第12話 美少女育成ゲーの予感

 ツバキは赤子を無事出産しており、それから間もなくだった。


「クローン培養、再生は完了しました!」

 そうテクノが言った。

 

 おお、ようやくおれにも悲願の嫁が!!

 皆も歓声を上げた。


「クローン体なのですが、肉体は再生できても果たしてパーソナリティに記憶まで再生、引き継ぐのかまでは解りかねます。なんせヒトのクローンは禁忌でありデータもありません」


「肉体しか生き返らんてわけか」

 パンチロが呟いた。


「クローン体の女子の記憶が再生しなかった場合は赤子同然ですから教育してあげてください」


 テンション高く、サイトーが言った。

「び、びびびしょ濡れびび美少女育成ゲーみたいで、萌えだ! わわ『わからせメモリアルIII』よりイイかも!! でもやっぱり『わかメモIII』やりたい……みんなで地下都市メトロポリスに行けば……」


「もうドイツ表現主義はいい。キサマの妄想なのだろう?」

 シキがサイトーに向かって言った。


「も、妄想アニメじゃない! ど、どど、どドイツは本当にあったんだ!」


「いったいどないして、おまえそんなところ行ってんで? カンガルー毒毒トカゲの旦那のすみかになっとったやないか」


「お、おお俺は、ははは入れたんだ!」


「もしや、幾つかある洞穴のうち、たまたまヤバいのが居ないところがあったとかじゃ?」

 おれがそう言うと、シキが答えた。


「……うーむ、なら一度サイトーに案内させてみる価値はあるかもしれんな」


「ドイツって売春合法らしいよな。まったくうらやまな国やで。ドイツのねえちゃんにもぶっかけたいわ」


「さあ皆さん、ドイツはその辺にして、各々おのおのの伴侶となるクローン体の乙女たちとお顔合わせを」

 テクノは言いながら、5つある大きなガラスの円筒をひとつずつ、その中を満たしていた人工羊水を抜く操作を行っていた。

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