第7話

第7話: 魔術組織の影


襲撃から数日が経ち、一輝と美咲は賢者協会の施設で特訓を受けていた。広々としたトレーニングルームで、二人は自分たちの能力の制御に奮闘していた。


「集中するんだ、一輝」藤堂の声が響く。「その光の弾、もっと小さく、でも威力は落とさずに」


一輝は額に汗を浮かべながら、手のひらに光を集中させる。小さな光の玉が形成されるが、すぐに消えてしまう。


「くっ...難しい」


一方、美咲は椎名の指導の下、結界の形成に励んでいた。


「そうよ、美咲さん。イメージを明確に。結界は貴女の意思の具現化なの」


美咲の周りに薄い光の膜が広がるが、まだ不安定だ。


休憩時間、二人は施設のカフェテリアで話していた。


「一輝くん、私たち本当にこんな大それたことができるのかな...」美咲の声には不安が混じっていた。


一輝は彼女の手を取った。「大丈夫、一緒に頑張ろう。俺たちにしかできないことがあるんだ」


その時、藤堂が近づいてきた。表情は硬い。


「二人とも、緊急会議だ。来てくれ」


会議室に入ると、そこには賢者協会と魔科学ギルドの幹部たちが集まっていた。中央のスクリーンには、都市の地図が映し出されている。


老人が口を開いた。「未来科学振興会の動きが活発化している。彼らは都市の各所に"結節点"と呼ばれる装置を設置しようとしているようだ」


椎名が補足する。「結節点は、科学と魔術を融合させた装置です。これが起動すれば、未知の力が解き放たれる可能性があります」


「我々の情報では」藤堂が続けた。「彼らは"神の降臨"と呼ばれる儀式を計画しているようだ。これが成功すれば、世界の秩序が崩壊しかねない」


一輝と美咲は息を呑んだ。状況の重大さが身に染みる。


そのとき、部屋の扉が開き、一人の男が入ってきた。長い黒髪を後ろで束ね、鋭い眼光を持つその男は、一輝たちよりも少し年上に見えた。


「遅くなってすまない。潜入捜査から戻ったところだ」


藤堂が紹介する。「こちらは黒崎レイ。我々の精鋭エージェントの一人だ」


レイは一輝と美咲を見つめた。「君たちが新しい能力者か。期待しているよ」


会議は続き、未来科学振興会の阻止計画が議論された。一輝と美咲も作戦に参加することになる。


「危険だぞ」藤堂は二人を心配そうに見た。「まだ十分な訓練を...」


一輝が遮った。「行きます。僕たちにできることがあるはずです」


美咲もうなずく。「私も行きます。みんなと力を合わせて」


レイが不敵な笑みを浮かべた。「いいね。その意気だ」


作戦の詳細が決まり、会議は終了した。部屋を出ようとする一輝たちに、レイが声をかけた。


「明日、特別訓練をしよう。本物の戦いでは、教科書通りにはいかないからな」


一輝と美咲は顔を見合わせ、強く頷いた。彼らの前には、未知の危険が待ち受けている。しかし、二人の目には強い決意の光が宿っていた。


カフェテリアに戻った二人。美咲が小さな声で言った。


「怖いわ...でも、逃げるわけにはいかないわよね」


一輝は彼女の肩に手を置いた。「ああ、一緒に立ち向かおう。俺たちにしかできないことがきっとある」

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