4.精霊王VS竜王

「むかしむかしあるところにおうさまがいました おうさまはしぜんにあいされそのくにはあっというまにせかいでいちばんしぜんがゆたかなくにになりました かれのなまえはせいれいおう たみにあいされしぜんにあいされとってもとってもつよくてやさしいおうさまでした かれとともにみんなしあわせにくらしたとさ」



「ハハハハ よくぞきたな」

「もちろんですよ」

「では、やろうか。 全力で来い!」


 その瞬間ビリビリと全身に鳥肌がたった。

 俺は竜王に勝つ、ただそれだけだ。


「決闘を始める」


 誰がみても対最強だ、みな固唾をのんで見守る。


「はじめ!」


 ついにはじまった。


「貴様の全力をみせてみろ!」

「言われなくても!」


失われた魔法ロストマジック"地獄の業火インフェルノ"!! "海の覇者リヴァイアサン"!!」


 竜王に向かって強力な魔法が飛んでいく。


「ほう 魔術ではなく魔法を扱うか! しかもかなりの高出力だ! 素晴らしい、素晴らしいぞ!」

「だが」


「ふんっっっ」


 竜王は腕を払った。その瞬間魔法は瞬く間に霧散した。


「なっ!?」

「ふん この程度か? ならば我からいかせてもらうぞ!」


「オラアッ」


 竜王が物凄いスピードで近づいてくる。


失われた魔法ロストマジック"神盾ヘラクレス"!!」


「神の名を冠する魔法まで扱うか! だがまだ甘いぞ!」


 激しい闘いが続いていく……闘いは互角 いや、確実に押されてきている……。


「ハァハァ……」

「ハハハハ 貴様はその程度の器だったか 我の見込み違いだったかのう」

「何が言いたい?」

「はあ…… では聞くぞ 貴様は本当にその程度であるか? 貴様の王・の・器・というものは」

「ハハッ やはり気づいていましたか」

「当たり前ではないか 我を誰だと思っておる」


 『むかしのまほう』派生スキル『精霊王』それはエルフの国でナーシャと話したあとに突然スキルとして追加された。使用すると俺も何が起こるかわからないからとっておきたかったが、使うしかあるまい。

 それにこんな強敵に出し惜しみとか失礼だよな。


「スキル『精霊王』発動」


 ピコンッ


「スキル『精霊王』が使用されました スキル『精霊王』の発動に伴い体が変化します」


 俺の体は光りだした。違和感はないが体が変化しているのがわかる。


「ハハハハッ これだ! これを待っていた!」


 体の変化が終わり、光は輝きへと変化した。


「ふう……」


 無数に魔法の知識が流れ込んでくる。


「ダイカが小っちゃくなっちゃった!」

「お、お父様? 凄く懐かしい感じがする」

「パパ小っちゃい! これは貴重なショタパパですよ!」


 思考が追い付いてきた。


失われた魔法ロストマジック"精霊王エレメンタルキング"」

「いくぞ"精霊魔法エレメンタルマジック" 赤の色"赤の精サラマンダー"」


 赤の精は地獄の業火インフェルノとさほど出力は変わらない。むしろ地獄の業火のほうが高出力にみえる。のだが。


「ハハハハッ 美しいな! 魔法の使い方にまったく無駄がない 綺麗だ! 魔法使いはこうでなくては!」


 竜王のボルテージが最大まで上がる。

 火の精は気高く美しく竜王の体を貫く。


「ハハハハッ 痛いはずなのに優しい、なんだこの感覚は。 やはりダイカお主は最高だ! 我の見込み通りだ!」

「だが負けてはおれぬぞ」


 さきほどよりさらに激しい猛攻がダイカへと襲い掛かる。


「ウルアアアアア」




「"精霊魔法エレメンタルマジック" 緑の色 "風の精シルフ"」


「なぬっ!? 攻撃が当たっているはずなのに当たっていない!?」

「こちらの番ですよ」


「"精霊魔法エレメンタルマジック" 茶の色"地の精ノーム"」


「ぬわっ!?」


 竜王のまわりに強固な土の壁が立ちはだかる。


「ならばっ 正面衝突しようぞ」


 竜王は唯一塞がれていない正面に突撃してきた。


「"龍変化りゅうへんげ"!!」


「"精霊魔法エレメンタルマジック" 赤の色"赤の精サラマンダー" 青の色"水の精ウンディーネ"」



「ウガアアアアアアアアアア!!」

「はああああああああああああ!!」



「ドカンッッッ」


 激しい音とともに闘いの幕は閉じる――。



「ショタパパ~」

「やめろ くっつくな」

「ダイカが私より小っちゃく んん~ 最高!」


 俺は派生スキル『精霊王』の副作用なのか体がまだ戻っていなかった。


「先生……。」

「グニル」

「先生、我輩勝手なことを……申し訳ない」

「せーの」

「グニルおかえりなさい!!」


 グニルは申し訳なさそうにしていたが、子供たち同士で話しているうちに次第に元の表情を取り戻していった。グニルは俺と同じく仲間の笑顔に弱いのかもな。


「貴様……いや、我が友ダイカ とても楽しかったぞ」

「竜王……。 ありがとうございました」

「ぬう 負けた相手にそんなこといわれるとは まさか嫌味か?」

「ははっ まさか 最高でしたよ 我が友竜王」


 ここだけの話、グニルは俺たちの竜の国での安全と引き換えに王城にいたのだが、本当にそうだろうか。俺はなんとなく竜王の真意はわかる気がするが、気づいたら面倒くさそうなので気づかないふりを通した。


「そういえばそこの猫耳の子、おぬし獣王の血をひいておるだろ?」

「えっ!?」


 突然の発言で一同驚きを隠せなかった。


「そ、そうなのかサニャ」

「あんなクソ、親と思ったことは一度もないのニャ 私の親は母親だけなのニャ」

「そ、そうか すまない……」


 ただ者ではないと思っていたが……。


「し、失礼します 竜王!」

「どうした騒々しい」

「皆様で話されているところ申し訳ないのですが……」

「なんだ言ってみろ」


「鬼族が竜の国へ攻めてきました」


「なんだと!?」

「住民の避難は?」

「はい 既にはじまっております」

「わかった」


 どうやら鬼族が竜の国へと攻めてきたらしい。なぜ今……。

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