第16話 墓まで持っていきたい
半ば廃墟と化した荒れていた校内に部屋を見つけ、そこへ入ると火を灯して、クローン女子にも落ち着くよう促し、おれも椅子の代わりになりそうなものに深々と座った。
「――なら、丁度良いかも。一息ついたついでだ。お、おれのカミングアウトを聴いてくれるか……あまりに罪深く、誰にも話せなかったことを」
クローン女子は言葉を理解してる様子は無かったが、彼女なりにおれの話すことに、幾らかは興味有りげに耳を傾け、なんとか返答らしきことを口に出す。
「おう」「あまあ」「かむあ」
早くも学習しようとしているかのようだ。
あどけない表情を浮かべつつ。
しかし目は濁っておらずしっかりとした輝きがあった。
おれは、あまりにも罪深く、今まで誰にも言えなかった恥ずべき話を切り出した。
どうにも罪悪感があったのだ。
「さてどこから話そうか、クローン女子よ、クロ子よ。……取り敢えず今はクロエとでも呼んでおくか」
「あば……うま。ろえ」
「……おれはな、未だ夜独りで寝るのが怖い。オバケがどうにもこうにも怖くてな。今やサイトーが死んだとあっては、今後は誰と寝たらいいのか? とんでもなく重大な問題に直面してる。まぁ、そこはおまえとか。ね、ね寝てくれる?」
「うまうま」
「世界がこんな事になる前は、その……恥ずかしながら……ま、毎晩、そのォ……お、お姉にくっ付いて寝ていた。ひとつ上のお姉と……。おれにはかつて、アコという姉がいた。おれがいうのもなんだが、黒髪の似合う立派な顔立ちですらりとしていた高身長女子。いわゆるイイ女ってやつなんだろうな」
クロエは少しはにかんだような気がした。豊かなショートの銀色の髪をたどたどしくかき上げるふうにして。
「おれと違ってモテてたし、お姉から彼氏の愚痴を聞くこともあったし、もう既に初めてはあげてしまってたと思う。おれといえば対照的にこんなで陰キャの部類だし、さっぱり女子に縁が無くてな。そ、そ、そのモンモンしまくってたんだよ……!」
「あばうま。もーもん」
「だって……お姉も夜一緒に寝てると、ごそごそと始めてしまい甘い声を漏らすなんてこともあったんだ……。おっ、おお姉のおパンツくすねて頭に被り、ぶっこいてしまうだけじゃ飽き足らず、ある夜こっそりと睡眠薬飲ませていたずら……」
おれはさすがにクロエに向けていた視線を下に落として続けた。
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