第十七話『犬猿ならぬ…』
「やってきました!王都ー!」
「いえーい!」
わたしたちが今いるのはヴェールトロース聖王国王都、オルペルツ。ヴェールトロース聖王国はこの大陸でも五本の指に入る大国らしい。
ちなみに酪農が盛んらしく、チーズケーキがとても美味しいらしい。絶対食べる。
「ここに勇者がいるの?」
「私の知り合いが言うにはね。今は王城に寝泊まりしてて、そこで鍛錬とかしてるらしいよ。知り合いはそこの監督?みたいなことしてるらしい」
「そんな偉い人なの?知り合いって」
「あー、言ってなかったっけ。龍だよ、龍。その知り合い」
「え、つまりレイヴンが洞窟でぐーたらしてる間に国の上層部に食い込んでる龍がいるってこと⁈」
「言い方…まあそうだけど。アイツは昔からマジメくんだったからねー」
龍にもいろいろあるんだねー。あ、ケーキ屋だ。
⬛︎⬛︎⬛︎
「ここの教会に来ればいいって言ってたはずなんだけどなー…」
「聖職者なの?」
「そうとも言えるね。ここで合ってるか念話で聞いてみるね」
時間かかりそうだし、さっき買ったチーズケーキを食べよう。
「あ、ルシア。そろそろ着くみた--ぶはぁ!」
-⁈レイヴンの目の前に突然人が現れてレイヴンを殴り飛ばした。
わたしもかなり強くなったと思ってたけど…全く見えなかった。
「痛っっったいなぁ!いきなり何だよ!」
「何だよとはなんだ!ここ数日事あるごとに貴様の念話が飛んできて煩いことこの上ない!勇者の育成で激務だと言うのに…いきなり騒々しい思念を受け取る者の気持ちになって考えろ!」
「だからってすぐ暴力に訴えるなよ!いきなり殴られる人の気持ちにもなって⁈」
「仲良さそうだね」
美味しい。
⬛︎⬛︎⬛︎
「ったく…ルシア、紹介するよ。こいつはカフカ。世界一のクソ真面目」
「なんだその紹介は。ルシア殿、お初にお目にかかる。光龍王のカフカだ」
「あ、どうもご丁寧に」
「あぁルシア、こいつに敬語はいらないよ。んでカフカ、早く案内して。お前の引率がないと王城なんて入れないから」
「了解した。着いてきてくれ」
はー。ほんとに真面目だな。
てかさっきの高速移動ってどうなってんだろ。気になりすぎる…鑑定していいかなぁ?
今まで気にしたことないけどたぶんいきなり鑑定するって失礼だよね。
「鑑定していいよ、ルシア。たぶんこいつも文句言わないし」
「びっくりしたー。もしかして心読める?まあいいや…それじゃ、遠慮なく。『鑑定』」
種族:光龍王Lv.Max
名前:カフカ
【権能】
救恤
【スキル】
鑑定Lv.Max
指導Lv.Max
算術Lv.Max
家事Lv.Max
裁縫Lv.Max
料理Lv.Max
体術Lv.Max
杖術Lv.Max
天鱗Lv.Max
魔統の天角Lv.Max
龍化Lv.Max
光速移動Lv.Max
高速処理Lv.Max
並列思考Lv.Max
飛翔Lv.Max
天駆Lv.Max
翼撃Lv.Max
未来予知Lv.Max
念話Lv.Max
連撃Lv.Max
詠唱破棄Lv.Max
神聖魔法Lv.Max
聖光魔法Lv.Max
光魔法Lv.Max
付与魔法Lv.Max
強化魔法Lv.Max
奇跡魔法Lv.Max
回復魔法Lv.Max
【称号】
光を統べる者
始原種
救恤の心
守護龍
すごい。スキルが全部レベル最大だ。家庭的なスキルも含めて。
めちゃくちゃ真面目ってか几帳面だな…
⬛︎⬛︎⬛︎
勇者たちが鍛錬してるらしい王城の中庭が見えるところまでやってきた。
さすが王城というだけあって、中庭がだだっ広い。余裕で全力疾走できるだろう。
「おー。やってんねえ」
今は中庭を走ってる。移動に関するスキルでも取ろうとしてるんだろうか。
「この後はA級冒険者を招いて戦闘訓練をさせる予定だ。ルシア殿もA級のようだし、参加するか?」
「いいねいいね。勇者…面白そう!」
「私はそこまで面白いとは思えないけどね」
「同感だ。在野の冒険者ですらもっとマシな者もいると思うのだがね」
冷めてんなー…
「今ってどんぐらいなの?戦闘力…みたいなの」
「こちらに召喚する際、ワタシの権能で全員に異能を付与してある。そこから数ヶ月鍛えたが…実力的にはB級冒険者の下の方と同じくらいだな。平均して、だが」
「え、すごっ。まあまあ強いじゃん。あ、でも異能あってそれだとうーん…ってかんじするね」
「数人、A級程の実力を持つ者もいるがな」
へー、やっぱ楽しそう!
⬜︎⬜︎⬜︎
「はぁ、はぁ、はぁ」
し、しんどい。
召喚されて数ヶ月が経ったが、今までやらされてきたのは王国の騎士団に混ざってひたすら基礎体力作り。走ったり腕立て伏せや腹筋をしたり…時には剣を振るったり。
正直召喚された時は課題で胸がいっぱいだったが、今となっては…
もっとあるじゃないか!魔法とか、異能力とか…せっかくそれっぽい【異能】ってのがあるのに。
「騎士団長、勇者の皆さんをここへ集めてくれ」
「かしこまりました」
カフカさんが来た。たぶんクラスメイトの中でこいつが好きな奴は1人もいないだろう。
言葉が厳しいし、僕たちを見る目がひどく無感情。そもそも初対面で「期待していない」と言った奴の好感度を上げるなんて無理だろ。
「集まったか。これからの訓練の方針を連絡する」
あれ、カフカさんの後ろに知らない人が2人いる。どちらも女性で、かなりの美人だ。1人はカフカさんと同じで心底興味なさそうだけど、もう1人は珍しいものを見るみたいに目をキラキラさせていて個人的に好感度が高い。
「基礎訓練はこの辺りで一度キリをつけ、今後は本格的な戦闘訓練に入る。それにあたり、A級の冒険者をお呼びしている。まだこちらに到着していないようだが、全員人徳に優れた方々だと聞いている…どうやら到着したようだな」
中庭の入り口から複数人の人影が入ってくる。
「すみません!遅れ…っげぇ!お、恩人様ぁ⁈」
「ん?…あぁーー‼︎ルークさんじゃーん!」
★★★
ルークさん御一行登場!
一章初っ端からインフレしてるやつが2人(2頭)出てきましたが…一章はルシアちゃんとルークさんの勇者育成記になります!
さて、どんなバケモノが育つのやら…()
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