第十四話『異形』

『命の光』

黎明:生物解析、生物吸収、生物看破

暁光:特性吸収、特性発現、構造変化

日影:特性付与、構造矯正




 素敵な誕生日プレゼントも付いてきた。

もう負ける気がしないね!


「さて爺さん、そろそろくたばる用意は出来たかな?」


「ゴホッ…舐めるなよ小娘。この程度ではくたばらぬわ…『聖鎧』!」


 爺がスキルを発動すると、爺の傷が塞がっていく。


「うへぇ〜…回復もあるのか、めんどくせー」


 神聖な気配を纏った爺が突貫してくる。


 爺の振り下ろしを右手で逸らし、無防備になった顔面を殴る。


「⁈硬った!」


 強くない?この爺…防御無視の斬撃と超耐久。スキルを発動してからは『混沌の魔角』も効いてないみたいだし…

 空間魔法の格納庫から良さげな剣を一振り取り出す。


に賭けようかな。




⬜︎⬜︎⬜︎




 強すぎる。なんだこの女は。先程から幾度も致命的な攻撃を当てたはずだ。

 私の持つ聖剣『ゲレヒティカイト』には魔に属する者の再生や行動を阻害する効果がある。それにもかかわらずかの者は手足を斬り落としても、胴を両断しても再生してくる。

 それに加えて先程の謎の感覚異常。突如として強烈な苦味を覚え、酷い耳鳴りがした。目には不可解なマーブル模様が映り、触覚や平衡感覚はほぼ消失した。『聖鎧』の効果で今は影響から逃れられているが、アレが続いていれば敗北していただろう。


 認識を改めねば。アレは単なる襲撃者ではない。世界に不和を齎す害悪だ。ここで必ず断たねばならぬ!




⬛︎⬛︎⬛︎




 爺が強烈な殺気を放つ。ようやく本気になってくれたかな?ならわたしも応えよう。


「『日影』」


 わたしがそう唱えると虹色の光が爺の方向へと煌めく。


 爺を包んでいた光が消えるとそこには、右腕はカエルのそれに、左眼から警告色の突起が生え、左脚が肥大化し、身体の一部が黒光りする異形のバケモノがいた。


「--あっははははは!醜いなぁジジイ!もうまともに体を動かせやしないだろ!」


 実に楽しい!異形になっても剣を構えてわたしを迎え討とうする爺に、取り出した剣で応戦する。

 実にいい練習台だ。かなりの時間打ち合った影響でわたしの持っていた剣術スキルが『魔剣術』に変化をし、剣がより冴えてくる。


 ありがとう爺。実に多くのことを学べた。

 一歩後ろに体を引き、右脚を上に振り抜く。


「--『クリーゼ・シュナイデン』」


 脚を振り抜く直前に右脚を蟷螂の上位種、『デスサイス・マンティス』の前腕に変化させ、それを発動体として魔剣術を放つ。


 爺の体は縦に真っ二つになった。

 強かった。だけどその力の一部はわたしのモノになる。

 『黎明』を発動してハイ・ノーブルヒューマンの因子を取り込む。

 遺体は空間魔法に収納してあとで有効活用させてもらう。


 さてと…


「次は君たちの番だよ?」


 ここからは本番の消化試合。わたしの思いつく限りの地獄を見せてやろう。




⬛︎⬛︎⬛︎




「は、はなせぇ!」


 とりあえず残ってる全員を拘束した。


「どうやって殺そうかな」


 大多数はわたしに酷いことした訳でもないんだよね…よし、一年生と二年生とその親はとりあえず鏖殺かな?


「『イグニッション』」


 三年生とその親、教師陣以外を集めて頭部にだけを燃やす。

 影に拘束されながらもがいているが、抵抗虚しく1人、また1人と息絶えていく。


 人間蝋燭を背景に、復讐対象達と向かい合う。


「なんで、なんでこんなことを…!」


「はぁ、そろそろウザいよ?ハンスくん。復讐の為だって言ってるじゃないか…わたしは忘れてないよ、あのムカデの味を。君たちの罵倒を。だから君たちにはさ、わたしと同じ気持ちを味わって貰いたいんだ」


「い、一体何を…」


「はい、あーん」


 影を操作して生徒の一部の口を開かせ、口腔内に『日影』を照射し、舌をレッサーセンチピードに…つまりムカデに変化させる。


 わたしの日影は脳みそを含めて特性を埋め込めば変化した部位に自由意志を持たせることが可能らしい。

 口の中のムカデは元気に動き回っているようで、彼らの口の中はさぞ賑やかになっていることだろう。

 ムカデを噛み切ろうとしている人もいるみたいだから教えてやる。


「一つ教えてあげるよ。ムカデに変化しているとはいえそれは君らの舌だ、噛み切れば死ぬよ?」


 彼等の顔が一気に青ざめる。


「じゃあ彼等の悲鳴をBGMに君らの処遇を決めよう!」


 いいこと思いついちゃった!


「きーめた。蠱毒の呪法形式で行こう。ねぇ君たち、親御さんは誰だい?教えてくれないと舌ムカデの刑ね」


 教えてもらった親に『日影』を発動して手乗りサイズの鼠に変化させる。


「喰え」


 当然、生徒たちは嫌がるが無理やり口の中に突っ込み、咀嚼させる。


「辛い?辛いよね、楽になりたいよね?」


 頷いた生徒の一人を鼠に変え、握り締める。


「ハンスくん、食べて」


「え…?」


「え?って何さ。君が主犯なんだから責任、取らなきゃ。君には…ここにいる全員、食べてもらうよ」




⬛︎⬛︎⬛︎




 壊れちゃった。友人やクラスメイト、世話になった教師を1人ずつ噛み殺すのはかなり心にきたみたいだからアクセントとして爪を剥がしてみたり足の先に火をつけてみたりしたけど耐えられなかったみたい。


〈称号、『呪詛吐き』『暴虐の呪縛』を獲得〉


 なんか物騒極まりない称号が生えてきた。


『呪詛吐き』:過去、現実に激しい憎悪を抱く者に与えられる称号。【スキル】『呪言』を獲得。


『暴虐の呪縛』:世界にとって看過できない悪虐を犯した者に与えられる呪縛。聖なる陣営に所属する者と相互に与えるダメージが増加。【異能】『暴虐』を獲得。


『暴虐』:抵抗不可、必中、強制執行、絶対優位、光耐性、精神攻撃無効




 最後に残ったハンスくんを殺した。

 これでわたしの復讐劇は一旦区切りかな。


 一生分の満足感。次は養父を探すつもりだけど、あいつ何処にいるか分からないんだよね…

まあゆっくりやろう!


 冒険者として活動を再開するのも悪くないね。




★★★




 これにて序章は終わりです。

 次の章はルーク、エレン、アリスの影薄3人組が再登場する予定。


 ここで小話を一つ。

 今回ルシアが獲得した『暴虐』に似たようなスキルが組み込まれてましたが…


抵抗不可:スキルとか本人の身体能力次第で抵抗される系のスキルが必中する。

必中:魔法攻撃とか、投擲とかの物理的に外す可能性のあるスキルが必中する。

強制執行:能力の発動に何かしらの条件がいる系のスキルの条件を踏み倒して発動できる。


 とそれぞれアプローチが違います。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る