第9話 ファースト・チルドレン

 ツバキが妊娠してから数ヶ月が経ち、陣痛で苦しむようになっていた。

 なんかもう陣痛とか早くね?


 テクノに聴くと、ものの三ヶ月ほどで出産に至る促進剤? 胎児の成長の速度を上げるよう促すものを投与していたらしい。



「う、生まれそうだよ! く、苦しいよ! ひぃぎぃ!!」

 木漏れ日が少々差していた薄暗い校舎の一室で、ガクガクビクンビクンと酷く苦しむツバキに、冷たくも皆見向きもしなかった。


 おれも薄情だと思ったが、それどころじゃない。


 おれたちはある発見に浮き足立っていたのだった。


 発見とは、おれたち六人より先に目覚めていた人物の姿が確認されたというものだった!


 ――しかもその人物とは、なんと女子だという!!



「しっかし、めっちゃベッピンな女子やったな。あんな女子、俺らの学校におったっけ?」


 おれはハッキリとは見てないが、そんなに美人女子なのか!


 すっかり興奮し、モヒカンを揺らしまくるパンチロに対し、まだ少しは冷静なシキが言った。

「下級生じゃないのか? それより問題はサマエルだな。あのメス豚、すっかりサマエル専用メス豚になっていたとは……」


 めったに口を開かないサイトーが言った。

「で、ででデーモンのサマエル……。毒蛾のような羽根を持ち、下半身は毛むくじゃらの野獣……。更には腕というか、長いヌメヌメのエロゲーによく出てくるような二本の触手。な、ななんで、あの女子はあんな、き、ききキモキモいデーモンなんかと……」


「キモいってお前が言うなや。お前の方がよっぽどキモいやんけ。いっくら女子がツバキだけしかおらへんから言うても爪くらい切れや。お前の方が悪魔や。悪魔の爪みたいやぞ。それにサマエルの顔見たんか? サマエルの顔はな、韓流アイドルのキム・タクにめっちゃ似とったぞ」


 パンチロの言葉にテクノが付け足す。

「それだけではないかもしれませんね。なんせデーモンなんです。我輩たち人間にはない、何らかの得体の知れない能力を有するのかもしれません。人間の精神を支配する、マインドコントロールを行えるような力を持っているとか」


「ふうむ。そのような力を持つデーモンか。それでも我々は力ずくであのメス豚をサマエルから奪い取るしかない! おとこの戰いだ!」

 シキは皆を煽った。


「せや、俺らでサマエルの旦那ぶち殺して、あのベッピンな女子奪うんや! 百円ライターもろた恩を仇で返すことになるけど、しゃーない。NTRっちゅーやつや」


「サマエルの妻を、我々が寝取るというわけですね」


「せや、ネトラレやネトラレ! やったんで!」

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