その16
「ラオチュウ料理長、都知事選が終わって一ヶ月になりますけど、もうすっかり騒がなくなりましたね?
あの大池どくだみ子を告発した少林寺さんといい、元側近の弁護士さんや都民127名の刑事告発は一体どうなったんでしょうね? 検察はまた見てみぬふりですか? この前の裏金みたいに」
「この世はカネだからな?」
ラオチュウは『クック・どう?』を使って回鍋肉を炒めていた。
「料理長、それは「アノ・ヒロシ」さんがテレビCMで使っている『クック・どう?』じゃありませんか? いいんですか? そんな市販の物なんか使って」
「これは俺が作る回鍋肉よりも旨いし簡単だからな?」
「料理人としてのプライドはないんですか?」
「ないね、そんなもの。美味けりゃそれでいいだろう?」
そう言って笑う、パンダのラオチュウの背中には哀愁があった。
そこへ暑苦しいダークスーツの男たちと車椅子の大池どくだみ子が店に入って来た。
「汚い中華食堂ね? 『チンチン楼』とか予約出来なかったの?」
「今はあまり目立たない方がいいかと。それに神宮球場でのデッドボールで痴事は骨折ですからね?」
「まったく私を誰だと思っているのかしら? みんなでボールをぶつけるなんて。
ちょっと検事総長、まさか私を逮捕したりしないわよね?」
「ご安心下さい都痴事。うんこ森森元総理からも「くれぐれもよろしくな?」と仰せつかっておりますので」
「それならいいけど」
「どうせ国民はニワトリと同じです。三歩あるけばすぐに忘れてしまいますよ」
「プロジェクション・ラッピングにホッカイロ大学の学歴詐称疑惑、有力政治家との枕。もうすっかり人々の記憶からはなくなっていますよ」
「学歴詐称? 私はホッカイロ大学を首席で卒業した女よ、賢いのよ、頭いいんだから。
英語だってすぐに使えるし。レジェンド、アイ アム ファースト」
「おお素晴らしい、まるでカタカナみたいな英語! 流石は元国際派ニュースキャスター。何を言っているのか全然わかりません!」
「何しろ大池どくだみ子痴事は元防衛大臣でしたからねえ」
「東京を守るには核しかないのよ。まあシェルターを作ればまたゼネコンからお金がガバチョともらえるけどね?」
「でももうお金は海外に送金してどっさりあるじゃありませんか?」
「シッつ! 誰が聞いているかわからないのよ、適当なこと言わないで頂戴、国税庁長官」
「ごめんなさいです」
「お金と権力はね? 増えれば増えるほどもっと欲しくなるものなのよ」
「でももう都痴事お婆ちゃんですから・・・」
「チョップ! 誰かフォークを持って来て頂戴。警視総監の頭にフォークを刺してあげたいから。包丁でもいいわよ」
「まあまあ都痴事。とりあえず乾杯しましょうよ。おい、レッサーパンダ、ロマネチンコを10本、都庁のツケで持って来い!」
「そんなお酒はここにはありませんよ、港区食品さんの『どくだみ青汁酒』しか」
「馬鹿野郎! なければすぐに買って来い!」
「私、中華じゃなくて『じゅう兵衛』のお寿司が食べたいわ。もう歳だから脂っこい中華はちょっとねえ」
「ハイ! すぐに出前させます! オイ、すぐに銀座の『じゅう兵衛』に電話して出前を頼め。こっちは三友不動産にツケとけ」
「それから領収書はちゃんと貰いなさいよ。会議費で落とすから」
「これだから都痴事は辞められませんよね?」
「総理になんかなるより都痴事の方がずっと儲かるわよ。あはははは あはははは あっ、笑いすぎて入れ歯が外れちゃったわ」
ラオチュウがショウ・コウシュに言った。
「このフカヒレスープをサービスだと言って持って行ってやれ」
「でもこれ、トイレの水で作ったはるさめスープですよね?」
「どうせフカヒレもはるさめもわかんねえよ、アイツラには」
「それにトイレのお水でのスープの方がお似合いですもんね?」
間抜けな電痛、三友不動産に検事総長、国税庁長官に警視総監。そして都痴事の大池どくだみ子はそのトイレの水スープを絶賛したらしい。
めでたしめでたし。
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