【完結】街中華『ちゃらんぽらん』(作品241015)

菊池昭仁

街中華『ちゃらんぽらん』

その1

 ホール係のレッサー・パンダのショウ・コウシュがお出迎え。


 「いらっしゃいませ~! 我が街中華、『ちゃらんぽらん』へようこそ。

 パスポートを拝見します」

 「パスポート?」

 「はい。ここはパンダ国の直営店ですから入国審査が必要になります」

 「この小汚ねえ街中華の店がか?」

 「そうですよ。ここは「食べロバ」で4.8の評価をいただいてる有名店ですからね?」

 「困ったなあ。パスポートなんか持ってねえしなあ。

 外国は大阪しか行ったことがねえし」

 「それでは特例として、本日は運転免許証でもいいですよ」

 「随分適当じゃねえか?」

 「何しろ店名が『ちゃらんぽらん』ですから。両替はその両替機でお願いします」

 「両替? 食券を買うんじゃなくてか?」

 「本日のレートは1,000円で1万パンダになります」

 「何だそのパンダって通貨は?」

 「ここでは日本円は使えません。パンダ国なので」

 「それじゃあ取り敢えず2,000円を両替するか?」


 両替機で2,000円を20,000パンダに両替をする客。

 

 「ご注文は?」

 「半チャン・ラーメン、それから餃子」

 「半チャン・ラーメンと餃子。入ります!」


 料理を食べて頷くお客。


 「うん、美味いじゃねえか! しかもこれで11,000パンダだなんて安いよ。

 この店、絶対に流行るぜ。行列になるな?」


 そしてお会計。


 「半チャン・ラーメンと餃子で11,000パンダになります」

 「はいよ、20,000パンダ」

 「ありがとう餃子います。おつりの9,000パンダになります。お確かめ下さい」

 「確かに。それじゃあこの9,000パンダを日本円に両替してくれ」

 「申し訳ございません。ここでは日本円への両替はいたしかねます」

 「なんじゃコラッ! それじゃあただのボッタクリ中華じゃねえか!」

 「畏れ入ります。ここはパンダ国なので。テヘペロ」




その2

 「ラオチュウ料理長、アイツら凶本興業のお笑い芸人たちですよ。

 あの金髪筋肉変態エロオヤジと田無犬太郎たなしけんたろう、そして過去田小路かこだこうじもいます。

 あれれ、『イエローハット』とか『反社の奥様たち』で儲けた生臭尼作家の「それいけ家田倉庫いえだそうこ」まで来てますよ。

 どうやら合コンしているみたいですよ。あの女の子たち、上納されちゃうのかなあ? かわいそうに」


 ジャイアント・パンダの料理長、ラオチュウは寡黙な男、じゃなかったオスである。

 そんなことに興味はなかった。


 「・・・」

 「ボク、ちょっと様子を見て来ます」


 ホール係のレッサーパンダ、ショウ・コウシュが彼らに近づいて行った。


 「お冷のお替りはいかがですか?」

 「うるせえタヌキやな? いらんいらん、邪魔や!」

 「ボク、タヌキじゃないです。レッサー・パンダです」

 「同じようなもんじゃボケ! おまえ、かわいい顔して腹は真っ黒やないけ!」

 「ボクが一番気にしていることをよくも言いましたね?」

 「おいタヌ吉、携帯はここに置いていけ。

 俺たちは芸能人だからな? 撮られるわけにはいかんのや」

 「そうしてこのパツキンの人に気に入られようと、女の子を差し出す魂胆ですね!

 よう知らんけど」

 「うるせえチビパンダやな! ほら、これをやるからあっちへ行っとけや。シッシッツ」

 「あっ、新潟の笹団子だ! ワーイ、ではどうぞごゆっくり」


 笹団子を貰い、ショウ・コウシュはスキップをして厨房へと戻って行った。


 「料理長。笹団子をもらっちゃいました。一緒に食べましょうよ」

 「俺はイヤなヤツからは笹団子ひとつだってもらいたくはねえ」

 「それじゃあボク、みんな食べちゃいますよ。ムシャムシャ

 美味い! ほっぺが落ちちゃいそう!」



 家田倉庫がみんなの前で金髪芸人を擁護していた。


 「ノコノコついていく女の方が悪いんですよ。梅本さんは悪くはありません。

 ついていかなければいいんだから」

 「俺が乱暴した? ふざけるんやないで、証拠がないやんか? クソ文秋」

 「田無犬たむけんタイム、入りまーす! はい、みんな脱いで脱いで!

 梅本さんによく見えるようにね?」


 そこへまた、レッサーパンダのショウ・コウシュがやって来た。


 「ハイハイ。もう脱いでますよー」

 「おまえはパンツを履け!」

 「Don't worry. I'm wearing!」


 それを聞いていたラオチュウ料理長がレバニラを炒めながら呟いた。


 「wearは他動詞だ。

 正しくは I'm wearing Pants だ」


 パンダのラオチュウは学があった。

 

 


その3

 常連の田中さんが、カウンターで餃子を食べながらビールを飲んでいる。


 「大将、さっき確定申告に行って来たんだけどよお、あんまり頭に来たから言ってやったんだ。

 「国民は増税、政治家は脱税かよ? ふざけんな! 税金なんか払わねえぞ!」ってな?

 そしたら税務署の奴が言うんだよ。

 「刑事罰と行政処分を受けることになりますよ」と脅しやがる。

 じゃあ政治家は死刑だよな? ったくよお! どうなってんだこの日本は!

