Sceaf 10

だけど、6年生になった5月の始め、宮崎くんはパッタリと学校に来なくなってしまった。


また同じクラスだったから、覚えている。

違和感を覚えたのは、宮崎くんが三週間来なくなってから。


最初は風邪かなって思ってたけど、これだけ休んでるのはおかしい……よね。

クラスのみんなも不思議に思ってただろうけど、触れてはいけないと思ったのか誰も口にはしなかった。



好きな人に会えないのって寂しいなあ、宮崎くん、どうしてるんだろう……。なんてそのときは、深くなんて考えなくて。


もちろん連絡先なんて知らないし、知っていたとしても連絡なんてできない。私は、宮崎くんにとってただのクラスメイト。

これは片思い。私の一方的な想いで宮崎くんに迷惑をかけたくない。


担任からも休んでいる理由は説明されないまま、小学校最後の夏休みが明けてしまった。



会えない日も、もちろんうれしいこと、楽しいことがたくさんあった。だけど、やっぱりちょっとどこか寂しくて。私の中で、宮崎くんはこんなにも大きな存在になってたんだって思う。


6月にあった運動会と、夏休み明けて一か月後にあった『秋祭り』と呼ばれるうちの学校の文化祭は特に寂しかった。

30人いないと6年3組じゃないのに。そう思っていた修学旅行の近づく10月中旬の放課後、突然朝日奈くんに呼び出された。



「修学旅行は、くるんだってよ。宮崎」

「えっ、なんでそれを私に?」



朝日奈くんはクラスメイトで、地元のサッカーチームに所属するスポーツ少年。そして、宮崎くんの友達。


そんな朝日奈くんなら宮崎くんのことを知っていてもおかしくないけど、なぜ私に言うのかが分からなかった。



「だって佐倉は、宮崎の友達だろ」


「とも、だち……」



私は小さく、朝日奈くんと二人きりの廊下でつぶやく。

だって、私は宮崎くんにとってただのクラスメイト。5年生のとき3ヵ月間席が隣だっただけの、そんな関係。


友達……って、宮崎くんは思ってるのかな。私はもちろん友達だったらうれしいけど。



「まあ、班編成は先生たちがやるからどうなるかは知らない。でも、佐倉には言っておきたいと思って」


「……うん、ありがとう」



朝日奈くんが笑った。


結局宮崎くんと同じ班にはなれなかったけど。

それでも、一緒に学校行事に参加出来ていることがうれしかった。


朝日奈くんと同じ班で笑ってる宮崎くんが見れただけで。



だけどやっぱり修学旅行が終わってからも、宮崎くんが学校に来ることはなかった。


義務教育だから出席日数は関係ないし、来なくても卒業はできる。でも、やっぱり会いたい。会って、もう一度宮崎くんの優しい笑顔が見たい。


そんな願いが叶うこともなく、あっという間に冬になってしまった。

クリスマスやお正月が終わり冬休みが明け、卒業の雰囲気になりつつある教室。


うちのクラスでは卒業までのカウントダウンが行われていて、もう小学校生活も終わってしまうのかと考える。

だけど終わったってほとんどの子が中学も一緒だから、なんだかんだお別れ感はない。


そんなとき、誰かが卒業お祝い会をしようと言い出した。学校では他学年がお祝いしてくれるけど、自分たちでも何かやろうって。


少ないけど、これからみんなとは別に学校に行ってしまう人もいる。だから、最後の思い出作りにって。



賛成の声が次々に上がり先生からもOKが出たので、学級委員を中心に準備することになった。


そしてその卒業お祝い会前日。あの日は確か、雪が降っていた。

帰りの会が始まる前、先生がいない中誰かが言った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る