娘の笑顔
《陽下明日香》
なぜこんなにいい娘が苦しまなければいけないのだろう。母である私が変わってやれたらどれだけ良かったか。
娘の喜与が難病を患ったと診断されたときにもそう思った。
「早く行こうよ!」朝から娘はキラキラと笑顔を輝かせながら制服に身を包んでいた。私もその光景が嬉しくて仕方がなかった。喜与の屈託のない笑顔を見るのは久しぶりな気がいた。しかも家にいる。喜与が。
病院から許可が降りて一時的に退院し、学校に通うことが可能となった。
車を校門前に止めると娘の幼馴染の優慈くんが立っていた。おそらく早起きして待っていてくれたのだろう。感謝で頭が上がらないほど娘はいつも優慈くんに励まされている。
「おはよう。喜与をよろしくね」
「おはようおばさん。任せてくださいよ」ニヤニヤと優慈くんは笑顔を向けた。
優慈くんがいないと今頃どうなってたんだろう。すると、想像したくもないことが頭の中に流れ込んできた。この子には本当に感謝しかないなと思った。
家に帰り、今日は有給を取っていたので1日家に待機して過ごす。
何事もなければいいな。と思っていた矢先のことだった。家の電話がなり見てみると喜与の通っている高校の番号だった。
直ぐに電話を取り応答する。
「喜与さんがさっき倒れて病院へ運ばれました。」
「お母様も可能であれば病院に・・・」返事もろくにせず直ぐに電話を切り車を走らせた。
病院につくと喜与が病室で眠っていた。先生と看護師が入ってきて様態を説明してくれた。ひとまず大丈夫らしい。夫もすぐに駆けつけ喜与を見て肩をなでおろした。
すると、喜与の主治医が私達を診断室まで通した。入ってすぐに丸椅子に腰掛けると深刻そうに先生言った。
「喜与さんの今後についてです。」
全員黙って先生に視線を向ける。ゴクリと息を呑んだ。
「喜与さんは__」
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