その17

 総理大臣になった市場茂雄さんは上機嫌だった。


 「納豆と羊羹内閣。私もやっと総理大臣になれたよ。これから君は市場ファースト・レディだ。

 粗相のないように頼むよ」

 「納豆じゃなくて納得でしょ? 羊羹じゃなくて共感。粗相があるのはあなたの方でしょう? せめてアメリカ大統領がデンデンのうちに会わせてちょうだいね?」

 「まかせておきなさい。僕はデンデンと握手するために総理になったのだから。

 これはお爺ちゃんも親父もなし得なかった偉業だからな?」

 「アメリカとの地位協定見直しはデンデンに言うんでしょうね?」

 「あれはジョークだよ、アメリカンジョーク。そんなこと言うわけないだろう?」

 「総理大臣になればいいってもんじゃないでしょう? 衆議院は解散しないと言っておきながらすぐに掌返しをしちゃうし。

 私、政治家婦人会で笑われてるのよ、「掌返しの市場の奥様」って」

 「言いたいヤツには言わせておきなさい。総理になったもん勝ちなんだから」

 「あなたはあの痴呆老人の言いなりじゃない」

 「仕方が無いよ、あの人のお陰で珍恋次郎に勝てたんだから」 

 「珍恋次郎があまりにバカ過ぎて、阿呆副総理に勝てないと思ったからあなたに鞍替えしただけじゃないの。

 でも冷や冷やしちゃったわよ、だって最初の投票であなたが2位であの妖怪人間ベラが1位なんですもの。絶対負けたと思っちゃった」

 「アイツが総理になったら日本は北朝鮮になってしまうからね。天は私に味方をしたというわけさ」

 「明智光秀にならなきゃいいけど」

 「三日天下か?」

 「アンタ人望がないから後ろから撃たれそうで怖いのよ」

 「心配はいらない。僕には豊富な裏金もあるし、韓国統一教会もバックについているからね?」

 「最初は裏金議員と韓国統一教会と関係のある議員は公認しないって言ったじゃないの」

 「あの時のことは反省しているよ。でもああでも言わないと国民どもは納得しないからね? 総理になってしまえばこっちのものだよ」

 「まさか世襲議員も嘘だったの?」

 「当たり前じゃないか、世襲とは選ばれた家系ということなんだから。事実僕は世襲議員だしね?」

 「アンタって人は。この人でなし!」

 「僕は人じゃないよ、神なんだから」



 「ラオチュウ料理長、なんだか聞いているだけでイヤになっちゃいますね?」

 「だからいいんじゃないか? これでより我がパンダ王国が日本を占領し易くなったんだから」

 「まああの妖怪人間ベラが総理にならなくて良かったですけどね? 戦争しなくて済むから」

 「アイツは右翼のフリをしているだけだ。総理になったら靖国神社になんか参拝しないよ」

 「そんなもんですかねえ」

 「いずれにせよ、民自党はもう終わりだ」

 「創価学会党が民自党から離れればいいのになあ。そうすれば野党がだらしなくても過半数割れするかもしれないのに」



 その時、店にヘンな格好をした連中がピストルを持って乱入して来た。


 「我々は維新である! 新選組がいるというタレコミがあった! 匿うとためにならんぞ!」

 「お前たちは人気急落の維新だな! あんな兵庫県痴事を推しやがって!」

 「何の話だ? そんなの知らん! いいから新選組を早く出せ!」

 「ここに新選組はいないよ、帰れ! 空飛ぶクルマに乗って!」

 「ここにはおらんようじゃな? 仕方がない、サウナにでも行って整えて来るとしよう」

 「駄目だコイツら腐ってる」


 

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