第八話『暴力的ファーストコンタクト』
なんだ、この化け物は。
二級相当の大熊を素手で倒しやがった。
女がこっちを向く。
「…っ!」
半ば反射的に武器を構える。
「はぁ…?わたしってどっちかというときみ達の命の恩人だと思うんだけど。なんで武器を向けるわけ?」
くそ!今日はなんて厄日なんだ!
大した準備も無しに魔境になんて来るんじゃなかったぜ…!
⬛︎⬛︎⬛︎
ただいま恩知らずどもと絶賛対面中。普通助けてくれた人に武器向ける?
はぁ、やっぱり平和的ファーストコンタクトは無理だったかー…こんな称号があるんじゃあ…
あ、待てよ?
この人たちが怯えてるのって称号のせいか…貴族っぽくないし『忌み子』の効果だけ入ってると思うんだけど…一個でこれかー…
貴族階級相手だと会話すら出来なさそう。
この人たちがこうなってる原因の一端はわたしにあったわけだし、武器を向けてきたことは許してやろう。感謝してほしいね。
〈称号『慈悲の心』を獲得しました〉
「とりあえず武器下ろして?わたしに敵対の意志はないよ」
⬛︎⬛︎⬛︎
なんとか暴力的ファーストコンタクトは回避できた。途中から恩知らずどもの私に対する恐怖感?が弱まったような感じがすると思ったら、この称号のおかげだった
『慈悲の心』:罪を犯したものに生存する権利を与えた者へ与えられる称号。人類種からの好感度にプラス補正、【異能】『慈悲』を獲得。
『慈悲』:活力譲渡、交渉、契約、共有、収束、等価交換、隷属、神聖魔法
なんかおまけみたいにやばいの貰えたし。
慈悲って言われるほど大したことやってないと思うんだけど…強いの貰えたしいっか。
「で、わたしがきみ達を外まで護衛するってことでいいね?報酬は冒険者ギルドへの便宜ってことで」
「あ、あぁ、問題ない」
あとこの人たちを護衛することになった。
どっちに街とかがあるのか分からないし、知ってる人がいるなら着いて行った方がいい。
この人たちも戦えはするらしいから、護衛って言ってもそこまで難しい仕事って訳じゃないし。鑑定で見た感じだとルークって人が前衛、エレンって人が斥候と弓での後衛、アリスって人が魔法でのサポートって感じだ。
それよりもこの魔境にいるまだ見ぬ零獣の方が楽しみだね。どんな能力を持っているのやら。
⬜︎⬜︎⬜︎
やっぱりこいつは化け物だ。最初に会った時より圧力は減っているものの、依然として異質さを感じる。
さっきから索敵担当のエレンが反応するより前に零獣を発見しては一撃で仕留めている。
護衛をすると言ってくれたが名前すら教えてくれなかった。相当な訳アリと見ていいだろう。
護衛の対価にギルドへの便宜を要求されたが、果たして対価を支払えるかどうか…
⬛︎⬛︎⬛︎
う〜ん!うまうま!
見たことない零獣が大量にいる!
今までは両生類と爬虫類系で小型のやつが多かったけど、熊を筆頭とした大型の零獣もわんさかいる!
わたしの異能、植物も吸収できるから見たことのない植物があったら手当たり次第吸収してる。
出てきてよかった、洞窟!
夜になった。恩知らずどもの睡眠が必要なせいで探索はストップしなきゃいけない。
やっぱこいつらほっといて一人で行こうかなー。冒険者ギルドとかそこまで興味ない気もしてきたし。
でも一個面白いこと思いついちゃったんだよね。わたしの第一発見者として、存分に楽しんでもらおうかな。
夜は夜でまた別の零獣が出るらしく、見張をしてたらアンデット系の魔物が湧いていた。
『慈悲』に神聖魔法があったおかげでどれもすぐに消滅させられる。
もちろん、倒す前に因子は回収した。
結構な掘り出し物がありましたよ!
【スキル】
死霊魔法Lv.1
浮遊Lv.1
透過Lv.1
生者がたくさんいるから寄ってくるのか、結構効率的に狩りが出来てる。恩知らずどもにも感謝しておこうかな。
⬜︎⬜︎⬜︎
「あ、⬛︎⬛︎⬛︎が魔境から出たな」
薄紫色に煌めく洞窟の中で、レイヴンは独り言ちる。
⬛︎⬛︎⬛︎がいなくなった後もリフォームに励んだせいで水晶の広場はもう貴族もかくやという程の豪華さになっている。
「さて、こんなことやってないで私は私の目的の為に行動を始めますかっと」
そう宣言した瞬間煌びやかな水晶は全て明かりを失い、レイヴンと共に闇の中に消えた。
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