母親と奴隷

「なんで洗濯物畳んでくれてないの!さっきお願いしたでしょ!」甲高い音が不快に感じる。ゲームがいいところまで行ったらちゃんとやろうと思っていたのに。

「後でやろうと思ってたんだよ。」

「言い訳しないで。頼んだらすぐにやってよ。」最近彼女が母親みたいでウザい。洗濯物畳んでだとか部屋はきれいに片付けてだとか、とにかくおせっかいな母親に変貌してしまった。前までの可愛くからかってくる姿は思い出として美化されてしまうほど昔のことのように感じる。付き合ってから2年後に同棲し今年で僕は28で彼女は27だ。そろそろ結婚や子供のことも考えてよって時折催促されるが僕にそんな気はまったくない。浮気をするつもりはないが結婚して法に縛られるのは窮屈に感じるし子供に関してはそもそもお互いの収入を足し合わせたとしても夢のまた夢な話だ。そして1番の理由は彼女が可愛くないからだ。顔が変わった訳では無いが以前の言動に比べ可愛げがなくなってしまった。もうそろそろ別れどきなのかもな_なんて思いながらも他に当てがあるわけではないから踏み出せずにいる。

「今度の日曜のこと、覚えてる?」さっきまで怒っていた彼女が今度はなにか不安なことでもあるかのように聞いてきた。

「覚えてるよ。3年記念日でしょ。まあ適当にご飯でも食べに行こうよ。」正直面倒くさいと思ってしまっていた。一緒にいるとおせっかいなことを言われそうで気を配ったりして楽しめないからだ。

「なにそれ。なんでそんなに適当なの。私とのことはもうどうだっていいの?結婚も何回行っても空返事だし、子供なんてまるで作る気無いじゃない。」大正解だ。作る気なんてないし結婚もする気はない。事実婚でいいじゃないか。それでいいなら今すぐプロポーズしよう。内心はこうつぶやいているがとてもじゃないけどこんなこと彼女には言えない。

「ごめんって。ちゃんと考えてるよ。」僕の返事になにか不満がな点があったのか彼女はこちらを睨めつけた。

「今度の日曜日までに答えが出ないようなら別れるから。」彼女のいきなりの宣言に驚きが隠せない。唖然としながら彼女を見ることしかできない。すると

「私がいつまでも家政婦や母親のように面倒見てあげると思わないで。無償の愛なんか存在するわけないでしょ。何を頼んでも後回しで結局私がやってるじゃん。それに私が作るご飯や弁当は当たり前なのにあなたが作ると特別なプレゼントになるのはどうしてなの。」何も言い返せない正論が飛び交う。彼女はおそらく俺に対する不満を遠慮なく言ったのだろう。なら僕も遠慮はしない。

「あのさ、それは確かに僕が悪いと思うよ。でもお前は仕事3時には終わるだろ?僕は7時まで働いてんの。私も働いてるとかよく言うけどさ、どっちのほうが働いてるかなんかすぐわかるだろ。なのに帰ってきたらあれやれこれしろって僕は奴隷かよ。長い時間働いて帰ってきて労いの言葉1つなくパシられ文句言われる日々。何も楽しくないに決まってるだろ!!」やってしまったと思った。言葉を何も考えずに発してしまった。彼女は今どんな顔しているのだろう。早く謝らなくちゃ。

「ごめんね。」そう先に口に出したのは彼女の方だった。

「少し話し合わない?」そう言おうとしたとき彼女と声が重なった。

「でもさ_」

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