第5話 戦後処理と進化

 



 戦闘終了後、まるで死体の如くプカプカと水上に浮かぶ姉精霊さんとピクリとも動かず地底湖の天井を仰ぎ見る妹精霊さんに変わり、末妹精霊さんが対応してくれた。


 消えた巨人はどうなったのか、姉精霊さんと妹精霊さんは大丈夫なのか、この地底湖は崩落したりしないのか。


 僕の矢継ぎ早な質問に、僕より背の低い末妹精霊さんは纏めて、大丈夫ですよ〜だとか、問題ありませ〜ん。等、気の抜ける返事を返してくれた。



 色々と要約するとこうだ。小さな精霊達は今は疲れて眠っている。姉精霊さんと妹精霊さんは疲れて休憩している。地底湖はいつの間にか結界が張られていて無傷。


 天井を見上げると、確かにあわく発光している。


 いつの間にか、王都を守る結界が作動していた様だ。



 巨大蟹の死体と津波に呑まれて死んだ地底湖の魔物は僕が貰う事になった。


 その際に優しい精霊さん達は、魔物の解体もしてくれた。



 何やら、水で作った丸鋸まるのこを高速回転させて解体を始めたが、時間が掛かりそうなので、申し訳ないと思いつつもログアウトした。



 時刻は既に昼食時を過ぎていた、一体何時間戦っていたのか、凄まじい化け物である。


 リビングに行くとアヤの書き置きがあった、流石にもう昼食は食べ終わっているみたいだ。私のおにぇちゃんへ、お昼お先に頂きました。貴方だけの妹サアヤより。


 姉もいるのに貴方だけのとは如何に? アヤは時折分からない。



 雑事をさっとこなし、タクメールを確認する。


 それによると、西の森の攻略は多数の死に戻りが出ているが、タク達や妹組は順調。


 どうやら、人型との戦闘経験が高い皆は知能が高めなゴブリンの動きが却って分かりやすく、案外簡単に対処出来たらしい。



 さてログインしようか。




 ログインすると、水色髪のお姉さんのお膝の上でした。



「あら〜、起きたのね〜」



 そう言ってニコニコと微笑むお姉さん、どうも気配が一段強くなっている様な気がする。


 その旨聞いてみた所、水の小精霊達を全て吸収したのが原因だとか、精霊として一段階高みに登ったらしい。


 勿論無茶をした代償は有り、これから数日間は魔力をろくに扱えない様だ。



 膝の上で色々と僕自身の事を調べておく。



ユキ LV33 状態:空腹


スキルポイント146P



『錬金術LV9』

『召喚術LV11』

『解読LV10』

『ルベリオン王国語LV6』

『鑑定LV6』

『地図LV4』

『インベントリLV5』

『指揮LV6』

『統率LV5』

『連携LV5』

『求心力LV5』

『ペットLV4』

『従魔術LV5』

『解体LV5』

『夜目LV3』

『消臭LV2』

『悪臭耐性LV3』

『念話・特殊LV1』

『契約・特殊LV1』

『気配察知LV2』

『索敵LV2』

『隠密LV2』

『友誼LV3』

『親愛LV3』

結晶大王蟹の御霊カルキノス・プラスパワー

『再生LV1』

『堅殻LV1』

『金剛力LV1』

『火耐性LV1』

『水耐性LV1』

『風耐性LV1』

『土耐性LV1』

『光耐性LV1』

『闇耐性LV1』

『雷耐性LV1』

『斬耐性LV1』

『打耐性LV1』

『酸耐性LV1』

『毒耐性LV1』

『幸運LV1』

『精霊召喚LV1』

『精霊使役LV1』

『聖者LV1』



 レベルが物凄く上がっていた。上昇値からかんがみるに、あの蟹からは最低でも超巨大ゴキの4倍以上の経験値が得られた事になる。


 実際にはレベルは上がる毎に上がり辛くなっているだろうから、10倍くらいはあったのではなかろうか?


