第34話 全ては計画通り ★カミル SIDE
パーティー会場から僕の執務室へ移動して来た。リオはかなり疲れたのだろう、ソファに背を預けてグッタリしていた。そんなリオにリズが声をかける。
「リオ様、大丈夫ですか?あんなに何度も面倒に巻き込まれては気を揉んだでしょう。あれらを完璧にあしらっていらしたのには感服いたしましたわ」
「あぁ、素晴らしかったね。リオは賢いから、安心して任せられたよ。全ては計画通りにコトが進んだからね」
「えぇ?あれは計画だったの?教えておいてよ……」
「まさか、何も聞いておられなかったと?」
デュークに睨まれる。リズは呆れた顔でため息をつき、リオを憐れんでいた。
「リオは、何も知らなくても……何も知らないで思うままに行動してくれた方が良いと思ったんだ。予想を遥かに超える良い出来だったから、僕の考えは間違えて無かったと思っているよ。ただ、ね……リオ。負担を掛ける事になったね。本当にごめんね?」
「まぁ、何か考えがあっての事だったのでしょうし、私を信じてくれていたのでしょう?カミルの想定通りに進んだのであれば、良かったわ」
「リオ様は優し過ぎるわ!わたくしとお友達になってくださいませ!これからは、わたくしもリオ様をお支え致しますわ!殿下だけでは不安ですもの」
リズはリオの手を握り、僕を睨む。まぁ、僕の所為だから甘んじて受けるよ……
「それがよろしいかと。リオ殿、リズは我々の幼馴染ですから安心してくだされ。周りがここまで敵だらけとは思っておりませんでしたからな」
まぁ、僕から言わせてもらえば、それも予想通りだったが。1番最初に戦場に出されると思っていたしね。第二王子を
「キース、クリスも座って。デューク、防音膜を掛け直して。リオとリズ、これから話す事は他言無用だよ。今後の計画を伝えるからね。さすがにこの計画は知ってないと潰されてしまう可能性もあるから、上手く立ち回るためにも知っておいて」
皆んなが肯首する。少し声のトーンを抑えると、王族の声は聞く姿勢にさせるんだって昔習ったな……
「先ず、リオ。良くやってくれたね。魔力量が少ない事を揶揄して来るヤツらを上手く煽ってくれていた。何処まで話して良いのか分からなかったんだろう?それなのに最高の立ち回りをしてみせてくれた。感謝するよ」
「デューク様をあのタイミングで寄越したのはカミルだったの?」
「あれは、リズが呼んだんだよ」
「あぁ、やっぱりそうだったのね。綺麗な魔法とか、デューク様の愛弟子とか、私が聞いていなかった事をリズ様が話していたから、魔法は使えって事だとは思ったのだけど、まさか魔力測定器が出て来るとは思わなくて」
「リズもそう思ったんだろう?だからデュークを呼んだ。そしてデュークは計画を知っていたから軌道修正してくれたんだ」
「じゃあ、露払いするのは必然だったの?」
「あぁ、第一陣になるだろう事は予想していたからね。第二陣は第一王子になると思う。それを見越して、わざと大袈裟に、我々を殺す気か?と周りに言っておきたかったんだ。最初に行きたく無いぞ、と。その後の事を考えると、恩を売る方が得になる」
「策士ね……そうなる可能性が高ければ、敢えて乗っかった方が賢いものね。さすがにちょっと驚いたけど」
「カミル殿下に勝算があると言われたんだ。ソラ殿からの情報では、リオ殿の魔力と殿下の魔剣士の力があれば、余裕で倒せるだろうと。ソラ殿もリオ殿について行くと仰っているから、守りも万全らしい」
「ソラ殿?」
「あぁ、リズは会った事が無かったね。リオ、ソラを呼べるかい?」
「部屋で寝てるわね……ちょっと起こすわ」
リオはソラに念を送ってるようだ。少し眉間に皺が寄るのも可愛い。やっとパーティーが終わったのに触れる事も出来ないなんて……早く終わらせて、デューク達を追い出そう……
「リオ、呼んだ〜?」
ポンっ!とリオの目の前にソラが浮かんでいる。
「可愛い〜!」
リズのテンションが一気に上がった。リズは昔から小動物が大好きなんだよね。
