第二十三話『ワンランクアップ』

「よーし、全員支度出来たか?出発するぞ」


「ちょっと待って、まだこのいちごケーキ食べ終わってないから」


「何でそんなもん持ってんだよ…」


「あげないよ?」




⬛︎⬛︎⬛︎




「今日中には着く?」


「ああ、もうすぐのはずだ」


「ふぅん…あ、危機感知に反応があった。デカめの零獣が近づいてくるよ」


「お、じゃあついでに狩っておくか…」


「わたしがやろうか?」


「いや、俺らがやろう。なぁ、お前ら」


「私たちが戦ってるとこ、ルシアさんに見てもらったことないしね〜」


たしかに。道中の零獣なんて雑魚もいいとこだったし…彼らの実力を見たことはない。


全員異能持ちってのも中々すごいと思うし、付き合いも長いらしいから連携もさぞ卓越しているのだろう…




種族:ブラッド・ボアLv.58


【スキル】

血液硬化Lv.9

蛇行Lv.Max

咬合Lv.Max

毒精製Lv.8

特殊視覚Lv.Max

隠密Lv.8

吸血Lv.7

捕食Lv.Max


【称号】

猜疑の末路




称号持ってる零獣か。それも見たことない種類の。


「行くわよ!『バニッシュメント・サンダー』!」


アリスの放った雷魔法…?にしては色が紫に変わったそれが蛇に直撃する。雷魔法は雷で攻撃する関係上、シンプルに速い。


あ、蛇があらぬ方向に向かって毒を吐いた。

混乱の仕方がわたしの角の効果に似てるな…あ、もしかして異能の効果か?アリスの異能、『幻惑の脚光』の。




『幻惑の脚光』:魔法付与、高速詠唱、乱魔、魔法強化




見た感じ魔法付与が異色だね。どうやら魔法に、さらに別の魔法の効果を上乗せしたり触れた物に直接魔法を作用させたり出来るみたい。


光魔法の速度で火魔法を飛ばす!みたいな事も出来るだろうし、今みたいにおそらく幻影魔法かな?を上乗せして撹乱にも使える。かなり強い異能だね。


対照的にルークさんのは地味ーだ。




『蜥蜴の尻尾』:転嫁、偽装、痛覚耐性、自己再生




先程から蛇に肉薄して剣戟を喰らわせているが、尻尾での打撃をちょくちょく反撃で貰っている。蛇は遠目から見てもかなり大きく、その巨大から放たれる尾撃はかなりの速度が出ているように見えるが、ルークさんはほとんどダメージを受けていない。


異能の効果を見るに、おそらくは受けたダメージを他のものに移すことが出来るのだろう。

ろくにガードしていないのに盾がボロボロだ。


エレンさんもかなり良い活躍をしている。弓がメインウェポンだから遠距離から一方的にチクチクが得意だと思うのだが、木の間を飛び移りながら矢を絶え間なく放ち、しかも曲射や複数同時に矢を放つなどのトリックショットも披露している。




『幻想矢』:分裂、再発射、動力付与、貫通




時々空中で矢が分裂したり、空中で向きを変えて飛んで行ったりしているのはこの異能の力だろう。


3人とも強いな。なにより連携力が。

最初のアリスの掛け声以降全く声を発さずアイコンタクトとハンドサインのみで連携している。これが熟練か…3人の評価を1つ上げないとね。




しばらくして、蛇は生き絶えた。さすがにこのレベルのやつを生かして捕えるのは難しかっただろうし、勇者の経験値稼ぎにはならず。


わたしは因子を頂いたけどね!


他はいらないので素材は3人にあげた。鱗とか硬そうだったし、何かの役に立つでしょう。




◆◆◆




「…まあいいや、じゃあ古城に突撃と行こうか」


歩みを進めると僕らの頭の上を蓋うのが木々から眩い月明かりに変わる。


思えばずっと森の中で過ごしてきたから、こんなに頭上が開けているのは新鮮だね。


「お…あれかな?ここのボスにしては弱そうな気もするけど」


城の前まで来ると、血の色をした鱗を持つ巨大な蛇が現れた。ここのボスかは定かじゃ無いけど、僕らの邪魔をするなら…殺すしかないよね!


いきなり口から何かを吹きつけてきた。

喰らうのはまずい気がしたので眷族を出して肉壁を作る。


そしたら壁にした眷族が全員溶けて死んだ。


「うっわ!これ毒か?やばいな!僕らでも受けたら死んじゃう!」


「動じるな!僕らは死んでも死なない!」


『魔王』スキルの一つ、『鎌鼬』を発動する。手で空中をなぞるとその軌道に従って風の刃が蛇に向かって飛び、鱗を切り裂く。


運良く首筋に命中し、首から大量の鮮血を吹き出している。


「チャーンス!『牛鬼』発動っ!」


好奇と見た7番が跳躍し、魔王スキルの一つである『牛鬼』を発動する。

蛇の傷口を思いっきり殴りつけると、殴った部位が破裂する。『牛鬼』は衝撃を与えた箇所の水分に作用して内部破壊することが可能なスキルで、生物相手なら無類の強さを誇る。


「なんだこれっ⁈ぎゃぁー!」


倒したかのように思えたが、7番に付着した蛇の血液が急激に膨張して凝固し、7番が圧迫されて潰れる。


「7番がやられた!はやく王位継承を!」


「了解!」


瀕死になり地面をのたうち回る蛇の頭を押さえつけ、王位継承を発動して体のコントロールを奪い、僕の意思を植え付ける。


「ふぅー…倒せたか」


「うぅーーん!僕、爆誕!」


「じゃあお前は今から19番な」


「了解、本体」


「あ゛ー!死ぬかと思った!」


あ、7番が復活した。


「じゃあ古城に入ろう、か…うっ、頭がグラグラする」


「今本体のとこに魂がめちゃくちゃ流れ込んで来た…気がする。2番の別動隊がトカゲを一掃したかな?進化できるんじゃね!」


「ちょっと、待って。ほんとしんどいから」


初めて王位継承を発動したときに似た感覚だけど、あの快楽に苦痛が混じって頭にダイレクトにぶち込まれてる。


アンビバレントな感覚に身を包まれながら僕は意識を手放し、脳の奥底が昏い愉悦で満たされていく。




種族:イモータル・キマイラ

名前:ユーベル


【特性】

不死

邪眼


【異能】

悪虐非道ノートリアス

閾エ蜻ス逧?↑谺?髯・


【スキル】

魔王

変形

軟体

捕食

吸収

剛性

変身

隠密

偽装

統率

無限再生

並列思考

高速演算

鱗粉

羽撃

外骨格

暗視

吸着

複眼

粘液

跳躍

毒精製

蜘蛛糸

咬合

投擲

登攀

群体

吸血

血液操作

切断

蛇行


【称号】

魔王

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