 ビール、もう1本」

 「10年以下の懲役、または500万円以下の罰金。あるいはその両方。

 過少申告加算税、不納付加算税、延滞税、無申告加算税、重加算税、利子税などが加わる場合もありますからね?」


 ラオチュウは麺を茹でながら答えた。


 「だってよお、不明、不明、不明って申告してんだぜ。

 あの八王子のチンピラ国会議員、安倍場あべば派の腰巾着、安牛田あんぎゅうだの野郎」

 「ホントそうですよねえ。ボクも許せませんよ、裏金だなんて」


 ショウ・コウシュがビールを持ってやって来た。


 「ショウちゃんも嫌いか? あの安牛田の奴」

 「だいっ嫌いですよ、だってアイツ、ボクの笹をとりあげようとしたんですから」

 「それはお前が「パンダ・パーティ」を主催して受け取った「裏笹」だろう?」

 「エヘヘ、テヘペロ」


 ショウ・コウシュは可愛らしく舌を出した。


 「いいじゃねえか、裏笹くれえ。

 でも裏金は駄目だぜ裏金は。

 使い途が言えねえのは言えねえような所にも配っているからだ」

 「どんなところへです? 田中さん」

 「たとえばゴルゴとか・・・」

 「ゴルゴってあの、「命」とかをカラダで表現したり、お尻から火を吹きそうな激辛料理を食べる人ですか!

 「まあそんなところだ」

 「ブート・ジョロキアとかなんじゃらスコーピオンとか高そうですもんね?

 なるほどなるほど、だから恥ずかしくて言えないんですね? 裏金の使い途」

 「それから選挙や街頭演説の妨害のためにその筋の「組」に払ったりとかもあるからな?」

 「えっ、幼稚園にもですか!」

 「何でだ?」

 「だって「桃組」とか「うさぎ組」とかにでしょう?」

 「・・・」

 「いいからお前は皿でも洗ってろ」

 「はーい」




その4

 「酒や酒、酒持って来んかい!」


 老人が暴れている。


 「どうします? ラオチュウ料理長。

 あのお爺さん、長崎から出て来た元国会議員さんらしいんですけど」

 「これを持って行ってやれ」


 ラオチュウはコップをショウ・コウシュに渡した。

 それをお爺さんの前に運んで行くショウ・コウシュ。


 「お待たせしました」

 「遅い! このクソタヌキ!」

 「タヌキじゃありません! ボクは・・・」


 そのコップを一気に飲み干そうとしたお爺さん。


 「ゲボッ なんじゃこれ! 塩水やないかい!」


 するとラオチュウが声を掛けた。


 「それは国民が飲んでいる塩水です。

 あなたたちがいつも飲んでいる、富士屋の甘い『完熟・どっさり桃ネクター』ではありません」

 「なんやと! パンダのくせに生意気な事を言いおって! お前はバカか? バカなのか?

 ワシは長年、国民のために働いて来た政治家やぞ!

 誰にモノを言っておるんや!」

 「それは国民のためではなく、地元の有権者のためですよね?」

 「それがなぜ悪い? ワシは長崎県人から選出された代議士や!

 地元に貢献して何が悪い!」

 「あなたがしていたのは長崎の人のためではありません。

 自分が大臣になるための利益供与、つまり税金の還流です。

 地元の企業に便宜を図り、その見返りにカネを貰う。

 それを政治資金だと言い訳をする。

 それで国会議員と言えますか?」

 「やかましいわい! たかが5,000万やぞ5,000万!

 それで在宅起訴じゃ? ふざけるな!

 安倍場あべば派の中にはもっとワルい奴が沢山おるやないか!

 安牛田あんぎゅうだや村西、なぜワシばっかり起訴されて、議員を辞めないかんのや!

 ワシはもう84才やぞ! 地元長崎に銅像くらい立ててくれてもええやないか!」

 「本来、国会議員は65才定年にするべきなのです。

 いつまでも議員に居座ろうとするから国民の知らないところで役者が決められ、議員に有利な法律が出来てしまう。

 私は裏金が悪いとは言いません。

 問題なのはそれを国民のために使ったのかどうかなんです。

 『チューリップを見る会』とか、愛人や海外の有力政治家、反社の人間に渡すべきお金ではないのです。

 それらはすべて、国民の税金なのですから」

 「それ以上言うならアンタ、ワシは死ぬしかないな?」

 「私は自分から「死ぬ」と言って死んだ人を見たことがありません。

 本当に死ぬ人は黙って死んでしまうものです」

 「パンダのお前に何がわかる?

 後からやって来た東大出や二世、三世のボンボン、ボンクラ議員たちに先を越され、高卒のワシはカネで大臣の椅子を買うしかないんや。ワシは大臣になりたかった。

 それが子供の頃からの夢やった。

 もうええ、帰る。なんぼや?」


 するとショウ・コウシュが言った。


 「193,000パンダだよ」

 「ほら、200,000パンダ。釣りはいらん」

 「そうはいかないよ、これも税金なんだから。はい、7,000パンダのお返し。

 また来てね? お爺ちゃん」

 「お爺ちゃんやない! 先生と呼ばんかい!」


 お爺ちゃんはショウ・コウシュの手に1万円札を渡した。


 「タヌキ、さっきは悪かったな? チップや。

 これで笹でも食べてくれ」

 「ありがとうお爺さん! でもボク、タヌキじゃないからね? かわいいレッサーパンダだよ。

 テヘペロ」


 ショウ・コウシュは嬉しそうに1万円をすぐにポシェットに仕舞った。

 流石は腹が黒いだけはある。




その5

 「なあショウちゃんよお。最近のテレビってどうしてあんなに下らねえのかなあ?