「リズ様、こちらが精霊のソラ。私の使い魔になってくれたの。ソラ、こちらは私のお友達でリズ様よ。仲良くしてね」
「リズ、よろしく〜」
「ソラ様、こちらこそよろしくお願いします」
ソラはリオの膝でくつろいでいる。それをリズが嬉しそうに撫でていた。
「それで、第一陣の兵士なんだけど、僕の近衛騎士と、後衛は魔道師団から借りる事にしたよ。騎士団にも話しは通してあるんだけど、そちらはちゃんと来てくれるか分からないね」
「総勢300人程度だ。恐らく手を回されて、当日には150人程度になるだろう」
「減るのが確定なの?ソラの見解では平気なのね?」
「全然問題無いよ〜。カミルとリオだけでも倒せると思う〜。後ろに回られるのが嫌だから、魔道師に防御壁を左右に張って貰って、前から来る魔物をただ滅するだけで終わるよ〜」
「そんなに簡単に行くのかしら?」
「カミルだけでは無理だったんだけどね〜。リオの魔力がカミルを超えたからね〜。魔力の回復速度も、リオは常人の100分の1で回復するから余裕〜。『ヒール』と『魔力譲渡』だけで足りるぐらいだよ〜。後はカミルが魔法をぶっ放してれば終わるから〜」
「ソラが言うなら信じるわ。カミルもソラを信じているんでしょう?」
「あぁ、勿論だよ。精霊ってね、主であるリオが危ない目に遭うような事は絶対にしないんだ。ソラと僕の願いは同じだから、疑いようが無いんだよ」
「えぇ、2人……で良いのかしら?1匹と1人を信じるわ。出陣は3日後で変わらないのね?」
「そう。明日陛下に謁見して、最初に出陣するから成功したら王太子にしてくれと言うつもりだ。命を賭けてる振りをしてるから、恐らく了承されるだろう」
「カミル、王太子になるの?」
「もう良い加減に、周りに振り回されるのは嫌だからね。リオとの結婚も、全ての魔物を殲滅したら確約して貰うつもりでいるからね?早く結婚したい……」
「まぁ!殿下ったら。それが本音なのね……」
「好きな人が出来たら、早く結婚したいと思うだろう?早くリオと同じ部屋で眠りたい!」
「殿下、疲れてるな。ここ数日は根回しに忙しかったから仕方ないが、リオ殿に引かれないようにな……」
さりげなくフォローされたよ……それもデュークに。ちょっとショックだけど、やっぱり嬉しいものだね。
「ねぇ、リオ様。わたくしの事はリズと呼び捨てにして貰えません?」
リズが上目遣いでリオを見つめる。期待でキラキラしてるよ……リズが女友達に心を開くのは珍しい。とても気に入ったのだろう。
「ありがとう、リズ。私の事もリオと呼び捨てで」
「いえ!リオ様の事はリオ様と……」
リオがとっても寂しそうな顔で斜め下辺りに視線を落とす。これはリオの勝ちだな。
「わ、分かりましたわ!り、リオと呼ばせて貰いますわ!」
「ありがとう!リズ!」
パァーっと表情を明るくするリオは可愛い。リズも頬を染めて嬉しそうにしている。
「私も呼び捨てにしてくだされ。リオ殿も、リズも」
デュークまで名乗り出たよ。羨ましかったのかな。
「リオは、デューク様が臣下になるから呼び捨てで良いと思うけど、私はただの幼馴染だし、キースが拗ねるからやめとくわ」
チラッとキースを見ると、嬉しそうにニコニコしている。リズはキースを既に尻に敷いているようだ……誰よりも、僕よりもキースの扱いが上手いんだよね。
「さて、そろそろ解散しようか。あまり長く留まっていると、何を言われるか分からないからね。リズは今度からリオの部屋へ遊びに行くと良いよ。部屋に居ない時は、基本的に執務室かデュークの所の練習場にいる」
「えぇ。リオ、今度遊びに行くわね」
「待ってるわ、リズ。楽しみにしてるわね」
「よし、じゃあ……キース、リズを送ってあげて。リオは僕が部屋まで送ろう。デュークは明日連絡するよ」
「「御意」」
やっと長い夜が終わった。明日はリオの考えた『練習装置』を使って体の感覚を取り戻す予定だ。早く寝て、明日に備えようと思う。
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