第十九話『GAME OVER』
「いくぜオラぁっ!」
笹木くんが突貫してくる。
たしか世良くんの次にカフカからの覚えが良かったヤツだ。『鑑定』っとな。
種族:ヒューマンLv.1
名前:笹木恭弥
【異能】
反抗の足踏
【スキル】
体術Lv.Max
柔軟Lv.Max
俊敏Lv.Max
持久Lv.Max
威圧Lv.3
連撃Lv.2
衝撃Lv.1
衝撃吸収Lv.2
自己再生Lv.1
【称号】
勇者
異世界人
なるほど、物理特化ね。
異能はストレスがかかると攻撃の威力が上がるらしく、マジもんの物理特化。
「ばっちこーい!『外骨格』!」
逆鱗ではなく外骨格、ただ単に物理に強くなるスキルを発動する。
笹木くんとわたしの拳が激突し、笹木くんのスキル『衝撃』が発動する。『衝撃』は攻撃範囲が広がったり衝撃を浸透させたり出来る便利なスキルだけど、まだスキルレベルが低いので大した威力ではない。
「チィッ!まだまだぁ!」
今度は回し蹴りを放ってくるけどその足を掴んで、勢いを利用して投げ飛ばす。
「かーらーのっ!『自失』!」
精神魔法をかけて大人しくさせる。
「はい、終わりー。次!」
⬜︎⬜︎⬜︎
次は僕の番だ。僕が最後だから合計29人を連続で相手しても、ルシアさんは傷一つない。
「君が最後…かな?」
「はい」
「準備はいい?」
「もちろんです!『
視界が眩い光に包まれ、自分の体に変化が生じていることが分かる。
「おぉ…?」
光が消えると、僕はルシアさんによく似た風貌に変わっていた。
「なにそれ!わたしじゃん!」
「見た目だけじゃないですよ!」
僕の異能は『虚構』。最初はどんな能力なのか全く分からなかったけど、わかりやすく言い換えると『ゲーム』のようだ。
僕の記憶をもとにゲーム機を作り出して遊ぶことも出来るし、スキルとか身体能力を設定したアバターを作成して乗り移ることも可能だ。
今回作成したアバターはルシアさんを参考にしてある。最後まで動きをしっかりと観察し、対抗しうるだけのキャラクターを作ったつもりだ。
「『ホワイトアウト』!」
ルシアさんが野村さん相手に使っていた目潰し魔法を放つ。1つのアバターに設定できる『コマンド』、つまり技は6つまでで、ルシアさんの戦い方を見て慎重に決めた6つが今回は採用してある。
「うっ、眩しっ!」
ルシアさんが怯むのを見て懐に潜り込み、パンチを放つ。
「おっと、惜しかったね!」
「なんで見えてないのに止められるんですか!」
僕の拳を受け止めたルシアさんはそのまま足を引っ掛けて転ばせようとしてくるが、世良くんの異能を参考にした技の1つで緊急脱出する。
「おー、すごい。面白いね君」
そう言うなりルシアさんが突っ込んで来るが、技の一つである『とりもち』を発動して足を地面に拘束する。
「うわっ!なにこれ、べたべたするんだけど!」
ルシアさんはとりもちに足を取られて転んで、顔までしっかりとくっついている。
「やった、勝った…!」
世良くんや笹木くんですら勝てなかったルシアさんに膝をつかせることが出来た!これは快挙なんじゃないだろうか。
「ところがどっこい、まだなんだよね」
いつの間にかとりもちから抜け出したルシアさんが僕の背後に立っていて…僕の意識は暗転した。
◆◆◆
-----僕がこの世界に来て1番嬉しかったのは初めて…
はじめて…なんだっけ。
そもそも初めてなのかなぁ?いろんなデジャヴを感じる。
俺は辺境の貧しい村で生まれた…2人の幼馴染と……1人だっけ?僕は都会生まれ都会育ちの……貧民、村には大した娯楽も無く、いつも剣を振っていた。ゲームをしてた気がするなぁ。
村は魔物の大群に襲われて、…いじめられていたんだ。中学生の頃。僕をいじめていたのは…魔物?それとも僕かな?
友達が1人もいなくて、ずっとゲームを、いや、だから剣を振っていたんだ。あれ、弓?森で弓の練習をしていたんだっけ?ちがう。私は魔法一筋だった。
うるさいなぁ。ちょっと黙ってくれよ。
ともかく、ずっと1人だった。1人じゃなかったけど。
ファンタジーはいつも僕の隣に。
テンプレートのゆうしゃとまおう…
リアルであんなご都合展開、あるわけないのにね。
「-----」
お母さんが呼んでる。
ちょっと待ってて。今折り合いをつけてるんだ。
勇者とまおう。いつだって勝つのは勇者の方だ。
だから僕は…だから。
そうだ。思い出したよ。
「僕、魔王になりたかったんだ。お母さん」
「君の名前は…『ユーベル』だ」
はじめまして。僕を産んでくれてありがとう。そして…
ごめんなさい。
◆◆◆
種族:イモータル・キマイラ
名前:ユーベル
【特性】
不死
【異能】
閾エ蜻ス逧?↑谺?髯・
【スキル】
魔王
変形
軟体
捕食
吸収
剛性
変身
隠密
偽装
統率
無限再生
並列思考
高速演算
【称号】
魔王
『悪虐非道』:分裂、自切、独立思考、眷族化、王位継承、復元、感覚共有、位相転換
『魔王』:ここが僕の夢の始まり。【スキル】『魔王』を獲得。
⬜︎⬜︎⬜︎
統一暦1205年、魔王が世界に誕生した。それは1人の少年の夢の始まりであり、数多の命の夢の終わりでもあった
-???著、『日記』より引用-
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