【Day 5 琥珀糖】
お土産で琥珀糖をもらった。一足早く夏休みをとっていた同僚は、京都旅行へ行ってきたそうだ。京都で人気のある和菓子屋の琥珀糖だとか。
和菓子を食べる習慣は、茜はあまりないけれど。おいしいものは大好きである。
夜、さっそく琥珀糖をいただくことにした。季節柄、いつもなら冷たい麦茶かアイスティーを飲むのだけど、和菓子なら緑茶がいいだろう。スーパーで特売の時に買っておいたティーバッグの緑茶だけど、まぁいいか。
温かい緑茶を淹れて、琥珀糖を包みから出す。それは、まるで宝石のようだった。
「綺麗……」
茜は思わず感嘆の息をもらす。白い小皿に盛り付けたが、食べるのがもったいないくらい綺麗だった。立方体に近い形の琥珀糖は、原材料にフルーツが使われているらしい。半透明の、白に黄色に黄緑にピンクに紅色。これって、“インスタ映えする”ってやつかな。インスタやってないけど。
試しに、スマホで写真を撮ってみた。撮った写真を確認すると、綺麗とは言えなかった。実物はこんなに美しい和菓子なのに、写真の中の琥珀糖は魅力的には見えない。写真の腕は素人だしな、と諦めた。
「いただきまーす」
随分と躊躇ってしまったが、手を合わせて琥珀糖を一つ、指先で摘んで口に放る。ここが実家だったら、手づかみなんてお行儀が悪い、と母に嗜められていただろうか。
「ん!おいし〜」
シャリっとした食感を楽しむ。ゼリーみたいだけど、ちょっと違う。少し不思議な食感。柚子の香りがして、すごく美味しい。良いお土産をもらったなぁ。しかも、一人暮らしの今なら……この琥珀糖は独り占めできる。
夜に一人で過ごしていても寂しさはなくて。別に家族仲が悪いわけではないけれど、ホームシックにはならなさそう。
おいしいお菓子を独り占めできる喜びを感じつつ、茜は琥珀糖を堪能したのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます