第11話 煩悩オーバードライブ

 おれたちはやったんだ!

 サマエルに勝利した! 女子を勝ち取ったんだ!


 ──うぉうぉぉ! あ~、あおッあおッおろおろおろーん!

 ──うぉうぉぉ! あ~、あおッあおッおろおろおろーん!


 ところが、だ。

 男子五人に対し、女子が一人。


 まだまだ暴走は止まりそうになく、勢い余っておれたちは女子を血みどろの奪い――。


 ――ドカッ! バキッ! ズガガガッ! ブチッブチチッ! ゴキッ!


 そこでもまたバフがかかっていたせいかクリティカルを連発した。

 その末、女子はバラバラな死体と成り果ててしまったのだった…………。



 取り返しのつかないことをしてしまい、ようやくおのおのが冷静さを取り戻し始めた。


「……や、やり過ぎてもーた」

 パンチロがボソりと言った。


 何せおかしなテンションになってたんだ。

 ついにその美人な女子とやらの顔をハッキリと確認せぬままに。


 ちらりとは顔が見えたが、何気に美形だなと判る程度だった。

 今じゃ見るも無惨。顔すら判別出来ないほどに……。


 落胆する一堂の中で、テクノの眼鏡がきらりと光った。

「ノープロブレムです。かえって都合が良かったかもしれません」


「どういことだ、テクノ?」

 シキが答えを求めた。


「それぞれ、この女子の肉片を持ち帰ることにしましょう。そして、ガウリイルでクローン培養し、再生するのですよ。一人だった女子は、ちょうど我々の人数分になるってわけです」


 に、22世紀の科学技術しゅごい!


 シキは女子の肉片、おっぱいの一部を持ち帰ることにしたようだ。

 パンチロは太腿ふとももを。

 サイトーは脳髄を。

 テクノはあごを。

 おれは尻毛を。



 もはや取り返しのつかない事を……と思われたが、あっさり問題解決の光がきらりとテクノの眼鏡と共に差し、おれたちはウッキウキーと帰路についていた。


 少し冷水を浴びせるかのようにパンチロが言う。


「しっかし、俺らサマエルの旦那とその嫁をぶっ殺してもーたやん。あの旦那って『我れは魔将軍サマエルなり〜』とか言うとったし、なんやデーモンの偉いさんで、その手下がぎょうさんおって報復に来たりせーへんやろか?」


「その時はその時だ。また対策を考えるまでのこと。テクノがその気になれば、デーモンの軍勢なぞ一瞬で消し炭に出来るレールガンだって用意出来るだろう」


「えっ、ちょっとそれは、いくらなんでも我輩をかいかぶり過ぎですよお!」

 困ったようにテクノが言うと、皆まで言うなとばかりにシキはぽんとテクノの肩を叩いた。

 まさに友情・努力・勝利を絵に描いたような感じだと思った。


「ガハハ、せやな。プロトンビーム撃ちまくる多脚砲台とかもええな」


「で、出来るなら、デーモンとの和平を望みたいところだが。連中だって話せば分かるような?」

 とおれ。

 ……聴こえないよう、小さな声で言うヘタレであった。

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