Day.4お前に彼氏とか許すわけねえだろ

 やりたい放題して陶子……園生陶子は寝直した。

 俺に跨ったまま、ムスコを抜くこともなく。

 痛い。

 使いすぎなムスコが痛い。

 陶子を抱えたままゆっくりと横を向いて、ムスコを救出。陶子は仰向けにしてタオルケットをかけてやる。


 しばらくぼんやりしてからシャワーを浴びに起き上がる。

 勝手知ったる他人の部屋。

 つーか2日に一回はここにいる。

 俺の家に陶子がくることはない。

 侵略されたらおしまいだし、やり部屋にされてしまうのは真っ平だし、陶子の匂いがしたら勉強もバイトもやりづらくて仕方ない。

 そう言う訳でぬるいシャワーをぼんやり浴びて、陶子の先ほどのセリフを思い出していた。


『伊織は彼女作らないの?』


 それに対する俺の返事は100%の本心だ。

 陶子の世話で手一杯だし、それを他の誰かに譲る気なんてない。

 死ぬまでオレはあの娘に搾り取られる所存である。


 そもそも俺と陶子の付き合いは中学2年からだ。

 クラス替えで同じクラスになったのが始まり。


「三沢、あの子知ってる? 園生陶子。エッロいよなあ」


 そう友達に言われて存在に気づいた。

 その子はやや短めのスカートでブラウスの胸元が緩い、ぽやっとした見た目の女の子だった。

 

 けどしばらく過ごすうちにど変態だと知ることになる。

 

 まずブラジャーをつけていないことが多かった。

 中学生男子なんてエロのことしか考えてない生き物がそのことに気づくのも、それが仲間内に知らされるのもあっという間のことだった。


「今日はノーブラ! めっちゃ透けてんよ!」


「マジで?」


「ラッキー、プリント回した時に中見えた!」


 でもって、女子は大体スカートの下にジャージとか見せパン履いてるのに陶子……そのときからあだ名はオトだったが、陶子は履いていなかった。

 だから陶子が階段にいると、大体男子が下側にいる。

 後から知ったけど陶子はそれをわかっていてわざとガードを緩くしていた。

 他の女子や先生の手前、一応見せないように気をつけているフリだけして、実際はわざと見えやすくしていたのだ。


「オト、スカート捲れてるよ!」


「え、ウソ。嫌だもー。ちょっと見ないで!」


「オトちゃん、ブラウスのボタン取れてる!」


「恥ずかしい。ごめんねえ、変なもの見せちゃって」


 そう言いながら中が見えるようにスカートを直し、ボタンはちゃんと引っ掛けずにいた。

 たまに教室が男子だけで、男子に指摘されると


「え、どこ? 見えないから直してくれる?」


 とか言って見せたり触らせたりもしていた。


 

 今思い返しても完全に変態だし頭おかしい。

 当時の俺はよくあれを矯正できたと思う。

 ……いや、矯正できてないか。今でも変態だわ。



「園生はなんでそんなことしてんの」


 ある日の放課後、俺は陶子に声をかけた。


「そんなこと?」


「体使って」


「ああ」


 その時の夕日を浴びたオレンジ色の陶子はなんだか作り物みたいで、ちょっと怖かった。

 肌がツルッとしてて、逆光だったから目が真っ黒で。

 サラッと風に吹かれた明るい色の髪がリカちゃんとかそういう人形のみたいに見えた。


「あのね、私がおっぱい見せるとさ人によって反応が違うの。それが面白くて」


「意味わからん」


 あの時の陶子曰く、よだれを垂らしそうな顔でこっちを見る男子、顔を背けつつソワソワする男女、嫌そうな顔をする女子、心配そうな顔の女子、に大体別れるらしい。


「男子で嫌そうにするのは君だけだよ、三沢くん。オンナノコに興味ないの?」


「あるけどビッチには興味ない」


「ふうん。潔癖なんだ」


「いや? 公衆便所に恋しなくない?」


「自分だけのものだったらいいの?」


「んー、多分」


「そっか。セックスする?」


「馬鹿なの?」


「馬鹿じゃなかったらこんなことしてない」


「……俺、馬鹿嫌いなんだけど」


「じゃあ私を馬鹿じゃなくして」


 正直クソほど面倒だった。

 でも勉強を教えたら意外とするする飲み込んで、だから多分方向性がズレてたんだろうけど、結局同じ高校、同じ大学まで来てしまった。


 育成ゲームみたいなもんだと思う。

 こいつを育てたのは俺ぞ? みたいな。

 陶子とセックスしたのは大学入ってからだけど、結局高校決まってからは俺といる時だけだと約束させて露出したり、キスしたり、あれやこれやしてきた。

 その結果がこの有様だ。

 俺が育てちまった感もある。

 ずぶずぶに嵌められてしまった(下ネタではなく)感もある。


 そんなことを思い返しつつ、風呂場を出て朝飯を作る。と言っても米を早炊きして納豆を混ぜるくらいだけど。コーヒーも淹れておこうか。いや、作り置きの麦茶でいいか。

 そうこうしてると陶子がのそのそと布団から出てきた。


「シャワー浴びてこい。出たら洗濯回しとけよ」


「ん」


 俺の背中にぐりぐりと頭を擦り付けて陶子は風呂場へ消えていった。

 猫か。痛えよ。

 炊飯器が鳴って、部屋から気だるい朝の雰囲気が失せてきた。


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