 食い物の話や、ただデカい声で騒いでいる、大阪凶本の芸人ばかりじゃねえか?

 『秘密の村民ショー どん底』はマンネリでネタ切れ。「めちゃ美味い」ばっかり言ってる創価学会芸人が、知らないタレントをイジってるだけ。『オモ不味い店』はなんとなく不衛生な店ばかりでヒロキとツルリンの掛け合い駄目。放送作家いるのかねえ。

 『おい岡村! この高級料理はなんぼや?』 なんか、ただ料理の金額を予想して騒いでいるだけ。最近ではネタも尽きて仮装している。『有吉ゼニ』では相変わらず大食いと激辛で食べ物を粗末に扱っている。食べ物であそんでんじゃねえよ!

 『有吉の塀』なんてもはや有吉のお気に入り芸人たちの宴会芸だぜ。

 それからあのウメコとジャニーズの何とかいう奴がやってる、『日曜日から寝過ごし』なんか最悪だ。

 一般人を笑い者にして嗤っているだけの番組だぜ? 放送倫理委員会とかねえのかよ? まったく」

 「本当ですよね? コンプライアンスがどうのこうの言う前に、こんな番組によくスポンサーはお金を出しますよねえ。信じられませんよ。

 番組の質が企業の質みたいに思っちゃいます。

 ボクが好きなのは、「まごころパンダ」の引越のCMだけですよ」

 「うん、あれはいいよ、あれは。俺も好きだ」

 「ボクは『日曜日の朝』と『日曜ジャパン』が大嫌いです。

 あの裏口入学と存在感の薄い、ちっちゃい奴がMCをやってる。あれはダメですよ。

 コメンテーターは「BMWとか料亭だ」とか言っていた、今も自民党に忖度している元アホ国会議員とか、エロくて美人だからと政治家になったオバサンと、そのオバサンが妊娠中に浮気して政治家を辞めたその旦那。そんなヤツが偉そうに政治を語るなんておかしいですよ。

 あとはコギャルに知ったかぶりのコメンテーターたち。

 何が社会学者ですか!」

 「でもよお、何とかならねえもんかなあ、テレビ」


 するとラオチュウが言った。


 「テレビに洗脳されているんですよ。

 大谷翔平を映していれば自民党の汚職も性加害も有耶無耶に出来ますからね?」

 「テレビって恐ろしいなあ」

 「所詮は金儲けの道具ですから」

 「世の中、カネだもんなあ」

 「ボクは笹があればいいけどね」

 「俺はここのラーメンが食えればそれでいいよ」

 「ありがとうございます」


 


その6

 「ここは外国か? ここは日本だぞ!

 何でもかんでも横文字にしやがって!」

 「あの小沼都知事も横文字が大好きですもんね?

 レジェンドとか都民ファーストとか」

 「んったく! あのババアはキャサリンかってえの! 総理大臣になりたい女タヌキのくせしやがって!

 高市早苗よりはマシだけど」


 山本さんは大工の棟梁さんだ。

 レバニラ炒めでビールを飲んでいる。


 「何なんだよあの「ハラへラメント」って? 鮭のハラスは好きだけどよお。何だよあれ? どういう意味だ?」


 ラオチュウが説明をした。


 「それはハラスメントのことですね? ハラスメントは「嫌がらせ」という意味です」

 「だったら「嫌がらせ」って日本語で言えっつうの!」

 「ハラスメントには色々あります。性的な嫌がらせは「セクハラ」 自分の立場を利用して相手を威圧するのは「パワハラ」 不道徳な精神的脅迫を「モラハラ」と言います」

 「だったら「性的嫌がらせ」とか「職場嫌がらせ」「精神的嫌がらせ」って言えばいいじゃねえか?

 一々なんじゃらハラスメントなんて言うと軽く感じるぜ!

 これもウンコ・テレビの造語か? それからコンニャクアイスってなんだ?」

 「ああ、コンプライアンスのことですね? 企業での法令遵守の事です」

 「大将、アンタ学あるなあ。パンダなのに。

 それから「エビデンス」に「インバウンド」 「インボイス」って何の事だ?」

 「エビデンスは証拠とか根拠という意味です。インバウンドは訪日外国人のことです。

 インボイスは売上金額や税額が書かれた書類のことです」

 「つまりエビデンスは「根拠」、インバウンドは訪日外国人、インボイスは請求書の事なんだろう?

 外人でもねえのに英語にする意味あんのか?」

 「英語にすれば抵抗がなくなり、何となくカッコいいからでしょうね?」

 

 その時、お客とショウ・コウシュが揉めていた。


 「なんでタヌキがホールやってんだよ!」

 「タヌキじゃありません。ボクはレッサーパンダです」

 「うるせえ! タヌキが注文取ってパンダが料理している中華屋なんて、ふざけてんのか!

 土下座して謝れ! ネットに晒すぞ!」

 「それってカスタマー・ハラスメント、「カスハラ」ですよ!

 小沼都知事に言いつけますからね!」

 「何がタヌキ知事だ! 選挙前の話題作りじゃねえか!

