第2話

第2話: 異世界からの帰還


魔王を倒してから数日が経った。一輝たちは異世界の人々に見送られながら、帰還の儀式の準備を進めていた。


「本当に帰っちまうんだな…」ガロンは複雑な表情を浮かべていた。


リリアが優しく微笑んだ。「ええ、でも私たちの絆は永遠よ。一輝、あなたの世界でも幸せになってね。」


一輝は頷きながら、仲間たちを見つめた。「みんな…ありがとう。俺は一生この経験を忘れない。」


儀式の場所に集まった一行。エルフの長老が古代語で呪文を唱え始めると、一輝の体が淡い光に包まれた。


「さらばだ、一輝!」

「また会える日まで!」


仲間たちの声が遠のいていく。一輝の視界が真っ白に染まり、意識が遠のいていった…


* * *


「ったく…篠崎のやつ、こんなところで寝てやがる」


耳障りな声に、一輝は目を覚ました。周りを見回すと、そこは見覚えのある大学の講堂だった。


「え?ここは…」


隣にいた同級生の山田が不思議そうに一輝を見つめていた。「おいおい、大丈夫か?授業中に寝るなんて珍しいな」


一輝は混乱したまま立ち上がった。体には鎧はなく、代わりに見慣れたパーカーとジーンズ。腰に下げていたはずの聖剣も消えていた。


「あ、ああ…ちょっと気分が悪くて」


一輝は何とか取り繕いながら、講堂を出た。廊下の窓から見える景色は、紛れもなく現代の日本だった。


「夢…だったのか?」


しかし、左手の小指に残る小さな傷跡。それは異世界で魔物と戦った時についたものだった。夢ではない。確かに自分は異世界に行き、そして帰ってきたのだ。


一輝はふらふらと歩きながら、頭の中を整理しようとした。異世界での冒険、仲間たち、そして魔王との戦い。全てが鮮明に蘇ってくる。


「俺は…戻ってきたんだ」


そう呟いた瞬間、激しい頭痛に襲われた。視界がぼやけ、一輝は壁に寄りかかった。


「おい!大丈夫か?」


駆け寄ってきた学生に支えられながら、一輝は保健室へと向かった。その途中、彼は異様な違和感を覚えた。周囲の人々の動きが、まるでスローモーションのように見えたのだ。


「これは…」


異世界で培った能力が、この世界でも使えるのではないか。そんな考えが一輝の脳裏をよぎった。

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