幼馴染
「えっと……君等は、僕の友達なのかな?」
そう僕が言うと、
「「え…………?」」
と、驚愕の顔を浮かべた。
「ど、どういう意味……」
そのとき、また病室の扉が開き、女性二人が入ってきた。
…
……
…………
そこから少し時間が経った。
女性二人は、どうやらこの二人の親らしい。
二人の母は僕の事情を二人に話した。
僕は二人の母の話を横で聞いていて、二人の名前がそれぞれ勇人、美夢ということがわかった。
二人は話を聞いて、さらに目元に涙を溜めた。
二人の反応を察するに、この魁斗という男の子は相当好かれていたらしい。
だから、僕に会いに来るとき大きな反応を見せたのだろう。
ただ、今の僕は前の魁斗ではない。
見た目は友達でも、中身は赤の他人である僕に二人はどんな反応をするのだろうか。
そんな一人言を心の中でこぼしていると、勇人という男の子が僕に視線を向け、口を開いた。
「魁斗……そうか、記憶がないんだよな……」
言葉の続きを考えるように、少しの間勇斗は視線をそらし、また僕の方に視線を戻した。
「それじゃあ……初めまして、だな!」
「……えっ」
勇人は太陽のように眩しい笑顔を向けた。
「うん! そうだね! よろしくねっ! 魁斗くんっ」
勇人に続き、美夢もそう言った。
そんな二人に僕は、
"うん"
そう端的に言った。
これが、僕が二人と初めて出会った日だった。
…
……
………
その日から数年が経ち、僕は中学2年生になった。
数年前と違い、僕の体つきや顔つきは当たり前に変わった。
だけど、特別イケメンでもなく、普通の顔つきであった。
しかし、数年前僕と友達になってくれた幼馴染の二人、勇人と美夢は違った。
二人は中学生とは思えない美男美女になっていた。
二人と自分を見比べて距離感を感じてしまったのは言うまでもない。
だからといって、友達ではないということはない。
「よっ、魁斗」
朝の少しガヤガヤとした教室の中でスマホを触りながら座っていた僕に声を掛けたのは勇人だった。
「あ、勇人、おはよう」
「ああ、おはよ」
勇人はそう言い僕の前の席へと移動し、リュックを置いた。
そして席に座り、僕の方へと体を向けた。
「毎回思うんだけど金曜日のさぁ〜、時間割結構だるいよな〜」
「たしかにね。毎週金曜日の時間割は全部暇ばっかだよね」
「そうそう、いやぁ〜時間割変えてくんねぇかなぁ。 ……生徒会のやつらに頼めばワンチャン……」
勇人はいきなり真面目な顔でそう言った。
「生徒会でもそんな権限ないよ…」
「……それもそうか」
もし、生徒会にそんな権限があるのならとっくに学校は崩壊するだろう。
せめても、校則を変えることしかあまりできない。
そんな当たり前の事を心の中で思いつつ、勇人と冗談混じりの会話をした。
あれこれしてるうちにチャイムがなり、ホームルームが始まった。
朝の挨拶をして、先生からの話を聞き、また10分の放課へと進んだ。
「今日も来てないな」
勇人が僕の方へと体を向かせながら前の席へと視線をやった。
そこには空白の席があった。
「うん。 今日も来てないね……美夢」
そう、その空白の席の持ち主は美夢だったのだ。
中学1までは、普通に登校していたが、中学2生へとなった途端から急に登校しなくなったのだ。
もちろん、僕と勇人はそんな美夢を心配して、家に訪れたが親曰く、放っておいてほしいそうだ。
そうして美夢がなぜ学校に来なくなったのかも分からず、会えていないのが今の現状だ。
そんなことを思っていると、何やら勇人が女子に声を掛けられていた。
「勇人くん! いきなりなんだけど手伝ってほしいことがあって………」
「ああいいよ。それで何を手伝ってほしんだ?」
勇人は席を立ち、喋りかけてきた女子と一緒に教室から出た。
こうやって女子に声を掛けられていることは珍しくなく、日常茶飯事なため僕は気にしていなかった。
さすがイケメンだな、女子に人気だ。
そう思いつつ、再度美夢の席へと視線をやった。
僕は目を瞑りながら…
このままでいいのだろうか。
このままで本当に――――――――――――
【♪キーンコーンカーンコーン♪】
あ…チャイムが鳴ったようだ。
…
……
………
時間も進み、昼休憩となった。
僕はというと昼のご飯は食べ終わり、教室の近くのトイレへと向かっていた。
「すっごい人がいるな…」
トイレに着いたが昼休憩だからか、沢山の人がいた。
僕は授業に間に合いそうにないと思い、ここから少し遠いトイレへ足を運んだ。
このトイレに行く度に思うのが、人が少ないということだ。
どの教室から遠いのか、それとも周りが他と違って少し暗いのが理由なのか分からないが、そのトイレの近くには人の気配がなかった。
いつ見ても不気味悪いので僕はさっさとトイレを済ませ、来た方向へと戻ろうとした。
しかし、そのとき甲高い声が聞こえた。
「―――近来てな―――よね」
「――がに――んじゃない?」
(……聞き耳を立てるのはよくないな)
僕はそう思い、早足で音をたてずに戻ろうとしたが偶然にも、ある名前が聞こえた。
「美夢にあれだけのことできて満足だわぁ」
そう、美夢という名前だった。
僕は動かしていた足を止め、とっさにその話声の方へと近寄り、聞き耳をたてた。
それと同時にポケットからスマホを取り出し、あるボタンを押した。
「クスっ。 ね~。今じゃ不登校だもんね」
「ほんと、殴ったときのあの表情最高だったよね」
「まぁ、あいつが勇人くんに媚びうるのが悪いんだけどね」
「それな~。 あとあの噂も広まったしね」
「あれね。美夢がパパ活しているっていう噂。私たちが嘘で流した噂だけど、よく回 ったよね」
「顔の広い先輩に協力してもらったからね。先輩も美夢のことよく思ってなかったから簡単に協力してくれたわ」
「はは、ウケるわ。ざまぁないね」
「他にもさぁ―――――――」
【♪キーンコーンカーンコーン♪】
「あ、ヤバっ! チャイム鳴っちゃった!」
「ちょっ! 急がないと!」
先ほどの笑いの表情から一転、焦った顔を
女子たちは僕とは反対方向へと走っていった。
僕はというと――――ただ棒立ちになることしかなかった。
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