 罰則もねえんだぞ!

 今度の都知事はホラン千秋にしろ! ボケッ!」

 「ボクもそう思います」




その7

 「ショウちゃん、ビールと餃子、それからピータンとザーサイ、パイナップルの入った酢豚とエビチリ、上海蟹に北京ダックも食べたいなあ。ホタテのブロッコリー炒めに五目チャーハンと担々麺もお願い。もちろん大盛りで」


 麗子さんはバリバリの女性弁護士さんだ。

 人呼んで「ギャル曽田弁護士」との偉名のある大食い女性だった。


 「麗子さんは相変わらずの大食いですね?

 ギャル曽田みたいです」

 「だってチョコビッチで200kgのベンチプレスをしてネイルして、歯のホワイトニングにマッサージをしたからもうお腹ペコペコなのよお」

 「何ですか? その「チョコレート・痴女」って?」

 「知らないの? チョコビッチは「カラテ・チョップ」が始めたコンビニ・ジムのことよ。

 なんでもあるんだから」

 「あのカラテ・チョップの系列店なんですか?

 日本人は熱し易くて冷め易いですからねえ。

 辛い運動なんかしないで「どっさりウンチ出る出る」を飲んで、ラクして痩せようとしますからねえ。

 それにたとえムキムキになればなったで、それを人に見せ付けて自慢したくなる」

 「ああ、あの下品で粗暴な身内だけにウケる、「ダウンダウン」の金髪お笑い芸人のこと?」

 「そうですそうです、「同意のないニャンニャンの証拠はない」と、「文芸ブンブン」を名誉毀損で訴えたというあの金髪のことですよ」

 「おまけにその取り巻きのクズ芸人たちは「奥さんと子供さんが気の毒で」とか言って擁護して、被害女性には何の配慮もない。「ノコノコついて来た女が悪いんとちゃうの?」って平気で言ってるしね? 凶本興業もどうかしているわよ。児童ポルノや当て逃げ、脱税をしても簡単に復帰させちゃうし。

 テレビのキー局は凶本興業の株主になっているから大谷翔平やプーチンの報道ばかりして、凶本興業の芸人スキャンダルや大阪万博、自民党の汚職にも消極的だしね?

 でも私は違うわよ、合意のニャンニャンだから」

 「いいなあ、麗子さんと交尾が出来るオスは」

 「交尾言うな!」

 「ゴメンナサイ」

 

 


その8

 健太君とママの美雪さんがひとつのラーメンを分け合って食べている。


 「ママ、チャーシュウあげる」

 「ありがとう健太。いいから健太が食べな。

 ママはもうお腹いっぱいだから」


 ラオチュウがショウ・コウシュを呼んだ。


 「この餃子とチャーハンをあの親子に持って行ってやれ」

 「わかりました!」


 ショウ・コウシュは健太君親子に料理を運んだ。


 「料理長が間違って作った物ですが、よろしければどうぞ」

 「わあ、餃子とチャーハンだあ!」

 「ありがとうございます」

 「ではごゆっくり」



 その隣のテーブルでは民自党の『チューリップを見る会』のメンバーが、青椒肉絲やフカヒレの姿煮、ドドメ色アワビのステーキをつまみに酒を飲んでいた。


 「政治家はストレスが溜まるのよ! パリでお買物したり食事をしたりイケメンとチョメチョメして何が悪いのよ! だから貧乏人の国民は嫌い! 冗談じゃないわ! ファーストクラスなんて当たり前でしょ? 政治家なんだから!」

 「わかる、わかるよエッフェル姐さん。

 俺たちは特権階級なんだ、庶民の感覚で言われちゃたまんねえよ、なあウェスト・ヴィレッジ?」

 「まったくだよ! たかが5千万円ポッチのカネを、俺が黒ビキニ秘書とチョメチョメしようと、俺の勝手じゃねえか! 俺は東大卒のエリート、元大臣だぞ! クビになっちゃったけど。

 長崎の高卒ジジイとは違うんだ! 俺は総理大臣になるぞ!」

 「本当ですよ! 何が政治倫理審査会だっつうの! 絶対に非公開だよ、非公開!

 ドン喜朗に言いつけてやる! あの増税メガネの野郎!

 誰に総理にしてもらったと思っていやがる!」

 「そうだそうだ!」

 「日本の国民はバカだから、どうせニワトリみたいにすぐに忘れちゃいますよ」

 「そのためにウンコ・テレビにカネと利権をばら撒いて、大谷翔平とか凶本興業のクソお笑い番組を垂れ流しさせて政治に関心が寄らないようにしているんだからな?

