第9話
第9話: 新たな生活の始まり
初めての戦いから一週間が経過した。一輝は大学の講義室で、ぼんやりと窓の外を眺めていた。
(あの戦いは現実だったんだ...)
彼の手には、まだ光の弾を放った時の感触が残っている。そして、心の奥底には異世界での記憶と力が眠っていた。
講義が終わると、一輝は急いで魔科学ギルドの研究所へと向かった。そこでは美咲が待っていた。
「一輝くん、来てくれてありがとう」美咲の声には緊張感が混ざっていた。
研究所の奥には、藤堂とレイの姿もあった。
「さて、本題に入ろう」藤堂が口を開いた。「君たち二人には、これから特別な訓練を受けてもらう」
レイが補足する。「未来科学振興会の動きが活発化している。次の戦いに備えて、君たちの力を磨く必要がある」
一輝と美咲は顔を見合わせた。二人の目には決意の光が宿っていた。
「分かりました」一輝が答える。「僕たちに何ができるでしょうか」
藤堂は満足げに頷いた。「まずは、君たちの能力の本質を理解することだ。椎名くん、説明を頼む」
椎名が大きなスクリーンを操作し始めた。そこには一輝と美咲の能力データが表示される。
「一輝さんの光の弾は、実は空間にある魔力を凝縮させているんです」椎名が熱心に説明を始める。「そして美咲さんの結界は、周囲の魔力の流れを操作しているんですよ」
「つまり」レイが言葉を継ぐ。「君たち二人の能力は、根本的には同じ原理に基づいているんだ。それを理解し、互いの力を高め合うことが重要になる」
訓練が始まった。一輝と美咲は互いの能力を理解し、協力しながら力を磨いていく。時には失敗し、時には思わぬ発見をする。
夕暮れ時、疲れ果てた二人は研究所の屋上で休憩していた。
「ねえ、一輝くん」美咲が空を見上げながら言った。「私たち、本当にこんな大きな戦いに巻き込まれてしまったのね」
一輝は少し考えてから答えた。「ああ。でも、逃げるわけにはいかない。俺たちにしかできないことがあるんだ」
美咲は一輝の方を向いた。「私ね、怖いわ。でも、一輝くんと一緒なら頑張れる気がする」
一輝は微笑んだ。「俺も美咲がいてくれて心強いよ」
二人の間に、静かな信頼関係が芽生えていくのを感じる。
その時、一輝の脳裏に異世界での記憶が蘇った。仲間たちとの冒険、魔王との戦い...すべてが鮮明に甦る。
(この力は、最後の切り札だ。絶対に仲間たちは守り抜くぞ)
一輝は拳を固く握りしめた。新たな戦いの日々が始まろうとしていた。しかし、彼の心には強い決意と、仲間たちへの信頼があった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます