第23話 詰む

 あれからおれは、クロエの存在を皆の目に触れぬよう隠し通そうとしてきたのだが、蛇女子とヒョウ女子の相手もせなばならなかった。


 おれが誕生されせてしまったのだしな。

 責任取らなくては……。


 何故か2人はクロエと違い、暫くすると人格を持つようになった。


 幸いアコお姉の記憶は引き継いでおらず、どう言うわけか別人格だったが。


「どうして、私の名前が〈ニョロ〉で、このおチビちゃんが〈キリエ〉なの! 納得いきませんわ」


 言いながら、この蛇女子はじわじわおれににじり寄って来る。


「ヒョウエや、ヒョエだと、なんか語呂が悪くてな。ついルネサンス音楽の好きな曲名から取っただけだ」


 蛇女子もといニョロは、下半身の蛇の尾で次第にそう言ったおれを絞めにかかっていた。


「私にも、もっとこう格調高い名前付けてくださらないこと? だいち私、蛇女ではなく、人魚、セイレーンですのよ!」


 う、ウソだぁ。蛇女にしか見えんが……。セイレーンて、鳥の姿をしてる方が正解だったはず。


 ニョロに絞め落とされかけ、必死でタップしてるのになかなか許してもらえなかった。


 キリエは無邪気にもニョロの尾をマフラーでも巻くかのように自分に巻き付けながら言った。


「あたしはニョロって可愛いと思うよー! 名前も見た目もっ!」


「そうかしら?  可愛いというより、綺麗、美しいと言って欲しいけれど」


「ニョロニョロしてるしー。やっぱりニョロって感じ。あははは」


「ウキー! こんなおチビに。バカにしてない?」

 キリエはニョロの絞め技を器用にスルリと抜けていた。


「ニョロおおお、木登り得意でしょ? 一緒に木登りしてあそぼー! タマキもクロエも一緒だよおお!」

 マジか……。


「さっきまで4人で四本足のニワトリみたいなのを追いかけて遊んでたばかりじゃないか」

 しんどい……な。


 このところ、こんな具合に振り回され通しだった。


 クロエも一人にしておくわけにもいかず一緒に連れていた。



 *



 校舎の裏手側は比較的、皆にとっては盲点となり、日中の間はそっちで過ごしていた。


 その辺りで行動してる分には問題なかった。


 問題はなかった…………はず……なのに……。



「タマキいいいーー! おともだち連れてきたよおお!」


 ふえっ?

 ギョッとして、キリエの方を見た。


 ニョロが言った。

「あら? キリエ、その殿方はどなたかしら? 割と端正な方ですこと。それに少しふくよかだけれど、グラマーなご婦人まで」


「タマキよ、これはどういうことだ? 何故メス猫にメス蛇と2人も? というかキサマ、更にもう1人後ろに隠しているな」


 おれは苦しまぎれにクロエを背後に隠したが、なんかもうダメだわ……。 


 おわた……。詰んだ!

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