 日本人なんてチョロいもんだぜ」

 「流石はタカリのステルス在日政治家ですな? 考えることが実にエグい」

 「俺たちは勝組なんだ! 民自党は永遠だ! 安倍場さん、バンザイ!」

 「そうだそうだ!」

 「お前、誰?」

 「東京地特捜部です! 先生方、いつもお世話になっています」

 「おお忠犬ただいぬ君じゃないか! 君もどうだね? 一緒に「裏酒」でも? 旨いよ」

 「ありがとうございます! 国税庁の犬飼もおります! 一緒によろしいですか?」

 「もちろんだよ、俺たちは仲間じゃないか! 同じ穴のムジナだからな! わはははは」

 「それならジャンジャン飲みましょうよ、ドンペリ10本持って来ーい!」

 「エッフェル姐さん、ここはローランドのホストクラブじゃありませんよ」

 「あら? いつもの癖でつい。 あはははは」

 

 それを見て健太君は呟いた。


 「ママ、あのひとたち悪いひとだね?」

 「でもね、ママが悪いのよ。選挙に行かなかったから。

 今度の選挙には絶対に行くわ、そして民自党をぶっ潰す!」

 「イヌ・エイチ・ケイ党のオジサンみたいだね?」

 「あのオッサンは自分が潰れちゃったけどね? ガーターと一緒に」


 俺も絶対に選挙に行くぞ!(筆者)




その9

 「ボク、あのお客さんたちキライです」

 「親の七光り、『レインボー・トリオ』のことか?」

 「自分には実力もないくせに」

 「その親に生まれた運はあるぞ」

 「ボクもラオチュウ料理長みたいなジャイアント・パンダに生まれたかったです。

 こんなお腹の真っ黒なレッサーパンダじゃなくて。

 だって熊猫ですよ? ボクはネコですか? それともクマですか?」

 「俺は大熊猫だけどな?」



 『レインボー・トリオ』が酒盛りをしていた。


 「俺んはさあ、「メシを食う時は絶対に酒を飲め」って言うのがパパの掟なんだよ」

 「瞬きばっかりしているお前の親父って、嘘つきジジイだったよな? いつもハッタリばかりのパフォーマンス親父」

 「うるせえよ、シゲシゲ! お前の親父だって野球の神様っ言われているのに、お前みたいに野球が下手っぴなバカ息子を『攻撃の巨人』に入れちゃったくせによお!」

 「なんだと! このポンコツ天気予報士!

 お前の天気予報はいつも気象庁の受け売りじゃねえか!」

 「シゲシゲなんか『ショウム二』の江角マキコさんに「バカ息子!」ってシャッターに書かれていたくせに!」

 「うるせえイカズミ! ヘボ役者のくせしやがって!」

 「ふたりとも止めなさいよ、みっともない」

 「チイちゃんだって、高いバイオリンが泣いてるよ。下手くそだって」

 

 ワインボトルでチイ子に頭を殴られるバカ息子、シゲシゲ。

 瓶が割れて頭から流血している。


 「何すんだよチイちゃん! 少しは手加減しろよ、死んじゃうじゃねえか!」

 「大丈夫、バカは死なないから。

 それより止めてよねえ、黒鳥さんの朝の情報番組で、わけのわかんない政治とかのコメントするの。

 ハラハラして聞いてらんないから」

 

 シゲシゲは幼い頃から世間の誹謗中傷にさらされて育ったので、メンタルだけは強かった。

 身体もデカくて極真カラテの有段者でもある。

 そして最近は開き直って自虐ネタでウケを狙って稼いでいた。バカではない。


 「私のパパはね、ビートルズの日本語タイトルを考えた人なのよ、凄いでしょう?」

 「知ってるよそれ、『Norwegian Wood』を『ノルウェイの森』って訳しちゃった人だろう?

 『ノルウェイの家具』とか『ノルウェイの材木』の意味なのに」

 「いいじゃないの! それであの村上春樹の名作、『ノルウェイの森』が生まれたんだから。

 読んだことないけど」

 「何それ? 村上春樹って角川春樹のことか?」

 「お前はいいんだよ、バカなんだから」

 「お前なんか4人兄弟、全員バカじゃねえか! 長男は元クソ政治家で比例でも落選したけどな。

 四男はあのテロ教団、『九官鳥』の信者画家だったからお前の親父はそれで運輸大臣を突然辞任したんだったよな? 色々屁理屈言って。三男は・・・、何だっけ?」

 「国会議員だよ!」

 「影が薄くてわかんねえよ!」

 「今度、コンサートやるからアンタたちも来なさいよ」

 「嫌だよ、黒板を爪で引っ掻いたようなチイちゃんのバイオリンなんて。

 それに自分を美人だと思って、うっとり自分に酔ってバイオリンを弾いてるし。

 諏訪内晶子すわないあきこじゃないんだからさあ」

 

 ブッチャーのようにイカズミの頭にフォークを突き刺すチイ子。


 「あらごめんなさい。手が滑っちゃった」


 

 こんなレインボー・トリオ、もうテレビに出すな!(筆者)




その10

 「もうワシは心が折れた。ううううう

 こんなな老いぼれをイジメて楽しいか? ううううう」」

 「セクハラやパワハラは事実ですか! 答えて下さい! 大島町長!」

 「大島じゃないよ、小島だよ!」


 岐阜の町長が泣きながらタンメンを啜っている。


 「あの74歳のお爺ちゃん町長、記者の人たちに質問攻めにされて泣いていますよ」

 「ウソ泣きだよ。美味そうにタンメンを食う余裕があるからな?」



 「一体ワシが何をしたって言うんじゃ!」

 「私、頭をポンポンされました!」

 「ワシは「よくやった」と褒めただけじゃ!」

 「オッパイを揉まれました!」

 「ええじゃないかオッパイくらい! 減るもんやないし!」

 「抱きつかれました!」

 「アメリカ人の挨拶じゃ!」

 「お尻をさわったでしょ!」

 「桃かと思ったんじゃ! でも穴があった!」

 「この変態ジジイ!」

 「お前、誰のおかげで町役場に入れたと思っとるんじゃ! この恩知らずめ!」

 「お金はパパが払ったじゃないですか!」

 「そんなカネはもらっとらん! 

