第17話 咎人の告白

 おれはとんでもなく言いづらいことを続けた。


「CとDカップの中間くらいのおっぱいやお尻を触るだけじゃなく――その辺はお姉が熟睡するのを見計らって普段からしていたが。ちょいペロだとかは。睡眠薬を飲ませた夜は相当なエロの限りを尽くしてしまった。そして遂には一線を越えて……犯して……実の姉を……ああ。……実は血が繋がってないだとかそんなエロマンガみたいな設定もないのに」


 クロエはどんな顔をしているのかわからん。

 おれはクロエの足もとに目をやりながら吐き出した。


「お姉には小さい頃から力でねじ伏せられ、いじめられてきたこと数々。随分悔しい思いをし、大人になったら仕返ししてやろうと何度思ったか。でも、そんな機会が思いの外早くくるとは、なーんて思ったよ。お姉を征服してやったという快感もあった……」


 おれは一呼吸置いてまた続けた。


「しっかりゴムを装着してたとはいえ、賢者タイムに入るとどよーんと後悔した。お姉は初めてでなくともこっちは初めてで、そんなことで童貞からの卒業なんて、自己嫌悪だよ。バレたら責任取らないとだよな。頭では姉を拒絶しながも、おれの肉体は異様な興奮とともに姉のからだを激しく求め……て……あぐわあああ!」


 クロエの顔を恐る恐る覗くと、おれの酷いカミングアウトをうつむき黙って聞いていた。

 部屋の窓の外からは月明かりが差していた。


「そういえば、創世記のアダムとイヴってのは兄妹だよな。イヴはアダムの肋骨から創られたんなら、同じ遺伝子だったはずだ。要するに一卵性双生児と同じか。いや、一卵性の男女の双子というのは理論上あり得んが。そこはまぁ、神話といったところか」


「あばあば」


「一卵性双生児の近親婚て、相当なぶっ飛びようだよな。そこから人類の歴史が始まったというのはあまりに無理がある。近親婚というのは神々だけにゆるされた特権ラヴなのかもしれない。というおれは一歩神に近付いたのか? なんてな」


 無理に笑ってみせたが、クロエは特に笑ってなかった。

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