Sceaf 13

「ん……」



ゆっくりとまぶたが開く。視界が暗い。


外は暗かった。ずいぶんと寝てしまったのかもしれない。暖かかったはずなのに、予報外れの雪が降っていた。


身体を起き上がらせたとき頬に違和感を感じて触れてみれば、それは涙が乾いた跡だった。



夢を見た。過去の夢。私はずっと、過去に縛られて、過ごしてきた。


怖かった。ずっとずっと。私はこうやっておびえながら生きていくんだって考えて、胸がつまるような感覚がすることもあった。



手元を見ると、少しつぶれた小さな紙箱が握られていた。


ハルさんにあげるはずだったチョコの入っていたもの。


……あの日。ハルさんに初めて声をかけた日。



本当は怖かったんだ。記憶がよみがえって。話しかけることで、この人をいやな気分にさせてしまうんじゃないかって。


だけど、ハルさんは優しく受け入れてくれた。真夜中12時過ぎに話しかけてきた、女子高生の私を。


それがうれしくて、調子に乗ってマフラーをあげてしまった。


縛っていた過去の自分の鎖の鍵を、外せたような気がしたんだ。そのとき。


箱をカバンに入れ、その手をぎゅっと握りしめる。



……宮崎くん。私、あなたに会いに行く。


例え私がクラスメイトだった、知り合いだったにもなれなくて。“赤の他人”だったとしても。


過ごした時間が消えるわけじゃない。



会って、私は宮崎くんに謝りたい。謝ったら、きっと私はもう一歩前に進める。


ずいぶん自分勝手だと思う。それこそ、また傷付けてしまうかもしれない。……だけど。



私はカバンを肩にかけてから公園を出て、夜になりかけの街を走り出した。


時刻は6時過ぎ。———目指すは、宮崎くんの通う高校。

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