 ワシはただ、女子職員に抱きついたり、手を触ったり、乳を揉んだりしただけじゃ! それがセクハラだというのなら、デリヘルやピンサロはどうなる? あれも立派なセクハラじゃないか!」

 「バカ野郎! あれはプレイなの! 商売なの! お前はタダでやってるじゃないか!」

 「そうだそうだ! このスケベジジイ!「

 「町役場は風俗じゃないぞ! そんなに女が好きならソープにでも行け!」

 「恥を知りなさい町長!」

 「ワシは町長だぞ! 町長のワシが女子職員に何をしようとワシの勝手じゃ! ワシの町役場なんじゃから! ワシの町なんじゃから!」

 「アンタは何のために町長になったんだ!」

 「女とチョメチョメするためじゃ! ボケ!」

 「74歳のジジイのくせに! 早く辞任しろ!」

 「ワシはまだ若い! 74歳じゃ! あの大物議員は84歳じゃぞ! 政治家に定年などない!

 ワシはパンパースを履いてでも町長は辞めんぞ! オンナ大好き!」

 


 「ラオチュウ料理長。政治家ってそんなにいい職業なんですか?」

 「今の日本に政治家はいない。いるのは薄汚い政治屋ばかりだ」

 「ボクよりもお腹、真っ黒ですもんね?」

 



その11

 レッサー・パンダのショウ・コウシュは沈んでいた。


 「はあ~ ラオチュウ料理長、どうしたらしあわせになれますかねえ?」

 「しあわせになりたいなら溜息は吐くな。どうしてしあわせになりたい?」


 ラオチュウは中華鍋を振りながら言った。


 「そりゃそうですよ、不幸になりたいレッサー・パンダなんて聞いたことがありませんよ。ジャイアント・パンダはよう知らんけど。

 ジャイアント・パンダはいつもみんなから愛されているじゃないですか?

 動物園の人気者ですからね!

 料理長はいいですよ! 周珍平の秘密工作員だから」

 「しあわせになるのは簡単だ」

 「教えて下さいよ! しあわせになる秘訣を! レッサー・パンダのボクにもわかるように!」

 「見わパンダ、聞かパンダ、言わパンダだよ」

 「それって猿ですよね? 見わ猿、聞か猿、言わ猿。パンダじゃなくて」

 「まあどっちでもいいことだ。嫌なことは見ない、聞かない、言わない。そうすれば幸福になれる」

 「それだけですか?」

 「そうだ、それだけだ」

 「それはお腹の真っ黒なボクにはむずかしいかもしれませんねえ。人の不幸は密の味ですから。うへへ」

 「それなら人の成功を喜んであげることだな?」

 「それも無理ですよ! あの裏金の議員さんたち、何のお咎めもないじゃないですか! 恨んで憎んで妬んでいますよ、国民は」

 「天網恢恢てんもうかいかい疎にして漏らさずだよ。アイツらはいずれ自滅して行く。

 仮にそのまま長生きしたとしても、地獄で閻魔大王様が待っているよ、恐ろしい顔でな?」

 「そうかなあ?」

 「梅本だって罰を受けているじゃないか? お笑いの天才と言われた男の末路は哀れだ」

 「それはそうですけど」

 「それにショウはもう既にしあわせになっているじゃないか?」

 「えっ? ボク、しあわせなんかじゃないですよ、こんな小さな街中華のボーイですよ? 

 こんなにかわいいのに。テヘペロ」

 「目が見えて耳が聴こえて鼻も効く。手も足もあって枕になるフサフサの尻尾もある。そしてしゃべることも食べることもウンコもオシッコもすることが出来るじゃないか?

 それは決して当たり前なんかじゃない、奇跡なんだ。

 三度のまかないも食べられて、やるべき仕事もある、エアコンのある快適な家で眠ることも出来る。水浴びも出来るじゃないか? 休みの日にはメスのレッサー・パンダのショウ・ロンポウとも会えるしね?

 しあわせとはな、今あるしあわせに気づくことなんだよ。

 ないものを数えるんじゃない、今、自分にあるものを数えるんだ。

 しあわせはショウの周りにたくさん落ちている。はい、海老チャーハン、あがったよ」

 「しあわせになりたいなあ~」

 「ほら、早く持っていかないと、折角の海老チャーハンが冷めちゃうぞ」

 「はーい」


 まだしあわせに気付かない、レッサー・パンダのショウ・コウシュであった。




その12

 久しぶりのお休みである。料理長のラオチュウとショウ・コウシュは、湘南新宿ラインの電車でお花見へと向かっていた。


 「ラオチュウ料理長、電車の中がやけに静かですね?」

 「みんなスマホに夢中だからな?」

 「音楽を聴いたりドラマを見たり、LINEをしたりゲームをしたり、マッチング・アプリをしたり・・・。あっ、あのオッチャン、エッチな動画を見てますよ!

