第四十二話『自己紹介の会』
夢を見た。すごい綺麗な人と喋ってたけど…どこかで見たことあるような…?どこだっけな…分からない。
ふぅ、よく眠れたー!すごいいいベッドだった。こんなふかふかの寝床はいつぶりだろう…安宿からの野宿で碌な眠りじゃなかったからね。
「シエンくん、これからどうする?」
ちなみにシエンくんとは同じ部屋だった。何も伝えられてないし、ベッド2つあったからね。街を出てからは野宿とかしてたし、特に何もない。
「この辺りを歩き回ってみますか?あ…でも僕たち現在地が分からないですね。気がついたらここにいましたし、入ったらマズいところとかあったら困りますね…」
「だいじょぶっしょ!探索しよう!」
「え、自分で提案しておいてなんですけどここで待ってた方がいい気が…」
「心配ないって。どこかで誰かと遭遇するだろうし」
さながら地下迷宮!ダンジョン探索へレッツゴー!
⬛︎⬛︎⬛︎
「うーむ…」
「これは…」
「迷った…」
「迷いましたね」
もう部屋がどこかすら分からんし、この前通った通路にも当たらない。
誰かに道を聞こうかな?…でもなんか道ゆく人たちみんな目が、怖いんだよね。なんかギラギラしてるって言うか。
「もう、ここどこなん--」
映る景色が一瞬で切り替わる。昨日も体験した、不可解な移動。
「だ…あ、昨日の部屋だ」
「来たね。ありがとうトリイ。いきなりですまないね、モルテルにシエン。今日は君たちに会議に参加してもらおうと思ってね」
昨日は空席だった6つの席に人がそれぞれ座っている。あ、ボラードさんもいる。
そうか…会議か。かっちりとした雰囲気苦手なんだよねー。
「ささ、座って」
空席だった2つの椅子が勝手に後ろに引かれ、私たちを誘う。仕方ない、座るか…
いくつかの視線が刺さる。特にツェダカさんの近くに座ってる3人から。あの人たちは側近…みたいな立場なのかな?
「それじゃみんな、順番に自己紹介しようか。番号順にね」
ツェダカさんがそう言うと、1番近くに座っていた女の人が立ち上がる。
「初めまして。私は人類同盟第一軍団長のユダ、と申します。主に導手様の補佐と、新たな団員の勧誘を担当しております。どうぞ、お見知り置きを」
ユダ、と名乗った女性は栗色の髪を肩の辺りで切り揃え、丸いメガネをかけた温厚そうな印象だ。喋り方も落ち着きがあっていい人そうだ。
「そしてこちらの笠を被っているのが第二軍団長、トリイです」
ユダさんの目の前に座っている、頭を丸ごと覆うような草で編まれた笠を被っている人が会釈をする。この人が昨日ツェダカさんが呼びかけてた人か。
「彼は主に兵站や機密情報の管理を一任されております。諸事情により言葉を発することが出来ませんので、ご了解を」
そう言うとユダさんは椅子に座り、隣に座る男に視線で合図を送る。
「オレの番か?オレぁ第三軍団長のパイライトだ。この組織の運用資金は殆どオレが提供してンだぜ?」
こいつは嫌なヤツだな。雰囲気があのギルドの面々に似ている。まさに成金!って感じの豪華な装飾品で全身を飾りつけている。
「そっちのお前、そう男の方だ。お前貧乏そうな面ぁしてンなぁ…気に食わねぇぜ」
うっわ!うわうわうわ!やっぱり嫌なヤツじゃん!
「こらパイライト、お客人を困らせてはいけませんよ。初めまして、わたくしは第四軍団長のエマと申します。どこかお怪我してしまったらわたくしに言ってくださいね」
医者とかなのかな?エマさんは桃色の髪を後ろで束ねていて、ユダさん以上に優しそうな人だ。包容力?みたいなものを感じる。
「…次はボクの番か?ボクは第五軍団長のミゼット。別に覚えなくてもいいよ」
愛想悪いね、この人。私みたいな暗めの色のフードを被って、口元をスカーフで隠してる。同業者かなぁ?だいぶ年齢は低そうだけど…
「この子はいつもこうなのよ、嫌わないであげてね?」
「っおい!ボラード!」
「2人とも、昨日ぶりね。改めて自己紹介するわね。私は第六軍団長のボラードよ」
うーん、安心感あるね!心の癒しと言っても差し支えない。席が近くてよかったー。
「こちらの参加者は全員紹介し終えたよ。それじゃ、次は2人にも自己紹介してもらおうかな」
「どっちからやる?」
「モルテルさん先でいいですよ?」
「えぇ〜、緊張するからシエンくん先やってよ」
「えー…分かりました。初めまして、シエンと言います。肩書きとかはありませんが、人と仲良くなるのは得意です。よろしくお願いします」
わあ簡潔!こんなのでいいのかなぁ。まあ顔と名前が一致すればいいのか…?
仕方ない、やるか…緊張するなぁ。
「えー…初めまして。モルテルです。口下手ですが、どうぞよろしくお願いします…」
「うん、結構。これで皆んな顔見知りだね!それじゃあ早速だけど、2人にはキミたちが捕らえた奴隷商人の拠点を制圧してもらおうと思う」
いきなり仕事振られるのは聞いてない…いや、確かにシメに行くつもりだったけど、勝手に行って好き勝手しようかなーって思ってたんだけどな…任務って括りになると真面目にやらないといけなくなっちゃうじゃん?
「2人はこういうの慣れていないだろうし、補佐を付けさせよう。ボラード、キミのところの副団長を貸してあげて」
「仰せのままに」
こっちサイドの確認無しに話が進んでいく…いいけどさ。初対面の人と仕事かー…コミュニケーションはシエンくんに任せよう。うん、その方がいいね!
⬛︎⬛︎⬛︎
「初めまして。私が第六軍副団長のグタペルカよ。ボラード団長…彼女から貴方達のことは聞いているわ。宜しく」
ボラードさんとこの副団長って聞いてビジュが濃い人かと思ってたけど案外地味だね。…いやこれが普通か。
よくよく考えてみれば組織の幹部ポジションの人たちが全員キャラが濃いことって滅多にあることじゃないでしょ。異常だよ…
「早速だが、目的地へ向かうとしよう。幸いなことにここからそう遠い街ではないからな。客間に荷物の置き忘れは無いか?あるなら待とう」
ちゃんと持ったよ!会議終わった瞬間に客間にテレポートさせられたからびっくりしたけどね。
最近初対面の人と行動することが多くなって慣れてきた感じあるよね。
てかこの前の奴隷商人の人ってどうなったんだろう。生きてるかな?
★★★
クセの強いやつら、一挙登場!
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