 ともあれ、物凄い化け物だったのだ。



「?」



 ふと胸元に違和感を感じ、服を緩めて覗き込むと、そこには拳大の紫のスライムがいた。デカスラさんである。

 いつの間に潜り込んだのか、とにかく無事で良かった。


 僕等が無事だったのは、巨大蟹の槌鋏による一撃、その衝撃波を全てデカスラさんが防いでくれたからに他ならない。



 皆のレベルを手早く確認する為に本を取り出し、それに気付く。



「進化出来る」



 ウルル含めた全員が進化出来る様になっていた。その上全員がレベル30を超えている。


 勿論進化を選ぶ。


 進化を選択すると幾つか選択肢が現れた。どうやら進化先が選べるらしい。



 ウルルの進化候補は、ワイルドウルフ、ハイウルフ、シルバーウルフ、の3種類。


 ワイルドウルフとハイウルフには亜種が外れているので、ウルルの正当進化はシルバーウルフなのだろう。勿論それを選択。


 ウルルがピカッと光りに包まれ、その光が収まった後のウルルは、体が一回り大きく、毛並みもよりしなやかになった。



 ウルルの進化の項目はまだ灰色になっていないので、もう一度進化出来る様だ。


 次に出た選択肢は、ワイルドウルフリーダー、グラスウルフ、ブラックウルフ、ウルフメイジ、レッサーデミウェアウルフ、シルバーウルフリーダー。


 色々と気になるが、此処はシルバーウルフリーダーが正当進化だろう。


 進化したウルルは大きさも虎くらいになって、小柄な僕なら背中に乗って移動できそうである。

 甘えたくてうずうずしているのが分かるが、人前だからか自重している様である。



 続いてチビうさーずの進化だ。


 最初の進化候補はリトルラビットとラビットの2種類、ラビットは北の草原で見かけるが、リトルラビットはついぞ見た事がないので、チビうさーずをリトルラビットに進化させる。


 その次の進化候補が、ワイルドラビット、ハイラビット、トゥーンラビット、リトルレッドラビット、リトルブルーラビット、リトルグリーンラビット、リトルイエローラビット、リトルホワイトラビット、リトルブラックラビット。


 色とりどりの毛玉が現れたのは言うまでもない。


 チビうさーずももう一度進化出来る様なので、勿論進化。

 それぞれ、リトルファイアラビット。リトルウォーターラビット。リトルウィンドラビット。リトルアースラビット。リトルライトラビット。リトルダークラビット。


 地底湖を彩る、毛並みの良い毛玉が現れた、6匹合わせてうさレンジャーである。


 どうやら、各々の属性の魔法を放てる様になったらしい。うちにも遂に魔法攻撃要員が来た。



 1匹だけのうさちゃんの進化候補は、ワイルドラビット、ハイラビット、の2つ。


 正当進化がどちらかは分からないが、草原に出てくるのはラビットとワイルドラビットなので、ここはハイラビットに進化。


 次の進化候補は、グレーターラビット、ビックラビット、キックラビット、ブレードラビット、ホーンラビット、ラビットメイジ。


 どれも気になる、大きな兎を抱き締めたいと言う欲求に従うか、ブレードラビットとはなんだろうと言う疑問解消に努めるか。


 まぁ、ラビットは沢山テイムして進化させれば良いだけの事。此処は欲望に従うのが正しいだろう。


 光が収まった先にいたのは。



「あらあら〜」

「ほう、思った以上にでかいな……」



 ウルフ亜種の時のウルルと同じくらいの大きさの兎がいた。

 耳を立てて立つと僕と同じくらいの身長である。



 続いてスラさん。


 スラさんの進化候補は、ビックスライム、スカベンジャースライム、ポイズンスライム、グラススライム、メタモルスライム。


 前に見た魔物図鑑によると、メタモルスライムは希少種らしい。取り込んだ物に変身しているせいで発見は困難なんだとか。

 それ以外はそれなりに野生下で見つかっているとか。


 メタモルスライムを選択した。


 次の進化候補はビックメタモルスライムだけだったので、躊躇なく選択。

 特に見た目に変化は見られないが、取り込んだ物に変身出来る筈なので、期待は大きい。


 スキルに『圧縮』と『小型化』と言うのがあり、これは小さくなれるスキルらしい。使うと普通のスライムと見分けがつかないが、圧縮は質量がそのままなので体当たりの威力が段違いである。



 次のデカスラさんは、進化候補がヒュージポイズンスライムだけだったので、それを選択する。


 大きさは僕の2倍程、小さな池が動いているのに等しい。



 最後はゴーレムさんである。


 進化候補は、ゴーレム、ドール、の2択。防御力を取るか器用さを取るかの2択だが、ここはゴーレムにしておく。


 次の進化候補は、ロックゴーレム、サンドゴーレム、マッドゴーレム、ビックゴーレム。の4択。

 どれを取っても良いので、とりあえずロックゴーレムを選択する。


 子ウサギ同様に、更にもう一度進化出来る様なので選択。

 候補は、ビックロックゴーレムとアイアンゴーレム。防御力を考えるならアイアンゴーレムが良いだろう。


 進化したゴーレムさんは、僕より頭2つ分大きくガッチリとした体格で、頼もしく見えた。



 進化が終わった頃には、精霊さん達も解体を終えていて、素材はありがたく頂いた。



「それじゃあ、また来るね」

「ええ、またね〜」

「次はゆっくり出来ると良いね〜」

「ばいばい」



 僕は地底湖を後にした。


 また来ると言うのは間違いない。地底湖にはまだ——



 ——先がある。



 

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