3.竜の国コンティヌアゴ

 俺たちは中立国ニュートラリティに戻り、田舎の一軒家で疲れを癒していた。


「パパ あ~ん」

「んっ もぐもぐ 美味いなこのお菓子」

「お父様、私のも あ~ん」

「私たち二人で作ってみたんです」

「それを聞いたらさらに美味しく感じるよ ありがとう」


 エルフの国から帰ってきてから、ナーシャの距離がさらに近く感じるようになった気がするが……まあ、それならそれで嬉しいからいいか!


「パパ 明日からまた依頼受けますね」

「ああ わかった」


 リーダーといえど冒険者というものは子供たちのほうがわかってるので、ほぼ任せっきりだ。


 次の日冒険者ギルドへ行くと、応接室に通された。

 高ランクだとあるあるみたいだが。


「それで、ギルドマスター今回の件は?」

「はい 今回は竜の国コンティヌアゴでございます」


 グニルの故郷か……。

 

 グニルは最初、竜の国で出会った。俺のことを息子ながら先生と慕ってくれており、とても礼儀正しい子。頭には竜人らしい立派な角が二本、立派な尻尾が生えている。ガタイは良すぎるわけでもなく、ちょい細マッチョくらいで、子供たちに共通していることだが凄く美形の顔をしている。


「最近コンティヌアゴで奴隷狩りが起きてるらしくその調査に行っていただきたいのです。 もちろん発見次第捕らえていただけると助かります。」


 竜の国といっても、竜人族と獣人族二つの種族が住んでいる。

 奴隷狩りに狙われているのは、多分獣人族のほうか……。


「我々も対処は致しますが、中立国としては奴隷狩りは絶対に無視できないことなのでどうか皆様の協力をえられればということでございます」

「分かりました お引き受けします」

「ありがとうございます」


 俺たちは準備をし、ブレッシングとして竜の国コンティヌアゴに向かう――。


「エルフの国への道と違い魔物が多いな」

「そうですね 竜の国周辺は比較的魔物が多く生息しています。 ですがその分竜人と獣人の方には強者が多いらしいです」

「なるほど、周辺の環境でも全然変わるんだな――。」


 暫く進み、俺たちは竜の国コンティヌアゴに近づいていた……その時だった。


「うわあああああ くるなあああああ!」


「みんな戦闘準備」

「了解」


 俺たちは即座に戦闘態勢へと入った。声のしたほうへ近づいてみると、そこには馬車とそれを囲むように魔物がいた。


「大丈夫ですか!」

「……。」

「今助けます」


 魔物を排除し、馬車のほうへと振り返った瞬間にすぐ現状を理解した。

 これは、奴隷狩りとその被害にあった人たち……。


「無事な人はいますか!」


 俺たちは周囲を警戒しつつ、馬車に近づき確認した。

 状況としては奴隷狩りは全員魔物にやられたか逃げたあとで、奴隷狩りにあった人たちが取り残されている。


「大丈夫か。 俺たちは敵じゃない」


 馬車の荷台に備え付けられた檻を壊す。中には小さな子供たちと成人したかしてないかくらいの女の子がいた。

 警戒されながらも何とか信じてもらい彼女らとともに竜の国へと再度出発した。


 残りの道程は何事もなく、ついに竜の国コンティヌアゴに到着した。


「とうちゃ~く んん~!」


 俺は思いっきり体を伸ばした。エルフの国へ向かうときより圧倒的に時間がかかったのでみんなもお疲れだ。捕まっていた子供たちを帰し、今日はもう休むことにしよう。

 だが、猫耳の少女は帰るところがないとその場に残った。経験上の目でしかないが、猫耳の少女は子供たちと並ぶくらいの強さを持っていると確信していた。そのことを思いながら、つい猫耳の少女のほうに視線を向けてしまった。


「あいつら追い払おうとしたら、子供を人質に取られちゃったニャ」


 と見透かされたようだった。俺は頑張ったなとなにかしようとしたが、流石にまずいと思い女の子組に猫耳の少女を託した。


「お名前は?」

「サニャ」

「サニャちゃんですね 一緒にお風呂に入りましょう!」

「え」

「ね!?」

「分かったニャ」


 その会話を聞いていると女の子だなあと自分でもよくわからない感想が浮かんだ――。

 

 奴隷狩りを順調に捕らえていたとき事件は起こった。グニルがどこにもいないのだ。


「グニルいたか?」

「どこにも」


 サニャも手伝ってくれて、総動員で町中探したが獣人が住んでいるエリアにはいなかった。もちろん精密探知も使った。ということは……俺は空を見上げた。

 精密探知は横には広いが縦となると探知範囲がせまいという弱点がある。グニルは空、竜人が住まうところにいる可能性が高い。


 俺たちは準備を整え竜の町へと向かった。

 竜の町へ向かうには翼竜に乗って移動しなければならないらしいが、みんな行くという意思は固い、翼竜に乗りこみいざ……待ってろグニル――。


 竜の町に着いた。俺はすぐさま精密探知を使う……やっぱりいたグニルだ。


「……なんだ!?」

「パパ! どうされました!?」

「いや、大丈夫だ」


 こんな感覚は初めてだ、まさか探知に介入してくるとは……こいつは戦ったら俺でも勝てるのか……。

 だが俺は落ち込むというよりとてもゾクゾク、ワクワクとして口元がニヤついてしまった。

 この世界にはこんなやつもいるのかよ。


「グニルは城にいる 向かうぞ」

「はい!」


 俺たちはグニルと会いに、期待と不安で胸を膨らませながら向かった。


「グニルと会いに来た通してくれ」


「ガチャッ ゴゴゴゴゴ」


 俺たちは何にも阻まれることなく、まるで誘われているかのように城の中を進んでいった。

 そうするといかにもというドアが立ち塞がりその前に立っていた兵士がドアを開ける。


「王 お客様が参られました」

「通せ」


 竜の国の王……一言だけでも凄い圧だ。


「貴様 名は?」

「お初にお目にかかります竜王 クジマ ダイカと申します」

「ハハハハ そのような態度などいらぬわ」

「貴様の望みはこいつだろ?」

「ええ、私の大切な息子でございます」

「息子か! ハハハハ なるほどのう して、返してほしいか?」

「もちろんでございます」

「竜族といえば?」

「力こそ全て……ですか?」

「ハハハハ 話しがはやい 貴様はもう我が望んでいることはわかるだろう?」

「そうですね」

「よいぞ! ならばこの息子とやら我との"決闘"に勝利したら返してやろう」

「こちらが負けたら?」

「ハハハハ 息子は返さんそれだけだ 勝つまで挑んできてもよいぞ?」

「……そのような事態にはなりませんよ 私が勝つんですから」

「ハハハハ よい! よいぞ! ならば三日後決闘だ」

「わかりました」


 俺は人生で今一番興奮しているかもしれない。部屋に案内された後も興奮がおさまらなかった。


「パパ 決闘の心配はしてませんが、それでも大丈夫ですか?」

「ああ、俺はいつでも子供たち一番だ」

「ならば大丈夫です。 頑張ってね!」

「任しとけ!」


 ――三日後

 ついに決闘が始まる。

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