第6話 地上へ

 



 地上目指して地下水路を進む。



 今の状況は朝に似ているが、デカスラさんが大きくなり器用になったので、僕とうさーずは完全にデカスラさんの中に浮いている。


 空気穴が空いていて呼吸が可能となり、ある程度なら動いても問題ない。うさーずの皆は僕の周りをのろのろと泳ぎ回っている。


 ゴーレムさんは重いので大きな音を立てて後方を歩き、スラさんはそのゴーレムさんの頭に乗っている。


 そんな僕等の先頭をウルルはゆっくりと進んでいるのだ。


 出て来る魔物はまるで敵にならず、安心して考え事が出来る。



 星天の第4試練、つまりはあれ程の化け物が最低でも後3体いる訳だ。

 あからさまなヒントから考えると、だいたい後11体くらいは居そうであるが、そうそう会うことも無いだろう。


 エクストラ評価の『早すぎた邂逅』からもそうと分かる。



 そもそもあの巨大蟹、今のプレイヤー1万人が、心底から結束し襲い掛かっても、傷一つ負うことなく退けられるだろう。


 詰まる所本当に早すぎたのだ。


 僕が無事だったのも、巨大蟹が適当に殺そうとしたからに相違ない。



 その分、手に入った恩恵は大きい。


 ぶっちゃけて言うと、僕は足手纏いで何もせず、美味いところだけ掻っ攫って行っただけなので、この恩は今後の活躍で返して行こうと思う。

 恩返しの相手は、爺様、レイーニャ、ティア、精霊さん達。


 僕が弱いままだと恩返しも何も無いのでさっさと強くなろう。



 では、強くなるにはどうするべきか?


 単純に考えると、僕自身のレベルを上げて行くのには時間が掛かる。


 レベルは上がるごとに上がりにくくなるなら、レベル10を一人作るよりレベル5を二人作る方がより強く、手っ取り早く強くなれるだろう。そして僕にはそれが出来る状況にある。


 ここは、召喚術と従魔術、錬金術を駆使して配下を大量生産し、レギオンに組み込んで常時狩りをさせるのが良策とみた。


 更に強くなるには、アイテムの収集が必須だろう。


 錬金術で配下を生産する場合に魔石は必要不可欠の品だ。錬金術のレベル上げにも使える事だろう。


 レイーニャから見知った事や、魔法教本、冒険譚から得た情報によると、魔石や精霊石は魔法発動の触媒にも使える。



 配下を増やしてレギオンに組み込み狩りをさせ、各々のレベルを上げつつ素材を回収、得た素材は不要な物を売却して資金にし、必要な物をその資金で使える物に加工する。


 こうする事で、配下も強くなるしアイテムも手に入る。



 問題点は二つ。狩場とアイテムの保存だ。


 狩場は今の皆ならプレイヤーも狩れるだろうが、それだと迷惑行為なのでプレイヤーが居ない所で狩りをするしか無い。


 該当する場所は、地下水路、地底湖、他はまだプレイヤーが来れていない最前線に進むしか無いだろう。


 そしてそれは不可能な事では無い。



 問題のもう一つ。アイテムの保存はスキル『インベントリ』を取得させるしか無い。


 スキル結晶『インベントリ』は後5つ、取り敢えずデカスラさんとウルルに取得させて他は後々考えて行こう。



 さて、色々と考えたが、纏めよう。


 先ず、僕のレベルとスキルを強化、取得する。続けて、魔物やレアアイテムの所在を調べ、回収する。それに伴い、配下を選定して狩場へ出陣させる。

 更に、魔法や道具の作り方を調べて作成し、そのアイテムを適材適所する。


 以上、色々と壮大なので、ゆっくりと進めて行こう。





 地下水路を抜け、地上へ辿り着いた。



 デカスラさんとウルルにインベントリを取得させてインベントリが使えるか試してみた。


 問題なく運用出来ているようだったので、デカスラさん達には地下水路で狩りをしてくる様に言って送り出す。


 ウルルは手元に残しておく。



 次に試すのは今回得られた装備品だ。


 あの時はコロコロと落ちてくる物を手早くインベントリにしまい、スキル結晶だけパパッと使っていたので装備品はよく見ていない。



 まずは双剣、取り出してみると、二本の曲刀だった。


 肉厚の片刃剣、全体的に蒼色と白色で、柄の部分には金色の蟹が装飾されている。

 剣は、大きい剣と小さい剣があり、僕の体格なら小さい方が武器として使えそうだ。だが、剣は柄頭の部分が鎖で繋がっているので片方だけを使用する事は出来ない。タクにでもあげよう。



 次に鎚、此方も全体的に蒼色と白色で金色の蟹が装飾されている。まぁ、鎚は僕の戦闘スタイルに合わないので最初から却下だ。何か使い道があるまでインベントリの肥やしである。



 続いて杖、大きさは僕の身長くらいで、色は蒼と白、金色の蟹が装飾されている。


 先端に7種類の宝石の様な物が付けられているが、これは精霊結晶だろう。ユウミには古びた杖の方をあげるつもりだったので、この杖はマヤあたりが欲しがるだろうか?



 次は鎧、出てきたのは、蒼と白に金色の蟹な全身鎧フルプレートアーマーだ。


 これは、マガネあたりが装備するとちょうどよかろうが、別に誰でも良い。



 最後に謎の装備、結晶大王蟹の魂。


 取り出して見た所、ネックレスだった、親指の爪くらいの大きさをした涙滴型で蒼色の宝石、中にはスキル結晶と同じ様に光の玉が入っている。これなら僕も装備出来そうだ。

 効果の所は不明である。



 取り敢えずこんな所で良いだろう、スキルについては後で確かめる。



「さて」

「ウォン」



 くきゅるる〜〜。



「ご飯食べに行こう」

「……クゥーン」



 朝から食べてないしね。



 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る