5.獣王登場 親の心情

 竜王の闘いの反動で俺は動けなくなっていた。

 みんなはというと――。


「パパ 私たちいってきます」

「先生はゆっくり休んでください」


 戦地へ赴かせるなど親としてはどうしても止めたかったが、子供たちの意志は固い。ここで止めてしまえば成長を阻害してしまうかもしれない。それは一番駄目なことだと俺はみんなを見送った。

 中立国としての立場もあるので、救護班にまわるそうだ。


「みんな気をつけてな」

「はい!」


「我もついてく 友は体を休めてくれ」

「ありがとう」


 心配だが、竜王がついてるなら安心だろう……って竜王まだ動けるの!? え、俺もう動けないんだけど。


 ――竜の国 門前


「みなの者くるぞ 迎え撃て!」

「うおおおおおおおおおおおおおお」


 戦いが始まる。俺は状況をしることはない。

 今は少しでも早く戦地へ向かえるよう体を休める。ミヤにかけてもらった治癒魔法のお陰で体の痛みは少ない、みんな無事でいてくれと願う。



 ――3日後

 俺は目が覚めついに体を動かせるようになっていた。

 すぐさま俺は戦地に向かう。


「"転移テレポート"」


 俺の視界は寝室から戦地へと瞬く間に変化した。


「みんな無事か? 待たせてすまない」


 俺は一番に子供たちの元に向かう。


「パパ! 起きられたんですね!」

「先生!」

「包帯持ってきたニャ」

「ありがとうございます、サニャ」


 大変そうだがまずはみんな無事だったのでほっとした。

 

 戦況を把握した感じでは状況は五分、しかし鬼族たちの勢いは増す一方だという。だが、ある出来事で状況がひっくり返る。


「獣王様だ!」

「獣王様がきたぞ!」


 そう獣王の登場である。俺は知る由もなかった、獣王が登場したことによりある意味人生最大の強敵とぶち当たることになるとは……。


「うおおお! おぬしたちよく耐えた。 俺が来たからにはこの戦いは終わる」


「獣王様~!!」

「かっこいい!!」


「では俺はゆくぞ」

「頑張ってください!!」


 そういって獣王は鬼族の前へと向かった。

 

 しかし。


「獣王だ! 獣王が来たぞ! ついに来たな俺たち鬼族の仇!」

「よくも、よくも鬼の娘たちをヤリ捨てやがって!!!!!」

「責任もとらずのうのうと!!」


 うん……んんん??? どういうこと??? 俺は混乱した。


「パパ ヤリ捨てってなんですか?」


 ああああああああああ まっっっっっっっっずい。

 俺は全身から汗が噴き出た。


「ミヤ、ヤリ捨てっていうのはニャ……」

「ああああああああああああああ サニャやめろおおおおおおおおおおおお」

「パパ そんなにあわててどうされました?」


 そんな純粋な瞳で俺を見ないでくれええええええええええええええええ……。


「鬼の娘たちの仇、ましてや世の娘の仇だああああ」

「フン 俺が何しようが勝手だろ。 娘たちも」


 ピンポンパンポーン 3年A組獣王くん至急職員室までお越しください。 ピンポンパンポーン

 もうやめて、何も言わないでお願い 


「そのち〇こ切り刻んでやるううううううう」


「くらえ 絶技……"絶倫拳"!!」


 はい、終わりました ありがとうございました。


「絶倫拳! 絶倫拳! 絶倫拳! 絶倫拳! 絶倫拳!」

「うわあああああああああ こいつ強すぎるううう」


 ねえ、お願い 本当にもうやめて 子供たちも聞いてるんですよ。


「パパ 絶倫ってなんですか?」


 さて、ここで問題です テレンッ 可愛い娘が意味を理解せずにとんでもないことを口に出しました。あなたはどうしますか?

 1.爆散 2.爆散 3.爆散 

 答え。


「パパ、大丈夫ですか? もう顔の原型とどめていませんが」

「ミヤ、絶倫っていうのはニャ……」


 もうやめて――。


 

 そうして、獣王の活躍? ということもあってか鬼族側は一度撤退した。だがこのままでは戦いが長引いてしまう、俺はある決断をした。

 鬼王の元へ会いにいく。なんか俺が思うに竜の国への怒りというか獣王個人が理由っぽいので、俺は単身で鬼王のもとへ行くことにした。

 俺が行けばもしかしたら話しを聞いてくれるかもしれない、みんなにそのことを伝え俺は鬼王のもとへ向かう。


「友よ お主にいかせて悪いな」

「全然大丈夫だよ むしろ譲ってくれてありがとよ」


「先生、お気をつけて」

「行ってくるぜ みんな」

「いってらっしゃい!」


 「失われた魔法ロストマジック"転移テレポート"座標『鬼王』」


 待ってろ、鬼王!



「なにやつ!?」

「急にすまないな」

「ぬ、俺の首を取りに来たわけではなさそうだな。 人族か、何用だ」

「単刀直入にいう、この戦い終わりにしないか? 獣王個人に対して国を攻めるのは疲れるだろ? お互い」

「ふん、人族が何を言うかと思えば……そんなことするわけがなかろう。 やられっぱなしでいれないのが鬼族の性分なんでな」


「俺は竜王の友としてこの戦いを止めにきた」

「なんだ、人族お得意の嘘か」


 俺は竜王から借りた、竜王の証をみせた。


「なっ!?」

「あなたならこれが本物ということは分かりますよね?」

「そうだな……本物だ。 だがこのまま終わらせちゃしめしがつかない」

「そうか、なら……一騎打ちってのはどうだ?」

「ほう、だが友とはいえ何故そこまで?」

「正直俺もよくわからん」

「ははは よくわからんか だがそれが王というものの一つの形なのかもしれんな。 わかった一騎打ちを受けよう」

「準備が出来次第伝える。 こういうのはお互い万全のときがよかろう?」

「助かる」


 ――決戦当日


「先生、なにからなにまですまない」

「私からもお礼を言うニャ」

「大丈夫だよ、俺はお前たちが大事だからな」


 ピコンッ


「竜人族の想いが一定の値を越えました」


「派生スキル『八大龍王はちだいりゅうおう』を獲得しました」

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