二夫二妻

Assuly

二夫二妻

叶わぬ恋、それは想い人に想い人がいる時だ。だがもしも想い人と結ばれる結末を描けるのなら、と俺は思いながら日々を過ごす。

ある日の朝、いつものようにニュースを片耳に朝食を摂っていると、

「政府は少子化対策に二夫二妻制度を取り入れることを決定しました。」

その一言が俺の耳に入ってきた。そして、

(その制度があれば俺の恋が叶うかも…)

という考えが脳裏に浮かぶ。

俺は守屋翔、ごく普通の恋する高校生だ。俺には好きな人がいる。俺が好きなのは学園二大美女の一人、波来莉緒。だが波来は学園二大イケメンの一人神野悠太が好きだ。その神野は学園二大美女の一人七海加奈が好きで、その七海が好きなのは学園二大イケメンの一人の俺だ。そう、綺麗な四角関係である。それぞれ叶わぬ恋を強いられている。全員が想い人と結ばれる選択肢がない。俺たちに声をあげる異性は多いが、俺たちは想い人しか眼中になく日々自分磨きに力を入れている。

そんな中飛んできた二夫二妻制度。俺としては必ずものにしたいと考えている。叶わないと思っていた恋、それが少し違う形ではあるが叶うチャンス。俺は迷うことなく波来たちを放課後呼び出す。

「大事な話がある。」

俺が真剣な表情で話すと場の空気が変わる。

「まず確認するが波来は神野が好きで、神野は七海が好きで、七海は俺が好きだったよな。俺は波来が好きだ。」

一見おかしな質問だがこの学校では隠す必要すらない公認の四角関係の四人だ。

「今更なんだよ、誰も否定はしないって。」

神野が言うと波来と七海も頷く。

「今日の朝のニュース見たか?」

俺が聞くと神野と七海は首を横に振る。だが波来は、

「もしかして二夫二妻制度のこと言いたいの?」

と俺の言いたいことを察する。それと同時に、

「悪いけど私は嫌よ。倫理的に無理。」

そう言ってその場を立ち去ろうとする。

「波来、ちょっと待ってくれ、一回全員で話そうよ。」

と神野が言う。

すると波来は不本意ながらも席に座る。

「で、二夫二妻制度ってなんだ。」

神野が俺に尋ねる。

「政府が少子化対策に男女二名ずつの計四名での結婚を許可すると発表したんだ。俺たちはまだ高校生だけど、俺たちならピッタリじゃないかって思って。」

「言いたいことはわかった、でも流石に早とちりじゃないか?」

「早いとは思ってる。でも、来年は受験だからゆっくり時間をかけて話をできるのは今しかないから。」

「私は賛成しますよ。私の場合だったら守屋くんと神野くんと同時に付き合いつつ、波来さんと一緒に二人の彼女になるってことだよね。」

と七海が以外にも理解を示した。

「簡単に言うとそういうことだな。」

「俺はあまり気は進まないかな、でも大人になっても守屋と七海その気があるならその時少し考えるよ。」

神野がそう言って話し合いは自然に終わっていた。


高校時代が終わり大学時代も終わり四人は社会人となった。未だ四人の想い人は変わらず連絡も取り合う中だ。時代が過ぎるにつれて、始めは抵抗のあった二夫二妻制度も理解を示されるようになった。むしろ子育てや家事の分担、世帯収入の安定などの観点から好評になっている。

そんな中、俺たちは同窓会と称して居酒屋で落ち合う。

「大事な話がある。」

高校時代と何一つ変わらぬ言葉で俺は話し出す。

「わかるよ、二夫二妻のことでしょ。」

波来が全てを察したかのように言う。

「なんでわかるかなぁ〜。」

俺が不思議そうに言うと

「俺らの仲なんだからわかるよ、それに通話でもそればっかだっただろ。」

「にしては居酒屋なんだね。レストランでも良かったでしょ。」

と、神野と七海も続く。

「まぁ、それはおいといて、二夫二妻についてみんなの意見を聞きたい。俺はもちろん四人で暮らしたい。」

「私も高校時代から変わらないよ。」

七海はそう言った。

「ん〜俺も別にいいかな。四人でいる時がなんだかんだ一番楽しいし夫婦としても仲睦まじい方がいいと思うし。」

高校時代中立だった神野は意外にも肯定してくれた。

「私もいいよ。でもちゃんとルールは決めてよね。」

高校時代は渋っていた波来も賛成してくれた。一人暮らしの厳しさを知った俺たちは世間の人が二夫二妻を取り入れる理由を理解し始めていたのだろう。


そして時は流れ四人で式を挙げ婚約した。今では四人仲睦まじく生活している。一緒に暮らしているうちにお互いの良いところに気付けたのが良かったのだろう。そして二人の妻はそれぞれ子供を授かり、その子供が成長する姿を二人の夫と二人の妻で見守りながら末長く暮らした。

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