第4話 拷問機ガウリイル

「ぼく、男子なのに……。男子にムリやりチューされたり、それ以上のことなんて、もう嫌だよ」


 愚痴ったツバキに対してパンチロが言った。

「ホンマやで。出来るんやったらバッタもんの女子やなくて、ブランドもんの女子にぶっかけうどん奢ったりたいで」


「じゃあ、もうやめてよッ! 痔だってなかなか治らない一方なんだから……」


「おもくそケツをへこへこさせてアヘっとるくせに、なにいうとんねん。もう〝ところてん〟ちゅうやつもできそうやないか」


 そこへ、テクノがやって来て切り出した。


「シキさん、パンチロさん、そしてツバキさん、朗報です。なんとか問題解決の道は開けそうですよ。調べてみたところ、特殊医療研究室の超小型ダイソン衝突型ポーグス粒子加速医療システム・ガウリイルがしっかり生きてます。他にも量子コンピュータが幾つか」


「それが?」

 シキがせかすように言った。


「ガウリイルで、ツバキさんの性転換手術を行ってはどうでしょう?」



 ――想像を遥か斜め上をゆく言葉が飛び出していた…………。


「え、ええ――ッ! そ、そんなのって……。いやだ、いやだよ……!」


 テクノのいかにもな倫理の二文字をどっかにやっちゃってる科学者的冷酷な言葉に、ツバキはわなわなとひどく動揺した。



 *



 日が暮れ出すと、日中とは打って変わりとたんに肌寒くなる。


「どどいつ・しょーけん・ブギッ!」

 鳥や虫たちの声に混ざって、遠くから聞こえるサイトーの奇声すら風情があるってものだ。


 はっふーんと、ええ塩梅あんばいの湯加減のドラム缶風呂におれは浸かっていた。

 ふと見やると、ガジュマルみたいな木の側に人影が二人。

 夕日の逆光で誰かはよくわからない。


「あれから色々考えたんだけど、シキだけがぼくを愛してくれるのなら、女になっちゃっても良いかなって。他の男の子ども生むのなんてゼッタイ嫌だし……」


「それはどうか。キサマは我らのメス豚という共有財産なのだ」

 声からして、シキとツバキの二人か。


「え、ちょっ、そんなのって……。シキ以外はゼッタイやだよ! 他の男から守ってよ!! パンチロとかパンチロとかパンチロとか!」


「しかし、私だけ中出しというのはな。争いの火種を生む可能性があろう」


「うあああん! シキだけと愛し合えるんだったら手術受けようって気になってたけど、パンチロモヒカンなんかに妊娠させられるとか嫌だあああ!」


 ツバキは、泣き叫びながら走り去っていた。



 だが、翌日には……。

 特殊医療研究室で、か弱くいたいけなツバキは結局、中二少年たちの煩悩の力でねじ伏せられ……ああ。

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