」


「あぁ、昔のあの事故の時の事か?」


「えぇ。婆の精霊が、とても嫌がっていた様に見えたからねぇ?弟の精霊の周りの『黒いモヤ』だろうと思われる物を、『突風』と『竜巻』で吹っ飛ばした時に、相手の精霊には隙が出来たのよねぇ……」


「あのモヤって突風や竜巻で吹っ飛ぶの?案外弱っちいわね?」


「一時的に離れるだけなのかも知れないわぁ。その後にと言うか、その隙を使って、婆の精霊が強行で突っ込んでしまったから分からないのよねぇ……」


「なるほど……?あの最後に見た、分厚い黒いモヤが現れたら、突風で飛ばしてみようかしら。少しは抵抗出来るかも知れないわね?」


「そうだね〜。触れてると思考が低下すると分かっていれば、最悪モヤを風魔法で飛ばして、相手を引っ叩いてでも正気に戻した方が良さそうだね〜?」


「原因が分からない限り、最悪の事態を回避しつつ、情報を集めて行くしか無いからな。今回は短い時間の滞在だったが、かなりの収穫があって良かった」


「えぇ、そうねぇ。短い時間で情報を集める方が、効率も良いし、婆達も安心出来るわねぇ」


「こうやって小まめに相談出来るのも良いですね。モヤが迫って来たら、風魔法で何とか出来るかも知れないと分かっている訳だし、慌てずに対処出来る可能性が上がりますよね」


「うむ、細かく連絡を取れる様にな。坊やは体調は問題無さそうかい?転移魔法で往復すれば、その分疲れも出やすいのだから、無理しちゃ駄目だからね」


「はーい、王様。オイラは大丈夫だよ〜。1番冷静に判断して疲れてるのはリオだからね〜」


「そうか、そうか。坊やはリオを信用しているのだな」


「ん?どうして私を信用してる事になるの?」


「坊やはリオを信用してるから、背中を預けていると言うのか?判断はリオに任せて、ある程度好きに動いているんだ。精霊は契約者を信用していればしている程、無茶する子が増えるのでな」


「信用はしてくれて嬉しいけど、無茶はしないで欲しいわね……?」


「クックッ。精霊達の愛は重いぞ?契約者を守る為なら率先して突っ走るからな」


「そんな大事な契約者を、ソラはアッサリと私に決めちゃって良かったのかしら?確か、ステータスボードに文字が浮かび上がったのよね」


「あぁ、リオは特別だからな」


「え?」


「リオのパートナーは、坊やにお願いしたいと女神から言われておったのだ。『純白の魔力』を持つ、コテツの子孫だからと」


「えぇ――――!!」


「何だ、聞いておらんのか?坊やも知ってただろう?」


「オイラ、コテツってニンゲンにも会った事が無いから、どう話して良いのか分からないよ〜。王様が女神様にお願いされて、オイラがオッケーしたってだけなんだよ〜?」


「あー、確かに……ソラの言い分も分かるわね。お互いコテツさんを知らないのに、コテツさんの子孫だよって言われてもねぇ?「へー、そうなんだ?」で話しも終わるわよね」


「そ、そうか……我はコテツと過ごした時間が楽しかったからな。話す事は沢山あると思っておったが、そなた達は全く知らんのだな……」


「時間の流れが違うから仕方ないわねぇ。婆の精霊を知る者も減って来たから、婆も少し寂しく感じるわぁ」


「そっか……300年の寿命って、かなり差が出るよね」


「えぇ、そうなのよ。平均寿命300歳とは言っても、200歳にもなれずに儚くなる者もいるでしょう?逆に爺さんの様に、300歳を優に超えている人間も居るからねぇ?平均して300歳って無理があるのよねぇ……」


「あー、やっぱり爺やは300歳超えだったわね……」


「婆は爺さんより100歳は若いのよぉ?250歳を越えると見た目が年寄りになるだけでねぇ……」


「オイラは全く違いが分からないから、見た目と性別だけ分けて呼ぶよ〜。ジーさんは年寄りの男、バーちゃんは年寄りの女だよ〜」


「ねぇ、ソラちゃん?気になってたんだけど、何故女性は、バー『ちゃん』なのかしら?」


「王様が……女性は敬えって言ったから〜」


「ソラは敬うと『ちゃん』付けになるのね?」


「う〜ん?可愛いから『ちゃん』を付けただけかも?」


「さすが精霊ね……きっとあまり考えずに何となくで呼び始めたのでしょうね」


「クックッ。リオも精霊を良く分かっておるでは無いか?我も案外適当だからな?全て真面目に捉えておると大変だと思うぞ」


「コテツさんは真面目だったのでは?」


「その通りだ。冗談が通じないと分かってからは、我も出来るだけ真面目に話したがな?精霊は元々『イタズラ』好きだからなぁ……」


「あぁ……なるほど。コテツさんは大変だったのですねぇ。王様は楽しかった様で何よりですが」


「ククッ、そうだな。我の人生……精霊生?の中で、1番楽しく幸せだった日々なのかも知れないな。コテツには迷惑だったのかも知れんがなぁ……」


 確かに……コテツさんには迷惑かも……あれー?んー?すっごく眠い……あ、意識保つの無理かも……?


「ふわぁ――――っ。あ、ごめんなさい?何だか急に……ちょっと耐えれないくらい、眠くなって来ちゃったわ……」


「リオも?オイラも急に眠くなって来たよ……」


「ふむ……今日は早めに休もうか。リオはシアが。坊やには我がついて寝るぞ。シア、何かあれば、念話で我を呼んでくれ」


「えぇ、分かったわぁ」


「「おやすみなさい……」」


 耐えられなくなった私とソラは、あっという間に深い眠りに落ちたのであった。

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