 あの家族なんか無言でスマホをいじってます。会話もしないで家族なのに」

 「最近のアメリカではアプリにも飽きて、通話とメールしかやらない人間も増えているそうだ」

 「ボクのスマホは出会い系アプリでいっぱいですよ」

 「便利な世の中にはなったが、人と人とが会ってする会話が少なくなってしまった。

 学校でも会社でもそして家族や恋人同士でもみんなスマホに夢中だ」

 「面倒くさい人づきあいもいりませんからね? それにメールだと言い難いことも簡単に言えちゃいますから」

 「顔が見えないからな? 相手の反応がわからないから言いたい放題だ」

 「もしかするとポケベルで十分だったのかもしれませんね?」

 「俺の若い頃はポケベルもなかった。だから山ほど手紙を書いたもんだ。

 家の電話だから長電話も出来なかったしな? だからこそ、一緒にいる時間が大切だった」

 「今の子たちは異性と付き合うことも、結婚にも興味がないみたいですからね?」

 「便利になるということは、簡単に出来るということだ」

 「会社を辞めるのも、メールや代行業者に依頼する時代ですからね?」

 「着いたぞ」

 「凄い! 桜が満開ですねえ!」

 「何やってんだ?」

 「動画を撮っているんですよ、SNSに上げないと。「桜なう」っと」

 「そんなのどうでもいいから桜を楽しめ。この大切なひと時を」


 他の人たちも桜を愛でるのも忘れ、夢中で動画を撮っていた。


 (子供の運動会みたいだな? 思い出に残すことばかりで、子供の今を見てはいない。

 思い出に残すより、今が大切なのに)


 ラオチュウは寂しくなった。


 春はすぐに終わってしまうのに。




その13

 「バカ野郎!」

 

 このビルのに住んでいる85才のボケ老人、お金と権力が大好きである。


 「このビルのおに住んでいる85才のお爺ちゃん、他のお客様の御迷惑になりますからお静かにお願いします」


 ショウ・コウシュがそのに住んでいる85才のボケ老人をいさめた。


 「なんじゃとこの腹黒小熊猫! いいから早く青島ちんたおビールを持って来い! バカヤロウ~!」

 「だからバカ野郎って言わないで下さいよ。吉田茂じゃないんだから」

 「うるさい! この商店街はな? ワシが作ったんじゃ! 卑しい選民どもは黙っておれ! バカ野郎!」

 「まだ言ってる。バカ野郎って。小学生の時に習いませんでしたか? 「バカって言ったらお前がバカだ!」って。  

 「バカ野郎って言ってるお前がアホでクズでボケでゲスでロクデナシのパンパース野郎だ!」って」

 「それを言うなら「お前の母ちゃん出ベソ」じゃろうが!」

 「そんな古い話、ボクたちはよう知りませんよ」

 「いいから早く青島ビールを持って来んかい!」

 「飲みすぎですよ、このビルのに住んでる85歳のお爺ちゃん。

 あれ、お漏らししていませんか? なんかウンチ臭いけど」

 「うるさい! 中国のビールを早く持って来い! 大好きな中国のビールがねえなら、俺の大好きなアメリカのビール、バッドなワイフを持って来い!」

 「バッドなワイフ? ああ、Budweiserのことですね?」

 「いいから早く持って来い! バカ野郎!

 俺はな? この町内会の「影の町内会長」だぞ! 町内会費でエッチな本をたくさん買ったことにして、アホな出版社と印刷会社、そして子分を使って使途不明金をチャラにしたんじゃ? どうじゃ、凄いじゃろ? このバカ野郎!

 覚えてろよ、あの増税うんこメガネ! このバカ野郎!」

 

 それを黙って聞いていた、料理長のラオチュウが溜息を吐いた。


 「こんな人でも慕う人間もいた。だがこの「バカ野郎」の一言で、すべての善行も燃え尽きてしまったな?

 哀れだよ」

 「どうします? ビール?」

 「馬のションベンでも飲ませておけ。どうせわかりはしない。欲でボケているんだから」

 「町内会にはこんなお爺ちゃんしかいないんでしょうかねえ?」

 「こんな爺さんしかいない、町内会の連中がどうかしているんだよ」

 「いつまで続くんでしょうね? この町内会も」

 「もう終わっているよ」

 「オイ、ビール! このバカ野郎!」

 「この人、ビートたけしのモノマネしているんですかね? よう知らんけど」


 


その14

 「こんにちはー。私、「一本テレビ」の『あっちの料理長』を担当しているADの満腹太郎と申します。

 街中華の有名店を取材しているのですが、取材をさせていただいてもよろしいでしょうか?」

 「一本テレビ? ギャラはいくら出んの? 五味瓜ごみうりテレビさんだよね? 大食いQUEENのギャラくれさんとか、ゴルゴンゾーラさんの『激辛お尻からファイヤー』、村岡の『コレだけ食べていくらかな? 外れても局が支払うから大丈夫!』、ヒロ太とラッキョウ・ヘッドのやってる、『客に対する言葉遣いの悪い店』と、あとは関西弁丸出しの『凶本興業のあぶないお笑い芸人たち』、後は自民党に忖度して、大谷翔平の話がメインの報道お笑い番組、『教養ZERO』のあのテレビ局ですか?」

