第1話 ヘジュの石<3>

  「ぐすん、ぐすん、ぐすん」

  「どうしたの?」

  「みんな、僕のことが嫌いなんだ。僕が来ると、みんなが逃げていく。小鳥も飛んでいった。ちょちょもいなくなった。そよ風もやんだ。花も、さっきまで、にこにこ、にこにこ笑っていたのに、僕が来ると、笑わなくなった。みんな、僕のことが嫌い。どうして?どうしてなの?僕は、大好きなのに。みんな大好きなのに……。僕も、みんな嫌いにならなくちゃいけないのかな……?」

  「そんなことないわ」

  「でも、みんなは、僕が嫌いなんだよ」

  「そんなことないわ。だって、私はあなたが大好きだもの。ねぇ、魔法をあげる。みんなが本当のあなたを見てくれる。きっと、みんなあなたのことが大好きになるわ。だって、あなたは、そんなに素敵なのだもの……だから……」


  ――大好きな気持ちにうそつかないで――




 最後の言葉は聞こえなかった。ただ、僕の心の中に響いて、それから体中にふんわりとひろがっていった。

 僕を抱きしめた格好のまま、天使はふっと消えてしまった。でも、体の中のふわふわは、ずっと残っていて、その日の夜、僕は天使の魔法を見つけたんだ。

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