第20話 初PVP
決闘が始まると、お互いに10歩下がる、一定距離離れると目の前にカウントダウンが現れた。
成る程、こうなるのか。
それは直ぐにゼロへと変わり——
「済まないが、直ぐに終わらせて双剣使いと戦わせて貰うよ!」
貴公子が突っ込んで来た。
大上段から振り下ろされる幅広の剣の一撃は、当たれば一溜まりも無いだろう。
……だが、隙が多すぎだと思うんだ。
僕は半身になってそれを躱すと、ナイフで両刃の剣を地面に抑えつける。
其処を起点に地面を蹴り宙へ浮かぶ、先ずは一発、右目に向けて、体重を乗せた蹴りを打ち込んだ。
「くっ!?」
青い光が小さく弾け、貴公子さんは大きく仰け反った。膜の色が目に見えて薄くなっている。
勿論この状況から一気に追撃し、倒すのは
蹴った反動で宙を半回転するとバックステップで距離を取る。
目元を押さえて剣を構える貴公子さん、その顔には笑みが浮かんでいる。
「……どうやら僕が間違えていたらしい、謝罪しよう。そして改めて僕に名乗らせて欲しい」
ようやくスイッチが入ったらしい貴公子さん。許可を求めているようなので、コクリと頷いておく。
「ありがとう、僕の名前はセイト! 胸を借りるつもりで行かせて貰うよ!」
そう行って突っ込んで来るセイト、今度は油断の無い水平切りだ。
僕の胴を狙って放たれたそれを、軽く跳ぶ事で躱す。
宙に浮かぶ僕にセイトは好機と見てか、切り返しの一撃を振り上げた。
「っ!?」
それをナイフで受けると僕は更に上へと飛び上がった。高さで言うなら、周囲の家にある屋根の上が見えるくらいだ。猫がいた。
流石に全身鎧を着ているだけあり、筋力が強い。
そのまま僕は、太陽を背にナイフを下へ向けて自由落下。
下には、目を細めて此方を見上げ、幅広の剣で防御姿勢を取るセイトがいる。
その剣にナイフを押し当て体勢を僅かに調節、ナイフから手を離すとセイトの背後にするりと着地した。
勿論しゃがみ込む事で音と衝撃を最大限吸収して、である。
僕は即座に——
「なっ!?」
——セイトに足払いをかけ、勢いのままに回転しつつ、落ちて来たナイフをキャッチする。
足を払われ地面に転ぶ途中のセイト、回転の勢いをそのままに右目へ向けてナイフを突き込む僕。
ガンッ! ガンッ! ガンッ!!
刃を、右目に突き立て次に左目に突き立て、最後に喉に突き立てた。
セイトを包む青い膜は粒子となって弾け飛ぶ。
——僕の勝ち。
セイトは執拗に目を狙われた所為で瞑っていた目を開くと、ゆっくりと上体を起こした。
僕はセイトに手を差し伸べ、セイトはそれを掴んで立ち上がる。
しばらく周囲が静寂に包まれた。ついでに周囲を伺っておく。
先ずタク達、いつも通り。
次に貴公子メンバー、目を見開いている。
最後に周りの野次馬、目を見開いている。
「……僕の、負けか……」
「そうだね」
「……君は凄く強いんだね」
「セイトも多少はやるよ」
「装備、整えたんだけどなぁ」
「地力が違うね」
「はぁ……」
大きく息を吐き出すと、セイトは顔に笑みを浮かべた。切り替えの早い奴だ。
「ありがとう、良い経験になったよ!」
「それは良かった」
「君、武術系のスキルを取ったら凄く強いんじゃないかな?」
「無くても強いからね」
「はは、それもそうだね!」
僕の嫌味な発言にもニコニコと返す、なかなかの好青年である。
その後、渋々謝ってくる二人と、何故か率先して謝ってくる二人の計四人に頭を下げられ、うちの女子二人も溜飲が下ったらしい。
その折、近くに来た表情の薄い魔法使いが、僕の胸と全身をサッと見回した後、フフンと胸を張っていたのが哀れだった。
僕は知っている……胸の大きさと身長は僅かに変更が可能な事を。
僕は知っている……僕のアバターでその僅かを弄るとちょうど魔法使いと同じ身長と体型になる事を。
同業者の人かな?
ともあれ、レギオンを組んだ僕らは、東の草原へと向かった。
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