1.再会

「オラアアアア」


 男が拳を振り上げた、その時だった。


「やめなさい」


 ギルド二階から声がした。

 突然の出来事だったが、俺は凄く懐かしい感じがした。声色が違うが、俺は忘れるはずもない。

 この声は……。

 声の主が二階から降りてくる。


「あの方は!」

「聖女様だ!」

「今日もお美しい!」

「なぜこんなところに!?」


 冒険者たちの視線はその聖女様とやらに釘付けだ。俺たちの諍いなどもう誰も興味がないようだ。


「何をしているのですか?」


 聖女様がそう言い放った瞬間男たちは我先にと話し出す。


「なんでもないですぜ」

「きもいおっさんがいたんですよ」


「……きもい?」


 聖女様の眼光はさらに鋭さが増した。男はその眼光を向けられた瞬間ヘラヘラとし、そのまま黙ってしまった。

 そして、突然その眼光は俺へ向けられることになる。


「あなたがこの騒ぎの原因ですか?」

「は、はい……」

「あなたに話があります ついてきてください」

「分かりました」


 俺は聖女様についていくことになった。

 殴りかかろうとしていた男はすでに冷静になり、もう殴ってくる気はなさそうだ。

 言われるまま俺は二階の応接室に案内されたんだが……。


「パパ? パパですよね!」

「そうだよ 久しぶりだなミヤ」

「クンクンクン パパのにおいだ!」


 さっきの眼光は嘘のようで、とても可愛らしく懐かしい変わらない笑顔をみせてくれた。

 ミヤは3年会わない間にとても綺麗な大人な女性へとなっていた。成長したんだな……。


「パパ! パパ! うふふふふ」


 成長したんだ……よな?

 ミヤは少し時間が経った後話しだした。


「ところでパパ、私たちのパーティーに入ってくれるよね!」


 そういえば、今は子供たち六人でパーティーを組んでいるんだっけか。


「でも、いいのか?」

「もちろんです! というかパパのためにリーダー空けてますから!」

「ほえ?」

「私たちの中で決まった意見です! なので断ることは出来ません!」


 元々断る理由などなかった。なんせ俺の夢リストに子供たちと冒険することがあるからだ。

 我儘だろうか、俺は子供たちの成長をまじかに肌で感じたかった。それは例え冒険ではなくても変わらない。


「よろしく頼む」

「はい!」


 早速パーティー登録に必要な書類を書いた。


「じゃあ、提出しにいくか」

「その必要はないですよ」

「え?」


「ガチャッ」


 応接室のドアが開いた。


「当ギルドのギルドマスターです 以後お見知りおきを」

「よ、よろしくお願いします」


 ギルドマスター??? わざわざ? 確かに全世界に誇れる子たちだけど……。


「書類拝見させていただきました」

「パパのこと認めていただけますよね?」

「はい 聖女ミヤ以下六名の推薦により、クジマ ダイカをSSランクパーティー『ブレッシング』所属の冒険者およびリーダーとします。 これによりクジマ タイガはEランクからSSランクへと昇格となります」


 SSランク!? 理解が追い付かない。

 ……子供たちのパーティーって最高ランクだったの!?

 顔には出さないようにしているが、頭の中は嬉しさと驚きでお祭り状態だ。


「やりましたね パパ」

「ああ、ありがとな。 この三年間みんなで頑張ったんだな パパはみんながとても誇らしいよ」

「えへへ、その言葉みんなにも伝えてあげてください」


 ミヤの笑顔をみていると、これ以上は野暮だなと気持ちが落ち着いた。


 ――七日後 子供たちと再会した俺はその後、ブレッシングとしてパーティーメンバー全員でエルフの国へ向けて出立していた。

 経緯はこうだ。

 どうやら高品質ポーションの在庫がなく、高品質ポーションを作っているエルフの国へ赴いてほしいという依頼だが、他の国へ赴くのは高ランク冒険者でなければ危険と判断された。エルフの国は比較的安全なのだが、高品質ポーションという高価なものを持って帰る、昨今怪しい動きが様々な国で多発しているということで高ランクに依頼がきたらしい。

 それでぜひにとブレッシングとして依頼を受けた。

 のだが……。


「七日経ってもダイカ欲は満たされません」

「そろそろ離してくれないかキャリィ」

「イヤです」


 この子は人魚族のキャリィ、マアトと同じ年下組でみんなの妹。

 青い髪が特徴的で年下組だが、とても大人っぽい顔をしている。人魚だが、陸での生活をするため魔術で人族の足に変え生活している。後、胸が大きい。

 親としてはくっついてきてくれるのは嬉しいが、子供といってもこの世界では成人済みだ。体に圧を感じるので過度なスキンシップは避けてほしい。

 エルフの国へ俺のスキル転移テレポートを使って行ってもよかったのだが、せっかく家族揃ったからと馬車で行くことになった。

 道すがら魔物が出たりするが子供たちは強いし心配はない。

 ただ一つ心配があるとすればナーシャのことだ。彼女はエルフの国出身、しかもエルフの国にあまりいい印象をもっていない。俺がサポートしなきゃな――。

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