ネオ狩り
限界
翌日、
「昨日の夕方ごろ、東京都で
先日、玲玖はあの男を仕留め損ねた。そして彼女は、
「
「ええ、私もそう思います」
「川島を
彼女は泰守の強さを分かっていた。いくら好戦的な彼女でも、あの男との戦いだけはなるべく避けたいところだろう。続いて、テレビの画面に、次のニュースが流れる。
「次のニュースです。隔絶条例により、九名のネオが収容施設に回収されました。なお、三名のネオは申し出を断りましたが、無事殺処分されました」
何やら政府は、ネオを隔離するためであれば殺生も辞さないらしい。珍しく、和治はばつが悪そうな顔をする。
「すみません、
この現状を招いたのは、紛れもなく彼自身の計画だ。ネオである玲玖からすれば、彼は全ての元凶に等しいだろう。それでも彼女は、和治を責めはしない。
「しかしアンタは、今もなおアタシを裏切ろうとはしちゃいねぇ。己の安寧のためにアタシのもとについたアンタが、今もこうしてこの事務所にいる。つまり、アタシの天下はまだ終わらねぇってことだろ?」
それが彼女の抱く希望であった。確かに、安寧のために強者に寄生してきた和治であれば、不利な状況に追い込まれた者を見捨ててもおかしくはないだろう。しかし彼は言葉に詰まる。
「そ、それは……」
どこか浮かない表情をしつつ、彼は口をつぐんだ。その反応により、玲玖は事態が深刻であることを理解する。
「……アタシがこの街を牛耳っていることが公になるのも、もはや時間の問題ってわけか。和治……アタシとの縁を切るなら、今のうちだ。アンタは要領の良い奴だ……他の誰かに寄生して生きていけるだろう」
そう語った彼女は煙草をくわえ、その先端に火を点けた。彼女は和治を重宝している一方で、彼を手放す覚悟も決めている。もはや、そんな彼女以上に、和治自身が迷っているくらいだ。
「そう……ですね」
「妙に浮かねぇ顔だな」
「ええ、何かが腑に落ちないのです」
彼は納得していない。されど、その理由は本人にもわからない。少なくとも、彼はいまだにこの事務所にいる――それが全てだろう。
「アタシについてこれなくなった暁には、普通の人生を取り戻せば良い。どのみち、今の世情を鑑みるに、アタシが支配者の座に居座り続けることは難しいだろう。正直に言えばな……アタシは今、限界を感じている」
野心に満ちていた玲玖でさえ、今は自信を失っている。それほどまでに、今の社会構造はネオにとって不利なものである。
*
同じ頃、江真は街の一角で、機動隊に囲まれていた。無論、他者を殺めたくない彼女は、下手を打てない状況にある。武装集団の中の一人――拡声器を持った男が声を張り上げる。
「大人しくしろ! 最上江真! 抵抗しなければ命までは奪わない!」
彼らは間違いなく、江真を収容施設に送り込むつもりだ。江真は唇を噛みしめ、握り拳を震わせる。
――その時である。
突如、その場は煙に包み込まれ、機動隊は標的を見失った。
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