 「ちょっと失礼ですよ、本当ですけど」

 「少々お待ち下さい。パンダの料理長に訊いて来ますから」


 レッサーパンダのショウ・コウシュは料理長のラオ・チュウにそれを伝えた。


 「またテレビの取材ですけど、受けますか?」

 「そんなくだらないテレビ取材なんか受けるな」

 「やっぱり。料理長はテレビが大っ嫌いですもんね?」

 「テレビはみんなに夢を、希望を与えるべき責任と使命がある。

 あれが美味い、こんなに大盛り、これだけ激辛と言っては笑っている。

 アイツらは食い物で遊んでいるんだ。

 俺たちは命をいただいて生きているんだ。ベジタリアンだって野菜を殺して食べているんだから同罪だ。

 アフリカの子供は岸壁に落ちている小麦粉を手で集めて食べていた。

 日本の子供だって、給食を多く食べて飢えをしのいでいる子供もいるんだ。

 「子供食堂」を増やすのではなく、「子供食堂」がなくてもいい社会にしなければならない。

 今の日本ではせっかく稼いだカネの半分が税金などで国に取られてしまう。

 そしてその税金を裏金にして、自分の私腹を肥やし、権力を欲しがる政治家たち。

 昔の政治家もカネを集め、権力を欲しがった。でもそれは敗戦後の日本を復興させ、街から乞食こじきや貧困をなくすために命を賭けた政治家ばかりだった。

 今のような下劣な政治家を選んだ俺たちにも責任はある。

 自分のことしか考えないんだよ、国民も政治家も。

 元大学教授だった奴がリニアを妨害し、問題発言を繰り返して「退職金は受け取らない」と公言していた静岡の恥知らず県知事は堂々と言った。

 農家や漁師は下等な人間だと。学があるからエライのか? 政治家だから優秀なのか?

 食は生きるために、よく生きるために必要なんだ。

 だから五味瓜テレビの取材は受けない。そう伝えろ」

 「わかりました」


 ショウ・コウシュはADの満腹太郎のところへ行き、言った。


 「料理長は「帰れ! このウンコTV!」 だそうです。お引き取り下さい」

 「誰がこんなパンダとレッサーパンダがやってる店なんかに来るかよ!」

 「いいですよ、「テレるな東京」さんの『郵便屋さん 美味しいお店教えてよ』か、『アドマチック極楽』に出るから。はい帰った帰った。しっしっつ」



 ADの満腹太郎は会社に戻って、プロデューサーたちにメッチャ怒られたそうである。


 「バカ野郎! 喰い物番組は数字が取れんだよ! このボケ!」


 日本のテレビもすえである。




その15

 今日の営業も終わり、ラオチュウとショウ・コウシュは店の後片付けを終え、賄いの竹を食べながらテレビを見ていた。


 「あっ、あの学歴詐称のお金と権力大好きお婆ちゃんが記者会見している パリパリ ムシャムシャ」

 「コイツはお婆ちゃんじゃねえ、カネと権力に溺れた醜い爺さんだ。

 ホッカイロ大学を首席で出たという哀れな老人だ。 バリバリ ムシャムシャ」

 「選挙妨害されたとか言ってますよこの人。『絶望の党』の党首ですもんね? 民主主義の公正な選挙の正義がどうしたこうしたとか? 

 身障者であることを利用して同情票を集め、女とやりまくっていたスケベなオッサンを応援して負けちゃいましたからその腹いせでしょうかね?

 たぶん警視庁の偉い人に言いつけたんですよ、「この輩を死刑にしなさい!」って」

 「日本の警察も検察も、裁判所も国税も、そしてテレビや新聞のマスコミはみんな政治家の犬だからな?」 

 「酷い世の中ですよね? テレビは大谷翔平とパリ五輪のことばかり報道して、民自党に有利になるように世論操作ばかりしていますからね?

 犬・エイチ・ケイの民自党の支持率のデータなんか捏造もいいところですよ、根拠がない。バリバリ ムシャムシャ 政治資金規正法だってザル法だし、総理の支持率があんなに高いわけがない」

 「でも選挙妨害だと逮捕されたコイツら、言ってることはまともだ」

 「遣り方がちょっとねー。これで日本の警察がこのホッカイロ大学首席卒業捏造お婆ちゃんとズボズボなのがよくわかりましたからね? バリバリ ムシャムシャ」

 「ズボズボじゃなくて「ズブズブ」な?」

 「どっちも同じですよ」

 「アベベ総理の時はもっと酷かったのになあ。自分を批判する一般人たちを警察官を動員して制圧したり、挙句の果ては反社の人間を使って脅したり。

 そっちの方がよっぽど犯罪だ。プーチンより汚い奴だ、バカだし。何がアババミクスだ。

 金持ちはより金持ちに、そして貧乏人はもっと貧乏になり、外国人を受け入れ、日本の治安神話は崩壊した」

 「今度の選挙ではあの八王子のチンピラ親分、アベベの腰巾着がホッカイロ大学学歴詐称のお婆ちゃんを選挙で応援するそうじゃないですか?」

 「この男の辞書には「恥」という言葉がないんだろう」

 「野党はどんな人を立候補させるんでしょうかね? ホラン千秋だといいなあ」

 「膳場貴子さんは『日曜の朝』のMCになってからおかしくなっちゃったしなあ」

 「あの『ZERO』の司会者だったあの毎日違う髪型をしている大阪のおばちゃんは?」

 「有識者の器ではないな? ただのミーハーだよ」

 「ミーハーってなんですか?」

 「みーちゃん、はーちゃんのことだよ」

 「ランラン、ホワンホワンじゃなくてですか?」

 「まあ同じようなもんだ」

 「日本はこれからどうなっちゃうんでしょうね? ワクワク」

 「お前、秋陳平の熱烈な信者だもんなあ」

 「中国万歳! 日本が早く潰れますように。南無南無南無南無」

 「大丈夫だ、この国はもう終わっている バリバリ ムシャムシャ」


 

 

 


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