第十三話『誕生日、おめでとう』
もう一時間も経った。あの女はまだ来ない。
もしかして戻ってくるつもりがないのか?この講堂は外と途絶されているらしいから、このまま放置されれば餓死してしまう。
くそっ、一体どうすれば-
「ハンス様後ろっ!」
反射的に剣を振るう。
ガキィン!
「ふふふっ、油断禁物だよ?ハンスくん。もう約束の時間は過ぎてるんだからさ」
「無能が…!」
「だからルシアだって言ってるじゃん…『ホワイトアウト』」
強烈な光を放ち、ハンスくんの目を潰す。
「君はまだ殺さないよ。『シャドウバイ-』」
っ!えげつない殺気⁈
「『ベフライウング・シュナイデン』!」
幾重にも重ねられた斬撃が飛んでくる。
首を狙った初撃をのけぞって躱し、影魔法を使用して影に潜行し、遠くの影へと転移する。これで全て避けきった…かに思えたが、転移した先に斬撃が飛来し、咄嗟に防いだ右腕が斬り飛ばされる。
「痛っっ…たくはないな。不愉快だ」
「ようやく姿を表したな。下郎。この私が居る限り貴様に勝機は無い」
種族:ハイ・ノーブルヒューマンLv.98
名前:アルベルト・フェアグレーセ
【異能】
万象両断
【スキル】
威圧Lv.Max
聖剣術Lv.Max
見切りLv.Max
身体強化Lv.Max
五感強化Lv.Max
韋駄天Lv.Max
剛力Lv.Max
要塞Lv.Max
聖鎧Lv.Max
飛撃Lv.Max
斬撃強化Lv.Max
火魔法Lv.Max
火炎魔法Lv.Max
光魔法Lv.Max
聖光魔法Lv.Max
【称号】
爵位:公爵
歴戦の英雄
騎士
難攻不落
ハンスくんのお父さん登場。やっばい。めっちゃ強い。脳筋ならぬ脳剣じゃん…たぶん種族は同格、でもレベルの差がえぐい。それにスキルレベルがどれも最大だから経験もめちゃめちゃ積んでそう。
特に『万象両断』。わたしは傷を無限再生で即座に修復できるはずなのに、なかなか再生しない。回復阻害の役割もあると見ていいだろう。
「ははっ、勝機がないかどうかなんて…やってみないと分からなくない?」
「いや、貴様と私の間には大きな隔たりがある。貴様如き…正面から捩じ伏せてやろう」
これはわたしも本気で行かないとやばいやつかな…おそらくこの爺に直接切り結んで勝つことは出来ない。透過にも無限再生にも魔力を必要とするし、わたしは剣術に秀でている訳でもない。
わたしが爺に勝てているのは隠している手札の数。まだ爺には影魔法、透過、空間魔法、精神魔法、無限再生しか見せていない。
とっておきの切り札もあるし、使い方次第では楽勝…かな?
「まあ御託はいいから、かかってきなよ。もしかして、老いで足腰キツい?わたしから仕掛けた方がいいかな?」
「舐めるな!総員、奴を殺せ!」
爺の掛け声に応じて、教員や貴族の護衛がわたしに一斉に襲いかかってくる。
その内の一人を殺して死体を空間魔法に収納。間髪入れずに殺したヤツに偽装でなりすます。
このままわたしを見失ってる内にアレを使えば-
「『ベフライウング・シュナイデン』」
「なっ⁈」
爺の放った斬撃によって、上半身と下半身で真っ二つにされる。この爺、味方を巻き込んで斬撃を…⁈
「…なるほどね。敵だけを斬ることができるのか」
「明答。『ベフライウング・シュナイデン』は解放の斬撃。護るべき味方を傷つけることなどしない」
意識して再生を早める。ちなみにレイヴンからもらった服はどうやら修復機能があるらしく、わたしの傷と一緒に治る。
「厄介だなぁ…仕方ない。出し惜しみはナシだ。『暁光』」
『命の光』は段階ごとに名称がある。今発動したのは2番目の『暁光』だ。意識して発動すると、発動体がより強靭になる。
四肢に龍の装甲を纏い、背中に長い尾を形成する。
「…魑魅魍魎の類であったか」
「その通り!」
地面を蹴り、爺に肉薄。その勢いのまま蹴りを放つ。
それを剣で受け止める爺。わたしのイメージでは硬度は同等…だと思ったが予想に反して、わたしの足は爺の剣で切断された。
「うひゃ!これでも駄目か!」
「私に断てぬ物など…無い!」
大振りの斬撃が迫ってくるが、これは影魔法で体を強引に地面に引きつけて躱す。
「『混沌の魔角』!」
混沌亜竜の種族専用スキルである『混沌の魔角』を発動する。効果は効果範囲内にいる生物の感覚の錯誤。零獣に使ってみたら何もしなくても動かなくなったやばいスキル。
「もらった!」
爺がふらついた隙をついて、腰を捻り顎を蹴り上げる。
おそらく爺は蹴られたことも気がついていないだろう。五感は混沌とし、痛覚は味覚に変換される…みたいになってるはず。
「もういっちょ!」
爺の腹部を思いっきり殴って吹き飛ばす。魔角の効果範囲から外れたけどかなりダメージは与えられたはず。
爺の吹き飛ぶ余波で何人か死んだみたい。あとで有効活用しよう。
「あぁ…楽しい。生まれて初めてだよ」
胸が高鳴る。今まで、これほどにドキドキすることは他にあっただろうか?
二度目の人生に乾杯!
「お誕生日おめでとう、わたし!」
〈条件を達成。『命の光』のレベルが上昇〉
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます