Day.30隣り合う色は混ざって区別がつかなくなるのだから
元カノを置いてカフェから出た。
振り返らずにずんずん歩いて駅を通り過ぎる。
住宅街の真ん中を突っ切るようなバスの代わりみたいな路線だから駅と駅の間隔はすごく狭い。
だから気分が落ち着くまで線路沿いに歩くことにする。
日差しはバカみたいにきっつくて、ギラギラと焼き付ける。
平日日中だから電車の本数は少なくて、たまにガタゴト通っていく車内は涼しそうで羨ましい。
捨てられた自転車の足元にはキラキラと反射板の光が落ちていて虹みたいだ。
なぜかそれを見て、俺と初は本当に相性が悪かったんだなと思った。
でもしょうがないじゃん。
相性とか知らんし。
好きになっちまったんだもんよ。
あんなキラキラした笑顔見たらさ、好きにならないわけないじゃんね。
なんて、誰かに対して言い訳のように思う。
帰ったらどうしよっかな。
もうすぐ夏休みで、夏休みが終わったら試験だ。
勉強するのが正解なんだけど、したくない。
なんならなんにもしたくない。
多分トッキーに泣きつけば無限に甘やかしてくれるだろう。
勉強も教えてくれるかもしれないし、なんなら下の世話までしてくれるかもしれない。
そう考えた俺は普通に最低のクソ野郎だった。
俺はあいつをなんだと思ってんだ。
初と別れたのとおんなじくらい、自分の発想にも落ち込む。
そんな最低なクソ野郎ですら、きっとトッキーは大事にしてくれるのだろうと思うと居た堪れなかった。
「返事、しなきゃなあ」
小さくつぶやいて歩き続ける。
結構歩いたし、いっそのこと大きい駅まで歩いて昼飯食って帰ろうかな。
そう決めてコンビニでスポドリと塩飴を買う。
昼飯なんにしよっかな。
トッキーのことを俺はどう思っているだろうか。
ついでに本屋寄って行こう。
そういえばなんかの最新刊がもうすぐ出るってトッキー言ってたな。
失恋したヤケクソでケーキ食ったろ。
トッキーは甘いものがあんまり好きじゃないけど、俺が食いたいって言うとミスド付き合ってくれんだよな。
もちろんわざと初のことは考えないようにしている。
初が行きたがっていた小洒落た飯屋のことも、気にしていた漫画の続きも、お気に入りのパフェのことも。
でもトッキーのことはわざとではなく。
気づいたら考えている。
それは告白されたからではない。
昔から一緒にいるのが当たり前だったから。
じゃあ恋人になれるのだろうか。
結局昼飯の店が決まる前に駅ビルに着いてしまった。
マックでもなんでよかったけど、せっかくだしモスでふかふかのオニオンリングでも食べようかな。
俺とあいつの相性はきっと間違いないけど、それとこれとはきっと別だ。
トッキーと一緒にいたら、俺はきっと自立できなくなってしまうだろう。
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