第41話 弟子はつらいよ ★デューク SIDE

 時間は少し遡り、早朝の薄暗い部屋の中。私は人の気配にハッ!と飛び起きた。


「誰だ!」


「わしじゃー」


「……師匠、今何時ですか……」


「人は日の出と共に起きるものじゃぞ?」


「まだ薄暗いですよね……」


「相変わらず小さい男じゃのー。男なら細かい事を言うとるでないわー」


「………………」


 私とカミル殿下、キースやクリスもこの師匠から魔法を習ったのだが……言わずもがな癖が強い。我が道をトコトン突き進むタイプだ。強引なマイペースさで周りを振り回すのだが、腕の良い魔導師であり『賢者』の称号すら持っているから文句も言える者は居ないのだ。


「それで、こんなに朝早くから何用でしょうか」


「お主の愛弟子に興味があるのじゃ。最近、わしの周りで噂になっとるぞ?あの『練習装置』の発案者で、上級の『最』を余裕でクリアしたと聞いておるでのー」


「はぁ……師匠の周りの噂では無く、影からの報告か、陛下から様子を見て来る様に頼まれたのでしょう?どちらしにろ、面白そうだから見てみたいのでしょうが」


「良く分かっておるではないか。その愛弟子が魔法を使ってる場面に遭遇したいのじゃ。ワシやお主がいない状況で撃ってる魔法が見たい。どうにかせい」


「はぁ…………無意識のうちに緊張する事を懸念されてるのでしょうが、彼女に限ってそれは無いかと……」


「それはワシが判断するわい。つべこべ言わずに何とかせい」


「カミル殿下の許可は必要ですよ…………」


「あぁ、あの優等生は元気にしておるか?」


「えぇ。婚約者殿を溺愛なさっておられるので、最近は最高潮に元気でいらっしゃるかと」


「ほぉ……それは良い事を聞いたのぉ。優等生が故に、感情が揺さぶられる事が無かったからの。これでまた成長出来ると良いのぉ……」


 何だかんだ言っても、師匠は我々の親の様な存在だ。小さな頃から魔導師団に入り浸り、師匠の元で魔法を練習してたからな。殿下は剣の才もあったから――本人が努力したからだが――騎士団にも顔を出しておられたのを師匠が見て、魔剣士という選択肢もあると教えてくださったからこそ、今の殿下があったりする。


「カミル殿下の婚約者であるリオ殿は、午前中は王太子妃教育を受けておられます。今日の午後はアルフォンス殿下がお休みですので、リオ殿が顔を出す可能性は高いですね。師匠は昼食後に、私の執務室へいらしてください」


「イヤじゃ」


 つーんとそっぽを向いて、考えを曲げる気が無いと主張する時に取る態度を示している……こうなると面倒だ。こちらが折れるしか無いことも、長年の経験から理解している。


「はぁ……師匠、魔導師団の食堂では師匠は目立つので居る事がバレてしまいます。私の執務室で召し上がられますか?」


「うむ、それでよい」


「それでは、私は着替えてから執務室に参りますので、師匠は執務室でお待ちいただけますか?」


「あいわかった」


 師匠が部屋を出た事を確認すると、私は大きなため息を1つ吐いて、急ぎ着替えるのだった。

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