2.エルフの国エレメンタルリング

「みんなもう着くぞ」

「はーい」


 そうして俺たちは道程が終わり、エルフの国エレメンタルリングに着いた。

 久しぶりに来たが、やはり空気が澄んでいて美味しい。


「冒険者の方ですか? 話しは聞いております」

「ブレッシングリーダーのダイカと申します」

「宜しくお願いします。 高品質ポーションが必要とのことでしたね」

「はい」

「非常に申し上げにくいのですが……」

「どうしました?」


 話しを聞くと、どうやらつい最近ポーション製作所が襲撃されたとのことだった。しかも、そこにためておいたポーションが盗まれさらに製作所に火がつけられた。

 そんなことがあり、今はポーションがなく作ることも困難らしい。


「では、襲撃された製作所に案内していただいてもよろしいですか?」

「え? ええ、それは構いませんが」


 俺たちは製作所へと案内してもらい、俺はここで魔法を使用した。


「失われた魔法ロストマジック"精密探知プレジションディテクション" 」


 現代魔術にも探知ディテクションという魔術は存在するが、精密探知は名前通り精密さに特化した魔法。探知の多数に対して有効とは逆で、精密探知は個人を探すことにおいて絶大的な力を発揮する。


「見つけた」


 つい最近に起きたということで、犯人はまだそう遠くないところにいた。


「"転移テレポート"」


 俺は探知外に出るのを恐れ、すぐさま犯人の元へと飛んだ。


「よお、の犯人さん」

「なっ!? 貴様どこから現れた!?」

「1・2・3……20人くらいか。 実行犯はもっと少ないだろうが」


「お前たち! こいつを始末しろ!」

「こいつ空中にいるぞ! 的だ! 魔術を放て!」

「"火槍ファイアスピア"!!」


 相手は出会ってすぐ魔術を放ってきた。

 魔術の中では中程度の威力か。


「ドカンッッ」


「よし全弾命中したぞ これだけくらって生きているわけがなかろう」

「この程度か?」

「なっ! なぜあれだけくらって無傷なんだ」

「じゃ、お返しだ」


「かの者は空を舞う龍 かの者は地獄の番犬 体は焼かれ もがき 苦しめ 失われた魔法ロストマジック"地獄の業火インフェルノ"」


「うわああああああああああああああ」


 そうして俺は主犯格と思われる人物を捕まえその場を鎮火させ、その後転移でそいつを連れて戻った。


「こいつが主犯格ですか」

「ああ」

「た、たのむ や、やめてくれ」

「じゃあ吐け、吐けよ!!!」


「お父様……。」


 気づかないうちに俺の言動は荒々しさを増していった。


「もう一度喰らいたいか……。 そうか、なら喰らわせてやるよ!」

「ひ、ひいい お、お、王様に言われました あいつらはこの俺にポーションを優遇しないから燃やして奪ってこいと」

「そうかよ」


 俺は自分でもなぜこんなに憤ってるのかわからない。心の中にイライラが蔓延していた。

 俺はボソッと言葉を放った。


「あいつは俺だけだったらまだしも、ミヤにまで迷惑をかけたんだ……。 次はナーシャの故郷まで……どこまで、どこまで迷惑かければ気が済むんだ」


「あの ゆ、許していただけませんか もうしませんので」

「ああ そうだな 死ね」

「へ?」

「水攻めにしてやるよ」


「呼び覚ますは海の覇者 かの者は逆鱗に触れた お前の体はズタズタに引き裂かれるだろう 失われた魔法ロストマジック


「お父様やめて!!」


 ナーシャが俺の元へ走ってきた。


「お父様は大丈夫 私たちがついてるよ お父様が何をしてもいい、だけど今のお父様は苦しそうだから」

「ナー……シャ……」


 決して人前では抱きついたりしないナーシャが人目を気にせず俺のところへ。


「そうですよ パパ」


 子供たちが俺のほうをみてにこりと笑う。俺は少し冷静さを取り戻した。


「みんな、すまない」

「大丈夫ですよ パパはまだ未遂じゃないですか。 何もやってません」

「パパの信条は?」


「子供たちの悲しむようなことは決してしない」


 ああ、子供たちはこんなにも大きく……成長していないのは俺だったようだな。


 ピコンッ


「 闇の心が成長しました 」



 ――主犯格は捕らえられ連れていかれた。

 そして俺は迷惑かけたお詫びにと製作所を直すことにした。


「別に迷惑かけられたわけではないのですが、本当にいいんですか?」

「ああ、ポーションが生産できれば世界のためにもなるし」

「少し離れていてください」


 この魔法をドワーフ王にみせたらなんて言われるかな、また朝まで飲まされるんだろうか。


失われた魔法ロストマジック"錬金術アルケミー"」


 今のこの世界に錬金術は存在しない。まさに失われた魔法というかんじだ。


「こんなかんじでどうですか」

「おお、素晴らしい 早速製作してみてもいいですか?」

「ええ、もちろん」


 この時俺はとんでもないことをしてしまったんだがそれは少し先のこと。


 

 ――俺はナーシャに呼ばれ、森の中で二人になり会話をすることとなった。


「迷惑かけたな ナーシャ」

「いいんですよ、むしろお礼が言いたいです。 ありがとうございます」

「こっちこそありがとう」

「お父様」

「どうした?」

「いえ」

「そうか」


 ボソッ


「お父様、私は今とても幸せですわ」


「エルフ族の想いが一定の値に到達しました」


「派生スキル『精霊王』を獲得しました」

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