第4話 風のめぐる家<4>

  「やあ、この家はひどいあばら家だな。隙間だらけで風が吹き込んでくる」

  「しかたがないわ。私たちにはお金がないのだから。でもこれが私たちの最初の家。あばら家なんてやめて。そうね、風麗荘がいいわ」

  「風麗荘?」

  「美しい、風の家よ」

  「それはいいや!ハハハ……」


 カディスは一人、物思いに耽っていた。ナンシーとヘジュは出かけていて、風麗荘には今カディス一人しかいない。 


  「東の海へ行く?なによ、それ……」

  「今日、町の宝石商に聞いたんだ。東の果てに幻の緑真珠の海があるんだってさ」

  「緑真珠?聞いたことがないわ、そんなもの」

  「だから幻なんだ。俺はそいつを探しに行く」

  「そんなありもしないものにためにこの家を出て行くつもりなの!?」

  「ありもしないだって?わからないじゃないか、そんなもの。夢のないやつだな」

  「そんな夢、くだらないわ!」

  「くだらないとはなんだ!」

  「なによ!あなたにはそんな夢が大切なの!?今の生活も何も捨ててもかまわないくらい大切なのね!だったらその大切なもののために、勝手にどこでも行けばいい!」

  「おい、どこへ行くんだ?」

  「関係ないわ!さよなら!」

  「カディス!」



(カディス・・・)

目を閉じたままのカディスの耳に、自分を呼ぶ声が遠くに聞こえるような気がした。

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