第4話 風のめぐる家<3>

「どうしようかなぁ」

 ナンシーは困っていた。ナンシーたちは今、カディスたちの町の隣の大きな町を歩いている。カディスのブレスレットを盗んだ 犯人は、きっとまだ遠くにはいっていないと思う。ならばこの町にいるに違いないと思ったのだが。

「暗かったし、すぐ逃げて行ったから、ほとんど顔、わからないのよね」

「人も多いし、手がかりもブレスレットだけだしね。カディスさんが言わないのだから、何もしないほうが良かったのかなあ……」

 ナンシーとヘジュはため息をつきながら歩いていた。

「ねぇ、君、」

 ナンシーは、後ろから誰かに肩をたたかれた。振り返ると、三十歳くらいに見える痩せた男が立っていた。

「君、風麗荘にいた子だろう?ちょっと頼みがあるんだけど」

 そう言った男の左手首には、銀色のブレスレットが光っていた。

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